アホガード [川浜イチのワル]

[本気]と書いて[マジ]と読む。
アホ以外立入禁止。
服用に注意!

あの7月を忘れない・・・。

2005年07月18日 21時09分37秒 | アホガード弟日記
梅雨明けの日差しが厳しい午後、僕は仲間の墓参りに出かけた。
2時過ぎの墓地は、うだるような暑さの中で、奇妙な沈黙を守っていた。
丸と長方形でかたちどられた墓碑に、水をかけ線香をあげる。
煙をくゆらせながら、線香の匂いが鼻腔をくすぐった。
静かに両手を合わせる。
暑さを忘れた一瞬の静寂の中、あの夏の出来事が、僕の記憶の中で頭をもたげた。
10年前の七夕。
ハタチの僕は、その頃、近くのビデオ店でバイトしていた。
朝番の出社準備をしていた僕に母親が新聞を持ってきて、これ、○○君じゃない?
と地方版の小さな記事を僕に見せた。
記事を追っていくと、サーフィンをしている途中に流されて溺死、と書かれていた。
耳がキーンとして、周りの音が一気に遠のいた。
そいつと僕は、小学校の頃から少年野球で、キャプテン、副キャプテンの仲だった。
おにぎりのような坊主頭で、顔をクシャクシャにして笑うアイツは、
そんな人柄から副キャプテンに選ばれていた。
家族同士も仲が良く、お互いの家を泊まりっこしたりしていた。
中学に上がり、僕は野球を続けたが、アイツはグレていった。
でも、僕に対する態度は何も変わりなく、笑顔の昔のままだった。
高校で別々の学校になり、会う回数も減っていったが、会えばお互いの近況などを
話したりした。
卒業して、僕が夢に向かって精進している時、アイツは警備会社に就職した。
オヤジさんも凄く喜んでいたのを覚えている。

新聞の記事を読んだ僕は、半信半疑のまま、アイツの自宅へと向かった。
通い慣れた道、曲がり角を曲がると、お兄さんが道路で誰かと電話していた。
僕の顔を見ると、電話を中断して、「よく来てくれたな、見てやってくれよ」
と言って力無く笑った。
ドアを開け、中に入ると、線香の匂いが家中を支配していた。
オヤジさんが僕を迎え、「信じられないだろ」と呟いた。
アイツは、真っ白なシーツの上で、あちこちぶつけたのか、顔中痣だらけで
静かに横たわっていた。
「ウソだろ?おい、起きろよ」
現実が受け止められない僕は、ゆさゆさとアイツを揺すった。
冷たく硬直した体が、丸太のようにゴロゴロと動いた。
葬式は、同級生がたくさん集まって賑やかな船出となった。
しかし、火葬場に呼ばれたのはごく僅かで、僕は煙突からゆるゆると登る煙を見ながら、
さめざめと一人泣いた。
享年20歳で逝ったアイツ。
あれから、もう10年も経ってしまった。
アイツの分まで、などと言うとおこがましいけど、いつか歳を取り、再会したとき、
恥ずかしくないような人生を送ろうと思う。