なんとなく、ふわっと・・

写真と画像処理関係とひとりごとをなんとなく書き溜めていきたい

ダイナミックレンジとRAWデータ

2010-12-08 00:30:52 | モノログ

20世紀初頭、アインシュタインの光電効果の解明から始まって光の波動・粒子の二重性が明らかになり、
プランクによる黒体輻射の定量的解明が量子力学の幕開けとなった。学部学生のときには、このような
前期量子論とよばれる科学史を何度も読み返して、煌くような物理学者達の成果をまぶしく感じたものだった。

ニュートンがプリズムを使って太陽光を分光したのを嚆矢とする分光学は、量子力学の発展に大いに
寄与した。やがてレーザーが発明され、1970年代からは、単色性に優れたレーザーを光源とした
レーザー分光学が華々しい成果を挙げた。ちょうど70年代に学生になったわたしは、卒業研究には
アルゴンレーザーの発信線を光源とした有機分子の結晶の前期共鳴ラマン分光学を課題として与えられた。

ラマン散乱は、物質による光の非弾性散乱に相当し、あてた光の波長とは違う波長の光が散乱されて
検出される。それはかなり微弱な光であって、当時もいまももっとも高感度な光検出器であっても
光を一個、二個と数えられるようなほど微弱であった。暗い実験室で、光子計数器の数字をみながら
本当に光は粒子なんだな、と実感したのだった。

話は飛ぶが、デジタルカメラの受光素子は、CCD や CMOS であっても、それは半導体素子であって
当たり前だが光検出のメカニズムは純粋な物理現象である。もっとも簡単な半導体光検出器は
LED とは逆の機構による光検出ダイオードであり、半導体ギャップのエネルギーを越える光の
エネルギーを吸収して逆電圧バイアスによる電流に変換する。しかし、写真のフィルムのように
光量を記憶することはできない。現在のデジタルカメラに使われている素子は、フィルムと同じように
当たった光の量を電荷の量として記憶できるようになっている。その量は、光を1個2個と数えられる
ほど高感度ではなく、アナログの量として記憶される。

さて本題であるが、受光素子が記憶しているアナログ量としての光強度をデジタル化しなければ
ならないわけであるが、現在のパソコンのディスプレイやプリンタは、RGB 各8ビットを標準と
しているので、通常8ビットを越える10ビット、12ビット、14ビットなどに変換して
RAW データとしているようである。ところで、先述のように純粋な物理現象として記録される
光の量は素子が決まればそれで決まり、アナログ・デジタル変換の仕方には依存しない。
したがって、12ビットに変換しようが、14ビットに変換しようが素子のダイナミックレンジが
変化するわけではない。たんに強度の階調をどれだけ滑らかにデジタル化するか、が違うだけである。

実用的なダイナミックレンジは、強強度の場合は飽和、弱強度の場合はノイズによって
これまた素子により純粋に物理的に決まっている。まぁ、ノイズリダクションをかけて
暗いほうのダイナミックレンジを稼ぐこともできるだろうが、たかが知れている。

ところでよく聞く話は、アナログ・デジタル変換の精度とダイナミックレンジを混同して、
jpeg 撮ってだしより、12ビットRAW の方が4ビット分、露出にして±2EV分だけ
ダイナミックレンジが大きいので、RAW 1枚からの HDR は、AEB ±2EV jpeg に相当する、
という話である。これは、まったくの間違いである。私見ではノイズが少ない素子であっても
8ビットのヒストグラムの倍以上のレンジを実用的なダイナミックレンジとして持つ素子は
現在でもない、と考えている。言い換えれば、jpeg撮ってだしの8ビットヒストグラムの
半分くらい、8.5ビットくらいではないかと思われる。それでも RAW 現像の方が
レンジを稼げるのは明らかではあるが、倍のレンジということはない。

以上より、語義矛盾である単写からの HDR ということは、事実上も間違いである。
レタッチ、現像手段としてトーンマッピングを使うことは、それなりに意義があるし
実際、面白い結果をたくさん見ることが出来る。しかし、それを HDR というのは
間違いである。

わたしはほとんどの場合、AEB ±2EV jpeg 3枚で撮影しているが、一つにはカメラ内現像がその
カメラにとって最適であること、4EV のダイナミックレンジに対して、3枚をRAW で撮っても
明撮暗撮の両端のダイナミックレンジをちょっと広げるだけ、と考えているからである。これが
5枚8EVとかのブラケット撮影では、少なくともダイナミックレンジに関する限り RAW で撮影する
意味はまったくない。画質に関してはまた別の話であるが。

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Artistic or Surreal HDR = Cool?

2010-10-21 00:52:07 | モノログ
近頃は Flickr ばかり見まわっている。4,5年前、画像処理のプログラミングに
必要なサンプルを Creative Common 表示から見つけるために Flickr を見始めて
しばらくの間、はまってしまったときに似ている。

HDR に関するグループの老舗 HDR Group で面白いスレッドを見つけた。

Erik Reinhard on excessive HDR, flickr style

銀塩のときから写真のダイナミックレンジを越えるために、古くから現像や焼き込みの
ときにさまざまなテクニックが使われてきた。いま、われわれが使っている HDR 作成ソフトの
理論的な基礎は、1980年代後半から始まる画像処理の学術的研究の成果に基づいている。
その中のビッグネームには、Greg Ward、Paul Debevec に連なって Erik Reinhard がいる。
彼のサイトに掲載された小論文は、いろいろ考えさせられる。

  HDR on Flickr: Rights and Wrongs

Introduction の一部を訳してみる。

HDR 画像に対する一般の受け取り方には、しばしば誤解が見られる。これは、HDR イメージングと
トーン再生を同一視する傾向があるからだ。ここでは、何が問題であるか、さらに、さまざまな方法で
トーンマップされた HDR 画像を比較することにより、Flickr で見られるような多くの HDR 画像の
恐ろしいまでの外観が HDR テクノロジーによるものではなく、完璧に避けられることを示す。


学究肌の彼から見ると、Flickr で見られる HDR タグのついた画像のほとんどが awful で dreadful で
あると感じているようだ。これは、本来の HDR technology とはなんの関係もなく、トーンマップの際に
選ぶパラメータが不適切であるから、というのが彼の主張の要約である。

露出違いの複数枚の写真を合成して HDRi を作ること自体には何の問題もない。Photomatix を
使っていれば、そのままトーンマップに進むので、上記の Greg Ward が策定したラディアンスファイルに
してこの画像をハードディスクに記録できることさえ意識していない人が多いかも知れない。

問題は、目で見ることもプリントすることもできないこの画像をどうやってディスプレイに表示したり
プリントできるようにするか、ということで、これがトーン再生、そしてその一部がトーンマッピング
という手法なのである。で、いわゆる「 HDR 画像らしさ」は、このトーマッピングによる副産物なので
あって、決してそれが HDR の本質なのではない。

したがって、一枚の RAW (現像によって複数枚にしても)や jpeg などからのトーンマッピングは
後者の手法だけを使っているので、そもそも HDR とは何の関係もなく、レタッチの一部として
トーンマッピングを使っているだけである。

上記のスレッドでは、Erik Reinhard に賛同する人もいるが、予想されるように、多くの Flickrer は
そんなことには関心はなく、どんな手法であれ cool な画像が得られればよし、それがアートなのよ、
ということであるらしい。

まぁ、そうなんだけどね。
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えーーと

2008-11-05 00:09:43 | モノログ

マラソンの高橋尚子さんが現役を引退した。
あいかわらず、常人の思考を超えたさわやかな引退会見だった。

新聞に載っていたコメントを見ながら

私「わたしの陸上生活に悔いはありません。」
妻「泳げないのに、明日から海にでも潜るの?」
私「・・・・・。亀じゃないんだし・・。」

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時代

2008-10-21 00:07:00 | モノログ

本田靖春著「誘拐」を読了した。

いわゆる「吉展ちゃん事件」は、小学生の時のことで、うっすらと記憶にある。
吉展ちゃんの白黒の写真も思い浮かべることができる。
犯人の名前も記憶にある。しかし、当時、犯人と被害者宅との電話でのやり取りを
録音されたものが、捜査段階でテレビやラジオに繰り返し放送されたことには
まったく記憶がない。

幼児誘拐事件に対する捜査マニュアルが確立する以前の事件であり、父親の独力の
機転で犯人とのやりとりが録音されたこと、電話の逆探知さえなされなかったこと、
など時代を感じる。

「誘拐」は、ほんとうに優れたノンフィクションで、ひさびさに読了後の充実感を
味わった。


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2008-10-20 00:12:02 | モノログ

わたしの手は身長の割りにかなり小さく、指も短い。家内より小さい。
ピアノがなかなか上達しないのはそのせい、ということにしている。

昨日、北千住から千代田線に乗って、乃木坂まで行く間、かなり斜め前の
座席に座っていた女性は、たぶん30代半ばと思われるが、たたずまいが
豪華で美しく、モーツァルト弾きの内田光子さんを若くしたような感じで
その周囲だけが雰囲気が違っていた。大判の写真雑誌をめくる、その手が
大きく、なによりその指が長く、付け根から指先まで絶妙な比率で細く
なっていき、しかも関節が目立たなく、目が釘付けになった。

指って、なんだかすごく・・・

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マスゲーム

2008-10-18 00:09:18 | モノログ

国際会議では、インド人を黙らせ、日本人にしゃべらせることが
できたら成功だ、という笑い話があるらしい。

北京五輪開会式の翌々日だかの毎日新聞の朝刊のコラムに、開会式の
数万人規模の整然としたマスゲームに触れて、もうひとつの BRICS で
あるインドでもし五輪が開催されたとしても、あのような開会式は
個人主義が強すぎるインドでは不可能なだろう、という意味のことが
書いてあった。思わずつよく頷き、インド人が整然とマスゲームを
する様子を想像してしまい、声をだして笑ってしまった。

整然としたマスゲームを大規模に行える国はなんだか不気味だよね。
国家権力が露骨に見える感じで。

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美人は不可解

2008-10-17 00:18:16 | モノログ

ブログに書いて欲しそうだったので・・

昼食によく行く中華屋さんで読む「ビックコミックスピリッツ」では、当然「上京
アフロ田中」が傑作で必ず目を通すが、その次に好きなのは「鬼龍院冴子探偵事務所」
である。なんというか、男性から見て女性はいつも不可解であるが、これに飛び切りの
美人であることが加わると、身勝手が加わって、しかもなんでも許せる状況が出現する。
この設定で繰り出される不可解ギャグは傑作。三上龍哉は天才。

コミックスも出ているがおじさんが買うのはちょっと恥ずかしい。


えーと、正直に言えば、なにより絵が好きなんだな。rinkakuフィルタの結果みたいな。


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クリピーが・・

2008-10-16 00:14:57 | モノログ

このサイトの写真をクリックするとクリピーからリンクされた少し大きめの写真が
表示されるようにしている。昨日の午後からクリピーの応答が異様に遅くなって、
ついにサーバーが落ちていまだに回復していない。昨年9月からの一般公開以来、
こんなに長期のダウンはなかった。と、いうわけで今現在の写真の更新は控える
ことにした。

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