Break Time

coffee breakで気分転換を~♪

鷺と雪

2015-03-29 09:47:08 | 読書
北村薫著 第141回直木三十五賞受賞作 「鷺と雪」を読んだ。

不在の父 ・ 獅子と地下鉄 ・ 鷺と雪 の三部作からなる短編推理小説。

一貫して令嬢と女性運転手が活躍する〈ベッキーさん〉シリーズで、『オール読物』に掲載されたものばかり。
そのうちの一つ「不在の父」は私も一度読んでいた。




あらすじ(サイト参照)

不在の父

子爵の滝沢吉広はどことなく浮き世離れした、邪気の無い「神様」のような人だ。
そんな滝沢子爵にそっくりなルンペン(浮浪者)を、兄の雅吉が浅草の暗黒街で見かけ、目が合うと去っていったという。
桐原侯爵家とも縁続きにある名門の子爵がなぜルンペンなどに?・・・


獅子と地下鉄

能を観た帰りに花村家へ寄った叔母夫妻と食事を共にした英子。
近頃の過熱気味の中学受験を見かねた文部省が戒める通達を出したことに話が及び、叔母がある相談を持ちかける。

室町にある老舗の和菓子屋《鶴の丸》の、中学受験を控えた息子・巧が夜中に上野の美術館付近で補導されたという。
嘘をつくような子ではないのに、親には「友達と勉強を教え合う」と言って出て行っていた。
勉強に疲れての気分転換だろうということになったが、心配した母親がつい巧の日記帳を見てしまうと、そこには「ライオン」「浅草」「上野」と書かれていた。
上野で「ライオン」と言えば上野動物園、浅草なら花屋敷だが、巧は何をしにそんな場所へ行ったのか。



鷺と雪

叔母夫妻に誘われ、当代の名人・梅若万三郎が演る能の「鷺」を観に行った英子は、後日銀座の画廊で開かれた能面の展覧会にも行くことになった。
展覧会で能面に見入っていた英子は、大きな音に驚き振り向く。すると、学校で同じ組の子爵令嬢・小松千枝子が失神していた。
面を見て気を失ってしまったようだ。このことはご内聞にと言われた手前、あまり深くは聞けないまま時は過ぎ、修学旅行の季節になった。旅行中も千枝子は相変わらず塞いでいた。

東京へ帰った後、千枝子がようやく事情を話してくれた。旅行の前に、親しくしている有川八重子と街で写真機を使う練習をしていた千枝子は、後日現像したそれに、台湾にいるはずの婚約者が写っているのに気付いたという。
離魂病は死の前兆とも言われるため、ずっと気に病んでいたという。展覧会では婚約者に似た面を見て倒れてしまったようだ。一体なぜいるはずのない婚約者が写っていたのか、英子が謎に挑む。

英子と陸軍少尉の若月も時代の波に呑まれ、別れを迎える。

ほかならぬ人へ

2015-03-23 14:43:51 | 読書
白石一文著「ほかならぬ人へ」直木賞受賞作を読んだ。

『ほかならぬ人へ』には、表題作と『かけがえのない人へ』の2編が収録されている。
どちらの小説も、恵まれた境遇にありながら家族への愛や執着が希薄な人間にとって、大切なものは何かという通底したテーマがある。





あらすじ(サイト参照)

『ほかならぬ人へ』は「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」…妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。
半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性が発していた不思議な“徴”に気づき、徐々に惹かれていく…。


『かけがえのない人へ』は聖司という誠実なエリートの婚約者がいながら、元上司の黒木とSM的な関係を続ける会社員、みはる。
彼女は、若い愛人の家で発作を起こして倒れる父親に、人間的な深みを感じることができない。
そして、そんな父と別れない母には、自信のなさと嘘の匂いを感じる。さらに、弟も軽薄にしか見えない―。
こんな家族の中で育ったみはるも『ほかならぬ人へ』の明生と同様、豊かさゆえの腑抜けな状況におかれているといっていいだろう。

湿地

2015-03-16 21:14:30 | 読書
アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」柳沢由実子 訳を読んだ。

北欧アイスランドの作家で人気がある本の一冊。面白かった。





あらすじ(サイト参照)

北の湿地にある建物の半地下の部屋で、老人の死体が発見された。
金品が盗まれた形跡はなく、突発的な犯行であるかに見えた。だが、現場に残された三つの言葉のメッセージが事件の様相を変えた。
次第に明らかになる被害者の隠された過去。衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相。シリーズは世界四十カ国で紹介され七百万部突破。
グラスキー賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー受賞。いま最も注目される北欧の巨人、

楽園のヴァカンス

2015-03-13 16:58:35 | 読書
第25回山本周五郎賞受賞作 原田マハ著「楽園のヴァカンス」を読んだ。
出だしから「あれ?読んだかも・・・」と思いながら大まかなストーリーは覚えていたが
細部はまた新鮮に読み返すことが出来て、そうそうそうだったと再度確認できた内容で楽しめた。





あらすじ(サイト参照)


それは真っ赤な贋作か、知られざる真作か? 傑作アートミステリー!
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。
ルソーの名作『夢』とほとんど同じ構図、同じタッチ。
持ち主の富豪は真贋を正しく判定した者に作品を譲ると告げる。
好敵手(ライバル)は日本人研究者、早川織絵。リミットは七日間――。
カンヴァスに塗り籠められた真実に迫る渾身の長編!

九年前の祈り

2015-03-06 15:00:22 | 読書
芥川賞受賞作 小野正嗣著「九年前の祈り」を読んだ。
最近長編の作品ばかり読んでいたせいか、あっけなく終わってしまって、
長編の一部分を読んだような気分にさせられた。

毎回思うのだが、私には芥川賞作品より直木賞作品のほうが合っている。




あらすじ(サイト参照)


三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。
希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、
美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。
何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、
さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。
九年の時を経て重なり合う二人の女性の思い。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語