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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

海運王の夢 バレル・コレクション(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2019年05月02日 | 展覧会(西洋美術)
印象派への旅
海運王の夢   バレル・コレクション
2019年4月27日~6月30日
Bunkamuraザ・ミュージアム


   スコットランド・グラスゴーの海運王ウィリアム・バレル(1861〜1958)のコレクションを紹介する展覧会。出展作品80点中、76点が日本初公開。
 
   展覧会名に「印象派」の言葉を使っていながら、モネの作品がない展覧会は初経験。
 
   バレル・コレクションからフランス印象派の出品は、ドガ、マネ、ピサロなど。
   本展には、ルノワール、セザンヌ各2点、ゴッホ、シスレー各1点も出品されているが、それらはバレル・コレクションではない。同じグラスゴー市にあるケルヴィングローヴ美術博物館所蔵作で、もとはやはりグラスゴーの海運業者であったウィリアム・マキネス(1868〜1944)のコレクション(ゴッホを除く)であったもの。
   バレルだけでは巨匠名不足のため補完することにしたのだろうが、一方で主役を食ってはいけないとの判断があるのだろう、おとなしめの小ぶりの作品(ゴッホを除く)である。
 
 
   バレルは、地元スコットランドの画家の作品から美術品収集をスタートし、徐々に19世紀フランス絵画にも興味を抱くようになる。暗い色調の写実的な具象画を好む傾向があって、印象派より後の「前衛美術」には興味を示さなかったとのこと。また、中世ヨーロッパのステンドグラスやインド、ペルシャ、中国の美術品にも関心を持つようになる。「見境なく何でも買い集める収集家」との評もあるらしい。
 
 
   1944年、バレルはグラスゴー市にコレクションの一部を寄贈する。その2つの条件が凄い。1「大気汚染の影響が少ない郊外に作品を展示すること」、2「英国外に持ち出さないこと」。
   まず1の条件が厳しかったようだ。1967年にある貴族が広大な土地を寄贈するまでは美術館建設の目処もなかったらしい(それまでは別の美術館での暫定的な保管・公開だったのだろうか)。バレルは厳しい条件を示したが、その実現の術は示さなかったように見える。その後1971年にコンペを行い、その後設計・建設に時間を要したものの、1983年に美術館が一般公開されたとのこと。
   加えて2の条件。バレルは何を意図したのだろうか。2015〜20年予定の美術館改装工事の費用捻出巡回展を実現させるための条件緩和に、女王決裁が行われたとのこと。

 
   本展出品作を見る。
 
   19世紀のフランス、オランダおよび地元スコットランドの画家の作品が並ぶ。
   主題は、風景画、静物画、風俗画。宗教画などの歴史画はなく、肖像画も1点程度。
   フランス絵画は、クールベ、ドーミエ、バルビゾン派、印象派など。
   総じて暗い色調の写実的な具象画で総じて小ぶりの作品。バレルは、心を癒すというか、落ち着いた雰囲気の作品が好みであったという。19世紀後半の他の実業家のコレクションと共通」する保守的な趣味。まあ、本展出品作だけでなく、来日しなかった作品も含めて判断する必要があるのだけれど。

 
   本展の冒頭に登場するのはゴッホのパリ時代の作品(市が現所蔵館のために購入。バレル・コレクションではない)。
 
ゴッホ
《アレキサンダー・リードの肖像》
1887年
ケルヴィングローヴ美術博物館
 
   リードはグラスゴー出身の画商。一時期パリでゴッホの弟テオと共に働き、ゴッホ兄弟と共に暮らしていたこともある人物。その縁で本作が制作される。1889年にグラスゴーに画廊を開設。バレルの主な購入先となる。
 
   スコットランドは、イングランドに対する特別な感情もあって、文化的にはイングランドを飛び越えて、フランスからの影響が強いとのことで、19世紀末においてフランス以外では一番のフランス絵画のマーケットであったという。
 
   画商の肖像はゴッホ作だから歓迎なのだが、何故画商の肖像画があってバレルの肖像画がないのだろうか。
 
 
ドガ
 《リハーサル》
1874年頃
バレル・コレクション
   本展の目玉作品、「バレエを題材にしたドガの初期の作品」で「門外不出の名作」。バレル・コレクションっぽくない?作品で、確かに一見の価値あり。
 
 
マネ
《シャンパングラスのバラ》
1882年
バレル・コレクション
   マネ最晩年の静物画の小品。本展のマイベスト。
 
 
   私的には当時の保守的な趣味によるコレクションの一例として相応に楽しく鑑賞するが、主催者の宣伝文句がそれ以上を期待させてしまいそう。
   「印象派への旅」の旅人は、バレルであって、鑑賞者ではないことを認識しておきたい。
 
 
本展の構成
 
第1章  身の回りの情景
   1   室内の情景
   2   静物
第2章   戸外に目を向けて
   1   街中で
   2   郊外へ
第3章   川から港、そして外洋へ
   1   川辺の風景
   2   外洋への旅
 
 
 
   最後の第3章2の作品は写真撮影可。せっかくなので1点撮影。
 
クールベ
《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》
1865年
バレル・コレクション
 
   クールベが保養地トゥルーヴィルに滞在したときに描いた「トゥルーヴィルの綺麗どころの肖像」。


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