ホーム新国立無敗もストップし、公式戦3連敗。
5月に入って4連勝と好調を継続し、中7日と休養も十分な広島を迎えたFC東京のホーム国立での一戦は、前半こそスコアレスだったが、後半に入って瓦解。昨季も1分3敗と苦戦を強いられていた広島に、チーム完成度の差を見せつけられた形となった。
FC東京はミッドウィークにルヴァンカップの湘南戦があり、中3日とコンディション差もあったかもしれないが、常に前へボールを動かそうとする広島と、自陣でボールを繋ぐことに重きを置く形となってしまったFC東京とは、明確に推進力の差が見られた。
前半はどちらもシュート数が少なく、スコアレスドロー。前半7分に広島の右FKから、左サイドに流れたボールを収めた前田のパスを受けた東俊希がクロス、それを荒木が押し込みネットを揺らす。だが、右FKを蹴った瞬間にファーサイドにいた前田がオフサイドとなり、FC東京は難を逃れた。FC東京の絶好機は、25分に自陣からのカウンターで佐藤恵允が抜け出し、並走する白井が中に入ったのを利用して自分でペナルティエリア右からシュートを放つも、ゴール左に外してしまったくらいか。
高、小泉などが縦パスを送り込むことも少なくはなかったが、それを受けてからすぐに前を向くことに繋がりにくく、前に持ち運べたとしても外へとボールを動かされ、手数をかけるうちに広島に帰陣されてしまう。それでも前半はまだ広島陣内へ攻め込む時間帯があったが、広島の強固な守備陣に阻まれた。
互いにラストパスやアタッキングサードからのパスの精度がもう一つというところもあって、シュート自体は少なかった。だが、後半に入って、広島が前田を中村へスイッチすると、49分に左サイドの新井のクロスにペナルティエリア中央に侵入した荒木がヘディングでゴール右下にシュートを決めて、広島が先制。FC東京は、試合開始序盤という時間帯、そしてクロスの対応が依然として修正できず、あっさりと荒木をフリーにしてしまっていた。木村、土肥といったCBは活きの良さはあるが、クロスの際のマークを徹底できないと、今後もクロス対応には苦労することになりそうだ。
FC東京の悪い癖として、失点後に意気消沈しがちという部分があるが、この日も荒木に得点を奪われた後は、一気に広島の時間帯へ。何とか白井やエンリケ・トレヴィザンを中心にブロックで最後まではやらせずに耐えていたが、広島は59分、前方への浮き球にジャーメインが競り勝つと、そのボールを収めた加藤が右サイドの中村へスルーパスを送る。ペナルティエリア右からの中村のマイナスのクロスは小泉が足を出してGK野澤大志ブランドンへ戻すが、これをGK野澤大志ブランドンがミスキックし、ジャーメインへパスする形に。これをジャーメインがしっかりと決めて、広島が追加点を挙げる。
これでやや落胆したか、前半トライしていた縦パスも影を潜め始め、自陣低い位置から持ち運ぼうとするも、ミスパスやブロックなどでアタッキングサードまでも到達させることが難しくなる。流れを変えたいFC東京は、白井をマルセロ・ヒアンに、高を東慶悟に代えた後、エンリケ・トレヴィザンを森重、佐藤恵允を仲川にスイッチしたが、77分に途中交代で入ったマルセロ・ヒアンが怪我でピッチを後にすることを余儀なくされると、FC東京の攻撃の頼みの綱を失ってしまう。東慶悟が何とか前方へ浮き球パスや、逆サイドへ散らすなどボールを動かそうとする姿も見せたが、ペナルティエリア前でのパスが精度を欠き、シュートを打つまでには持ち込めない。
86分にペナルティエリア右奥手前の東俊希のFKから、ファーサイドの佐々木のヘディングが競った小泉の手に当たって広島がPKを獲得。ただ、加藤が枠右へ外してピンチを逃れたFC東京だったが、直後の88分に右サイドのスローインから岡の背後を取った中村がドリブルでかわして、ペナルティエリア右へ侵入。中村のマイナスのパスはジャーメインには合わなかったが、その後ろから走り込んできた川辺がペナルティエリア手前から右脚を振り抜き、豪快にネットを揺らす。広島が3点目を奪い取り、勝負は決した。
選手起用については、それぞれの長所があるが、GKが波多野でなく(ルヴァンカップに出場した)野澤大志ブランドンに戻したのは、何か意図があったのか。前節・浦和戦は確かに3失点はしたが、波多野はGKとしてミスをした失点ではないゆえ、少々疑問符はつく。このところ、野澤大志ブランドンの足元のミスでピンチを迎えることが目立っているが、この試合でも結果的にプレゼントパスをしてしまった。それ以外でも広島のプレスを呼び込み過ぎてパスの選択の幅を自ら狭めてしまい、慌てた結果パスミスを献上するという形が頻発している。出しどころが見つからないということもあるのだろうが、冷静さを失う状況に自ら首を突っ込んでいるようでもある。その焦りは、キックではなく急いでスローしようとする際にも表われている。精度を欠いているということでテクニックの部分ももちろんあるだろうが(セーヴィングに関しては素晴らしいだけに)、どちらかといえば少しメンタルの面で落ち着きを取り戻す時間を持つ必要があるかもしれない。
その焦りというか迷いというのは、ビルドアップの際にも露呈していて、次の次の展開までを読んでいない、共有できていないゆえ、どうしてもパスを供給する際に時間がかかってしまう。そして味方との距離が近くないところへパスを出そうとすると精度を欠き、逆に距離が近いと狭いスペースで手数をかけている間に相手に帰陣され、推進力や展開力も削いでしまっている。
そして、攻撃面については、まずは少しでもチャンスがあれば、シュートを打って終わるという形を繰り返すことができていない。ゴール前でパスを出す、シュートを打つタイミングがワンテンポ遅いのは、迷いから判断を鈍らせているともいえる。ワンタッチやダイレクトで繋げている時は、良い展開も生み出しているゆえ、その精度を高めることも大切だ。
守備にしろ、攻撃にしろ、いくつかの“決まりごと”が共有されていないところが、チームとしての不安定さを招いているのは自覚しているはずなので、そこをいかに構築しながら、良い意味で開き直って、思い切ったプレーができるか。積極的なプレーは、たとえミスがあっても挽回に向かう気力も生まれるが、中途半端や迷いながらのプレーはミスをすると負のループへと巻き込まれてしまう。現状を踏まえれば、急に守備が強固になったり、攻撃が見違えるほど良くなるとは思えないから、まずはチーム全体で攻守にわたって積極的なアクションを起こすことだ。そして、困った時に戻れる原点を構築し、共有しておくことだろう。
これで試合数こそ1試合少ないが、降格圏の18位・横浜FCと勝ち点が並んだ17位に。再び降格圏へ吞み込まれる状況となってきた。新潟、横浜FMも勝利し、19位の新潟とは勝ち点差3に近づき、最下位の横浜FMも首位・鹿島に勝利したことで、これから調子を上げてきそうだ。ここで踏み止まらないと、一気に下降する危険も孕んでいる。攻撃の光明と期待したマルセロ・ヒアンの怪我の状態次第では、有効な戦術の一つを使えなくなるリスクもある。それでも、活路を見出さなければならない。不幸中の幸いか、FC東京より上の順位のチームも14位・福岡まで勝ち点3差、11位・G大阪まで勝ち点5差と、連勝、連敗のチームが出れば、ガラリと順位が変わる状況ではある。ひとまず連敗を止め、勝ち点を1つでも積み上げていかねばならない。
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明治安田J1リーグ 第18節
2025年5月25日(日)15:04KO
国立競技場
入場者数: 46,206人
天候:曇 / 気温:21.3℃ / 湿度:46%
主審:F.バドストゥーブナー
副審:西橋 勲、西村幹也
第4の審判員:高崎航地
VAR:荒木友輔
AVAR:平間 亮
FC東京 0(0-0 / 0-3)3 広 島
【得点】
(東):
(広):荒木隼人(49分)、ジャーメイン良(59分)、川辺 駿(88分)
〈試合経過〉
23分 警告 広島 塩谷 司
46分* 交代 広島 前田直輝 → 中村草太
49分 得点 広島 荒木隼人
59分 得点 広島 ジャーメイン良
62分 交代 東京 白井康介 → マルセロ・ヒアン / 高 宇洋 → 東 慶悟
73分 交代 東京 エンリケ・トレヴィザン → 森重真人 / 佐藤恵允 → 仲川輝人
77分 交代 東京 マルセロ・ヒアン → 岡 哲平
85分 警告 東京 小泉 慶
88分 得点 広島 川辺 駿
90分 交代 広島 塩谷 司 → 越道草太 / 加藤陸次樹 → ヴァレール・ジェルマン / 荒木隼人 → 山﨑大地
90+4分 交代 広島 ジャーメイン良 → 松本大弥
◇◇◇
【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 32 土肥幹太
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
DF 47 木村誠二
DF 99 白井康介
MF 07 安斎颯馬
MF 08 高 宇洋
MF 22 遠藤渓太
MF 37 小泉 慶
FW 16 佐藤恵允
FW 33 俵積田晃太
〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 03 森重真人
DF 30 岡 哲平
DF 04 木本恭生
MF 10 東 慶悟
MF 27 常盤亨太
FW 19 マルセロ・ヒアン
FW 28 野澤零温
FW 39 仲川輝人
〈監督〉
松橋力蔵
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【FC東京 2025シーズン 試合日程】
◇2025明治安田J1リーグ
第01節 02月15日(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FC(A・ニッパツ)
第02節 02月22日(土)15:00✕FC東京 0-1 町 田(H・味スタ)
第03節 02月26日(水)19:00〇FC東京 3-1 名古屋(H・味スタ)
第04節 03月01日(土)14:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 03月08日(土)16:00△FC東京 0-0 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月15日(土)14:00✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第07節 03月29日(土)17:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第08節 04月02日(水)19:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ)
第09節 04月06日(日)13:00✕FC東京 0-1 岡 山(A・JFEス)
第10節 04月11日(金)19:00△FC東京 1-1 柏 (H・国 立)
第11節 04月20日(日)15:00△FC東京 1-1 C大阪(A・ヨドコウ)
第12節 04月25日(金)19:30〇FC東京 3-0 G大阪(H・国 立)
第13節 04月29日(火)13:05✕FC東京 0-2 清 水(H・味スタ)
第14節 05月03日(土)14:00〇FC東京 3-2 新 潟(A・デンカS)
第16節 05月10日(土)15:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第17節 05月17日(土)16:00✕FC東京 2-3 浦 和(A・埼 玉)
第18節 05月25日(日)15:00✕FC東京 0-3 広 島(H・国 立)
第19節 05月31日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都(A・サンガS)
第20節 06月14日(土)19:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ)
第21節 06月22日(日)18:30 FC東京 ✕ G大阪(A・パナスタ)
第15節 06月25日(水)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)※1
第22節 06月28日(土)19:00 FC東京 ✕ 横浜FC(H・味スタ)
第23節 07月05日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 (A・三協F柏)
第24節 07月19日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(H・味スタ)
第25節 08月10日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島(H・味スタ)
第26節 08月16日(土)19:00 FC東京 ✕ 湘 南(A・レモンS)
第27節 08月24日(日)19:00 FC東京 ✕ 京 都(H・味スタ)
第28節 08月31日(日)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(A・豊田ス)
第29節 09月13日(土)・14日(日)・15日(月)00:00 FC東京 ✕ 東京V(H・味スタ)
第30節 09月20日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎(A・U等々力)
第31節 09月23日(火)00:00 FC東京 ✕ 福 岡(H・味スタ)
第32節 09月27日(土)・28日(日)00:00 FC東京 ✕ 横浜FM(H・味スタ)
第33節 10月04日(土)・05日(日)00:00 FC東京 ✕ 清 水(A・アイスタ)
第34節 10月18日(土)・19日(日)00:00 FC東京 ✕ 広 島(A・Eピース)
第35節 10月25日(土)・26日(日)00:00 FC東京 ✕ 岡 山(H・味スタ)
第36節 11月09日(日)00:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(日)00:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第38節 12月06日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟(H・味スタ)
※1 横浜FMが「AFCチャンピオンズリーグエリート 2024/25」準々決勝以降進出の際は6月25日(水)19:30に、敗退時は5月6日(火)14:00に開催
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