FC東京瓦解。失点止まらず泥沼のリーグ5連敗。
22分 町田浩樹のゴールで鹿島が先制
45分 松村優太のゴールで鹿島が追加点
87分 上田綺世のゴールで鹿島がダメ押し
強い時の鹿島から比べれば、この日の鹿島が特段良かったという訳ではない。ただ、それ以上にFC東京がチームとしての“体”をなしていなかった。ボール保持率が低いのはスタイルとして問題ではないが、シュート数が鹿島19本に対してFC東京は2本。得点の匂いを感じたのは、71分。自陣右サイドのアルトゥール・シルバからディエゴ・オリヴェイラを経由して鹿島陣内の左サイドでフリーになった小川にボールが渡り、ゴール前へアーリークロスを送ると、途中交代の田川が頭から飛び込むもゴール右に惜しくも外した場面くらいか。
FC東京は後半開始直後からジョアン・オマリ、三田、東をそれぞれブルーノ・ウヴィニ、安部柊斗、中村拓海に代え、4-4-2から3-5-2へシステムを移行し、前半に鹿島が自由に両サイド、特に左サイドにボールを通していたのをケアすると、FC東京の両SBが前へ押し出せるようになり、52分のアルトゥール・シルバの右サイド深い位置からのクロスや、左サイド深くへ進出したディエゴ・オリヴェイラのゴール前を通過する鋭いクロスなど、鹿島陣内でチャンスを演出するまでにはなった。だが、流れを掴みかけたもののそこまで。時間の経過とともに鹿島が対応すると、86分に土居に代わって投入された上田が1分後に遠藤康のクロスに合わせて鹿島がダメ押しの3点目を奪い、鹿島に今季初の連勝をもたらすこととなった。
結果はともかく、何よりチームの体をなしてなかったFC東京。正直なところ、攻撃もツメの甘さが見えた鹿島が、人によっては躍動していたように見えるほどの重症だ。一番の要因はコミュニケーション不足による連動のなさ。失点することに恐れるあまりに引き過ぎてしまい、ヴァイタルエリアで鹿島の選手たちを自由にさせてしまっていた。失点が止まらないのは、最終ラインと中盤、あるいは中盤と前線、それぞれの距離が遠く、連動が見られないために大きなスペースを開けてしまっていることが一つ挙げられるが、この日はゴールを守るという意識が強すぎる中盤以下と、前から押し上げたい前線とが乖離して、僅かな時間を除いて鹿島に支配される展開ばかりに終始した。
そして、技術面の拙さもあるが、それを誘発させていることも含め、怯えているのかと思うくらいに精神的に不安定な状態でプレーしてしまっている。連敗を止めなければという意識のみが強すぎて、やるべき課題にまで頭が回らず、選手各人がコミュニケーションを取り、サポートし合うというチームとしての形が皆無だ。それゆえ前へチャレンジする動きもなく、思うがままに攻め込まれる状況にただ右往左往するばかりという負の連鎖に陥ったままだ。
これでFC東京はリーグ5連敗。しかもスコアレスドローとなった名古屋戦を除くすべての試合で失点し、直近2試合連続で0対3と惨憺たるものだ。しかしながら、現時点で肝要なのは、矛盾するようだが、即時に結果を求めるのではなく、自らのストロングポイントに立ち戻って、チームを再構築すること。これまでに勝利していた原動力は何かを突き止め、チームが上手く連動していた形を取り戻すことだ。
具体的には堅守速攻、ファストブレイクを繰り出せていたスタイルがその一つだと思うが、この試合でも守備をテコ入れした後半には、まったく攻撃を為していなかった前半から僅かながらに良化していた。
とはいえ、単に守備を重視するというのではなく、最終ラインと前線がコンパクトになり、互いにスペースを補い合うスライドをもって攻撃の芽を摘んでいた連動性を再び生み出すことに焦点を当て、一つずつ強さと自信をもってプレーしていたスタイルに回帰出来るかがカギになるはずだ。焦りと他に頼るばかりのプレーやメンタルを早く消し去るためには、あらゆる面で基本に立ち返り、トライ&エラーを繰り返していくしかない。
今季のリーグの目標の下方修正は必須だが、試合はまだ3分の1を消化したに過ぎない。いたずらに不安に煽られ、焦りに苛まれるのは不要だ。外野は劇的な良化を求めがちだが、それはもう立ち戻るところがなくなった無責任な最終手段でしかない。劇薬は効き目の持続性を考えればリスクは高過ぎるし、何より絶対に良化するかどうかも分からず、副作用も避けられないことが多い。今季は別にして、常に優勝を争えるチームへのヴィジョンを持つなら、自らのサッカーを実践するために何が必要かを考え、一つずつトライしクリアしていくしかない。眼前の一喜のために刹那の結果を求めるのは愚の骨頂。これ以下はない沼底に陥りかけているピンチをチャンスと捉え、這い上がってほしい。
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【明治安田生命J1リーグ 第13節】
2021年5月10日(日)17:01試合開始 県立カシマサッカースタジアム
入場者数 7,346人
天候 晴 / 気温 20.6℃ / 湿度 52%
主審 村上伸次 / 副審 武部陽介、竹田明弘
第4の審判員 榎本一慶
VAR 井上知大 / AVAR 八木あかね
鹿 島 3(2-0 / 1-0)0 FC東京
得点:
(鹿)町田浩樹(22分)、松村優太(45分)、上田綺世(87分)
(東)
【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 13 波多野豪
DF 25 蓮川壮大
DF 03 森重真人
DF 32 ジョアン・オマリ → ブルーノ・ウヴィニ(46分*)
DF 06 小川諒也
MF 07 三田啓貴 → 安部柊斗(46分*)
MF 02 アルトゥール・シルバ → 田川亨介(75分)
MF 21 青木拓矢
MF 10 東 慶悟 → 中村拓海(46分*)
FW 11 永井謙佑 → アダイウトン(68分)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 22 中村拓海
DF 05 ブルーノ・ウヴィニ
MF 31 安部柊斗
MF 08 高萩洋次郎
FW 15 アダイウトン
FW 27 田川亨介
≪監督≫
長谷川健太
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【2021 明治安田生命J1リーグ FC東京 試合日程】
第01節 02月27日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和(A・埼 玉)
第02節 03月06日(土)14:00 〇FC東京 3-2 C大阪(H・味スタ)
第03節 03月10日(水)19:00 ✕FC東京 2-3 神 戸(H・味スタ)
第04節 03月14日(日)15:00 △FC東京 1-1 大 分(A・昭和電ド)
第05節 03月17日(水)19:00 〇FC東京 3-2 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月21日(日)13:00 〇FC東京 2-1 仙 台(H・味スタ)
第07節 04月03日(土)14:00 △FC東京 0-0 名古屋(A・豊田ス)
第08節 04月07日(水)19:00 〇FC東京 2-1 札 幌(H・味スタ)
第09節 04月11日(日)14:00 ✕FC東京 2-4 川 崎(H・味スタ)
第10節 04月17日(土)14:00 ✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第11節 04月24日(土)14:00 ✕FC東京 1-2 鳥 栖(H・味スタ)
第12節 05月01日(土)14:00 ✕FC東京 0-3 横浜FM(H・味スタ)
第13節 05月09日(日)14:00 ✕FC東京 0-3 鹿 島(A・カシマ)
第14節 05月15日(土)16:00 FC東京 vs 柏 (A・三協F柏)
第15節 05月22日(土)19:00 FC東京 vs G大阪(H・味スタ)
第16節 05月26日(水)19:00 FC東京 vs 清 水(A・アイスタ)
第17節 05月30日(日)14:00 FC東京 vs 広 島(H・味スタ)
第18節 06月19日(土)18:00 FC東京 vs 横浜FC(A・ニッパツ)
第19節 06月23日(水)19:00 FC東京 vs 徳 島(A・鳴門大塚)
第20節 06月27日(日)19:00 FC東京 vs 大 分(H・味スタ)
第22節 07月11日(日)19:00 FC東京 vs 湘 南(A・レモンS)
第21節 07月21日(水)19:00 FC東京 vs C大阪(A・ヨドコウ)
第23節 08月09日(月)19:00 FC東京 vs 鳥 栖(A・駅スタ)
第24節 08月14日(土)14:00 FC東京 vs 札 幌(A・札幌ド)
第25節 08月21日(土)19:00 FC東京 vs G大阪(A・パナスタ)
第26節 08月25日(水)19:00 FC東京 vs 仙 台(A・ユアスタ)
第27節 08月28日(土)19:00 FC東京 vs 神 戸(A・ノエスタ)
第28節 09月11(土)・12(日) FC東京 vs 柏 (H・味スタ)
第29節 09月18(土)・19(日)・20(月) FC東京 vs 横浜FC(H・味スタ)
第30節 09月25(土)・26(日) FC東京 vs 浦 和(H・味スタ)
第31節 10月02(土)・03(日) FC東京 vs 川 崎(A・等々力)
第32節 10月16(土)・17(日) FC東京 vs 名古屋(H・味スタ)
第33節 10月23(土)・24(日) FC東京 vs 鹿 島(H・味スタ)
第34節 11月03日(水) FC東京 vs 清 水(H・味スタ)
第35節 11月06(土)・07(日) FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
第36節 11月20日(土) FC東京 vs 徳 島(H・味スタ)
第37節 11月27日(土) FC東京 vs 広 島(A・Eスタ)
第38節 12月04日(土) FC東京 vs 福 岡(H・味スタ)
※第28節~第38節の日程詳細は、8月中旬に発表予定
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