投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

お勝手のあん - 柴田よしき(時代小説文庫)

 
著者は柴田よしき。出身は東京都。1959年生まれ。青山学院大学文学部フランス文学科卒業。被服会社、病院、出版社などに勤務。子育ての傍ら執筆活動を始め1995年に『RIKO - 女神の永遠』で第15回横溝正史賞を受賞してデビューした。

友人から面白いから読めと言われ半ば強制的に渡された。読めば面白くて続けて貸してもらっている。幕末期だからフライパンやカレー粉も出てくる。



親に売られた少女"やす"は口入屋が間違えて送り出したとある宿屋のお勝手で、逗留していた品川宿の宿屋「紅屋」の主人からその嗅覚味覚を認められ「紅屋」で料理見習いとして働き始める、、、というシリーズ物。時代は江戸幕末。"あん"は"やす"の音読み。友人の"小夜"が付けた仇名。



時代小説を好んで読んでいるわけではないけど、昔から読んでいた平岩弓枝や池波正太郎でここまできっちり"売られた"と書いていたかなと思いを巡らす。女郎屋に売られるというのは以前からそう表現されていたけど、親元を離れて働きに出る時も売られているのだ。そのことを売られると表現はしていなかったと思う。

前に「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」という記事で『平岩弓枝の「御宿かわせみ」を最近ずっと読み続けているのだが、洗練した江戸時代の人物像がキラキラと輝くように活写してあって、読んでいてとても小気味良い。しかし、さらっと書かれているエピソードはとても残酷で悲しい話が多い。事件といえば殺人。子供は誘拐され売られるし、女は娼婦に身を落とす。親と子はしょっちゅう行き別れるし、女房は逃げる。川に浮かぶ湯舟は男女混浴、それを利用する下町の人々は夏ともなれば男性は下帯だけ、女性は湯文字だけ。平岩弓枝が現代とかなり異なる江戸時代の風俗を知らないわけも無く、知っていながら現代日本人に美しく読める江戸時代を見せてくれているのは、彼女一流の筆力なのだ。』と書いた。最近は今までなら「奉公に出された」と書いていたところを「親に売られた」と書いている。進歩かな。

(2021年7月 野田文庫)
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