上村松園。
子供の頃、切手収集が趣味でした。なかでも美術作品を題材とした切手を割と好んでいました。
松園作品の切手もありました。
1965年発行の切手趣味週間の10円切手、作品は「序の舞」です。
この切手により、松園の名前と、松園といえば「序の舞」、と頭に刻まれました。
それから年月がたち、切手収集に興味がなくなり、そのうち美術観賞に興味を持ちはじめ、といっても日本画にはあまり興味がなく、松園作品の何点かを何らかの機会に見ることはあっても、松園に対する認識は、女性であることを知った以外は、子供の頃以上に発展することはなく、ここまで来ました。
今回の展覧会開催を知り、なぜかしら行ってみたいと思って、会期最初の土曜日に訪問しました。
また切手の話に戻りますが、改めて調べると松園の作品がもう1点切手になっています。
1980年の近代美術シリーズの50円切手、題材は「母子」(東京国立近代美術館、今回出品)です。
この切手を持っていたことは間違いないのですが、この絵の記憶は残っていません。
私の頭のなかではずっと、松園=「序の舞」でした。
さて、展覧会です。全く興味が持てず、すぐに退館するのでないか、とも思ってました。
が、思いのほか楽しめました。物珍しさからということもあるでしょう。
展示数は70点強。似たような作品が多いですね。
ということで、ちょっと変わった感のある作品をお気に入りとしてあげることとなります。
1 人形つかい(1910年作)
絵の4分の3が襖。人形や人形つかいは見当たらない。が、人々の視線の向きから想像はできます。
→【作品解説より】
本作品の題名は人形つかいだが、人形つかいの姿は描かれていない。襖を開いて部屋の中を覗き込む女性と、室内の人々の視線の向きから、襖の向こうで人形芝居が行われていることが暗示されている。
2 花がたみ(1915年作)
ちょっと普通ではない目つきと踊る姿が印象的。
→【作品解説より】
謡曲「花筐」の登場人物・照日の前が、愛する継体天皇を想って狂い舞う姿を描く。愛する人を想うあまりに正気を失うという心理状態を表現するために、精神病院に取材に行くなどして研究した。
3 夕暮れ(1941年作)
懐かしさを感じる題材。
画業を始めた明治期には普通の生活風景も、昭和期になると見られなくなったとのこと。本作のように昔を思い起して描いた作品群もなかなか味わいがあります。隣の「晩秋」(1943年作)など。
→【作品解説より】
日が暮れゆくなか、陽光を求めて障子を開け、針に糸を通そうとする女性の姿。松園は幼い頃、母のこうした姿をしばしば目にしたという。本作品をはじめ、昭和期に描かれた市井の生活を主題とする作品にも、母への思慕の念が込められている。
「序の舞」は後期展示ということで、今回は見ることができず。
以下は、松園が「序の舞」について語った言葉です。
「この絵は、現代上流家庭の令嬢風俗を描いた作品ですが、仕舞のなかでも「序の舞」はごく静かで上品な気分のするものでありますから、そこを選んで優美のうちにも毅然として侵しがたい女性の気品を描いたつもりです。何物にも侵されない、女性のうちにひそむ強い意志をこの絵に表現したかったのです。幾分古典的で、優美で、端然とした心持を私は出し得たと思っています。」
松園が描こうとした女性像全般について語られていると思います。
今回楽しめたのは、松園が描こうとするそのような女性像に惹かれるところがあったからなのだろうと思います。
なお、内藤陽介著「解説・戦後記念切手Ⅲ 切手バブルの時代」によると、「序の舞」のモデル(当時24歳)が存命中(切手発行時52歳)だったことが(その世界では)話題になったそうです。
子供の頃、切手収集が趣味でした。なかでも美術作品を題材とした切手を割と好んでいました。
松園作品の切手もありました。
1965年発行の切手趣味週間の10円切手、作品は「序の舞」です。
この切手により、松園の名前と、松園といえば「序の舞」、と頭に刻まれました。
それから年月がたち、切手収集に興味がなくなり、そのうち美術観賞に興味を持ちはじめ、といっても日本画にはあまり興味がなく、松園作品の何点かを何らかの機会に見ることはあっても、松園に対する認識は、女性であることを知った以外は、子供の頃以上に発展することはなく、ここまで来ました。
今回の展覧会開催を知り、なぜかしら行ってみたいと思って、会期最初の土曜日に訪問しました。
また切手の話に戻りますが、改めて調べると松園の作品がもう1点切手になっています。
1980年の近代美術シリーズの50円切手、題材は「母子」(東京国立近代美術館、今回出品)です。
この切手を持っていたことは間違いないのですが、この絵の記憶は残っていません。
私の頭のなかではずっと、松園=「序の舞」でした。
さて、展覧会です。全く興味が持てず、すぐに退館するのでないか、とも思ってました。
が、思いのほか楽しめました。物珍しさからということもあるでしょう。
展示数は70点強。似たような作品が多いですね。
ということで、ちょっと変わった感のある作品をお気に入りとしてあげることとなります。
1 人形つかい(1910年作)
絵の4分の3が襖。人形や人形つかいは見当たらない。が、人々の視線の向きから想像はできます。
→【作品解説より】
本作品の題名は人形つかいだが、人形つかいの姿は描かれていない。襖を開いて部屋の中を覗き込む女性と、室内の人々の視線の向きから、襖の向こうで人形芝居が行われていることが暗示されている。
2 花がたみ(1915年作)
ちょっと普通ではない目つきと踊る姿が印象的。
→【作品解説より】
謡曲「花筐」の登場人物・照日の前が、愛する継体天皇を想って狂い舞う姿を描く。愛する人を想うあまりに正気を失うという心理状態を表現するために、精神病院に取材に行くなどして研究した。
3 夕暮れ(1941年作)
懐かしさを感じる題材。
画業を始めた明治期には普通の生活風景も、昭和期になると見られなくなったとのこと。本作のように昔を思い起して描いた作品群もなかなか味わいがあります。隣の「晩秋」(1943年作)など。
→【作品解説より】
日が暮れゆくなか、陽光を求めて障子を開け、針に糸を通そうとする女性の姿。松園は幼い頃、母のこうした姿をしばしば目にしたという。本作品をはじめ、昭和期に描かれた市井の生活を主題とする作品にも、母への思慕の念が込められている。
「序の舞」は後期展示ということで、今回は見ることができず。
以下は、松園が「序の舞」について語った言葉です。
「この絵は、現代上流家庭の令嬢風俗を描いた作品ですが、仕舞のなかでも「序の舞」はごく静かで上品な気分のするものでありますから、そこを選んで優美のうちにも毅然として侵しがたい女性の気品を描いたつもりです。何物にも侵されない、女性のうちにひそむ強い意志をこの絵に表現したかったのです。幾分古典的で、優美で、端然とした心持を私は出し得たと思っています。」
松園が描こうとした女性像全般について語られていると思います。
今回楽しめたのは、松園が描こうとするそのような女性像に惹かれるところがあったからなのだろうと思います。
なお、内藤陽介著「解説・戦後記念切手Ⅲ 切手バブルの時代」によると、「序の舞」のモデル(当時24歳)が存命中(切手発行時52歳)だったことが(その世界では)話題になったそうです。