室屋加入、4バックで挑み、連敗はストップ。
強い雨が吹きつける味の素スタジアムでの一戦は、FC東京、C大阪ともに2点を挙げるも決着をつけることが出来ず、痛み分けとなった。
FC東京は2週間のインターバルがあった一方、C大阪はミッドウィークの天皇杯から中2日を含む連戦が続き、コンディションに多少差はあったか。それがC大阪の序盤の劣勢と80分以降のFC東京の攻勢の時間帯を生んだ要因の一つになったともいえる。
FC東京は前節・京都戦から先発4名を変更。白井、橋本、マルセロ・ヒアンに加え、独・ハノーファー96から復帰した室屋が右SBで初先発。C大阪は海外移籍した北野を含め、高橋、中島に代わって、登里、香川、ヴィトール・ブエノが先発に名を連ねた。
3分、ルーカス・フェルナンデスに詰めてボールを奪ったFC東京がボールを運び、高からのパスを受けたマルセロ・ヒアンが決めて、早々とFC東京が先制。9分には安斎のスルーパスに抜け出したマルセロ・ヒアンのループシュートがポストに当たるなど、FC東京が決定機を作っていく。
だが、C大阪が徐々にボールを動かせるようになると、香川、ヴィトール・ブエノを中心にボールを左右に配球。前線のラファエル・ハットン、ルーカス・フェルナンデス、チアゴ・アンドラーデの強力外国人勢がスペースを巧く使って入れ替わりながら、前への推進力を高めていくと、42分に自陣から香川が素早く縦パスを供給。これにラファエル・ハットンが抜け出し、GK波多野と1対1となると、落ち着いてGK波多野をかわしてゴールを流し込み、同点で後半へ突入した。
後半は、序盤からFC東京がゴール前へ攻め込みながらネットを揺らすことが出来ないでいると、C大阪が絶好機を迎える。71分にFC東京自陣のスローインがC大阪に渡り、ルーカス・フェルナンデスがスルスルと運んで、香川に代わってピッチへ入った田中へパス。それをボックス内へ走り込みながら受けた田中が右脚でゴールへ流し込み、C大阪が逆転に成功する。
攻勢を掛けながらも仕留められずにいるFC東京と、好機を見逃さずに決め切ってしまうC大阪という図式が出来上がりかけたが、FC東京は失点前にピッチに入った佐藤恵允、俵積田に続き、75分にやや推進力を欠き、突っかかることも多かった遠藤を野澤零温にスイッチ。野澤零温は投入直後はパスの出し手と合わなかったりもしたが、81分に右サイドからスペースへ斜めのスルーパスを送ると、これに反応したマルセロ・ヒアンが抜け出し、GK福井の足元を抜けるゴールを決めて、FC東京が同点に追いついた。
どうしても勝ち点3が欲しいFC東京は、足が攣ったマルセロ・ヒアンに代えて、84分にエヴェルトン・ガウディーノを投入。併せて、CBの木本を岡にスイッチ。ここまで試合途中にCBを変更して、失点をするケースが少なくないFC東京だが、この試合でもCBの交代に打って出た。不安がなかったと言えば噓になるが、それでも、俵積田や野澤零温ら途中出場の前線の選手がC大阪の裏のスペースを狙って押し込むと、FC東京の攻勢の時間帯に。動きの良さを感じさせたエヴェルトン・ガウディーノは、88分に俵積田のドリブル突破からのクロスに反応して左脚を一閃。これはGK福井のパンチングでピンチを防ぐ形となったが、C大阪は体力的な疲れが露見。FC東京の時間帯はアディショナルタイム突入後も続き、C大阪陣内へ攻め込むが、西尾を中心に身を挺してシュートをブロックするなど、粘り強く対応。そのままタイムアップの笛を聞くこととなった。
この試合は見方によって、評価が異なるものとなったか。降格圏に沈み、後がなくなったFC東京は、室屋、長倉、GKキム・スンギュ、アレクサンダー・ショルツを補強。その室屋を含むDFラインを4バックにしたことで、久しくままならなかった自陣でボールが停滞する数が格段に減り、左SB白井、右SB室屋の駆け上がりがC大阪のDFの両サイドの裏のスペースへ攻め込む形を生んだ。1トップのマルセロ・ヒアンへボールが渡るシーンも増え、何度もC大阪のゴールへと迫った(ただし、決定力はもう一段、二段、高めていかないといけない)。トップ下のような位置に配された東慶悟の気の利いた配球、安斎の奮闘、高と橋本のボランチも水を運び、相手をせき止める役割をこなしていた。試合終了後の速報値では、枠内シュートこそ4本と少なかったものの、FC東京のシュート数が20本と、C大阪の11本の倍近いシュートを放ち、1点台未満が常だったゴール期待値も2.05(C大阪は1.01)と攻撃が活性化されたことが窺える。
その一方で、やはり失点癖が治らない。C大阪のラファエル・ハットンによる得点は香川のロングスルーパスが見事だったこともあったが、2失点目はボールホルダーに詰めることが出来ないまま中央のスペースを持ち運ばれてしまった。クロス対応もそうだが、まずはボールホルダーやパスの出し手にマークをつけて、攻撃の選択肢を減らすディフェンスを重ねないと、パスワークが巧みなC大阪であれば、気持ちよいようにボールを動かされてしまう。
そして、この試合でも、特に森重、木本などCB陣に多かったのだが、ボールを持つと相手を呼び込もうとしてか瞬時にパスやロングボールを出さないため、相手のプレスに引っ掛けられる場面が散見。プレスを剥がして持ち運ぶならまだしも、結局呼び込み過ぎてパスコースを制限されるだけになってしまう。スカウティングからもFC東京はGKを含む最終ラインで各駅停車のパスを繋ぐこともわかっているだろうから、相手はアグレッシヴなプレスを当然のように仕掛け、FC東京がパスの選択肢がなくなって慌てて繋いだ先にも当然プレスを掛けているから、どんどんと後ろへ押し下げられることになってしまう。それが中盤でも同じで、ボールを素早く頻繁に動かさないと相手のターゲットとなり、サイドで引っ掛けられてボールがピッチ外に出ればまだマシだが、中央でボールを引っ掛けられて入れ替わられてしまうと、一気にカウンターのピンチを招くことになる。
この試合では4バックにしたことで、DFラインの間隔が空き過ぎず、長い距離のバックパスや横パスが少なかったゆえ、自陣での“やらかし”が減ったかと思うが、これはあくまでも結果的にそうなのであって、意図して整備していたかどうかは疑問だ。同時に、DFラインに高や橋本のボランチ勢が降りてくることで、最終ラインに厚みをもたらすことでピンチを回避したりもしたが、それによって中盤にスペースが生まれてしまい、前線との距離が離れてしまった。そうなると前へ付けるパスにもかなりの精度が求められるし、前線への浮き球で競り合わせたとしても、セカンドボールの回収率は低くなり、何度も攻め込まれる時間帯を作ってしまいかねない。
かなりの雨量がピッチに注がれるコンディションとC大阪の連戦での消耗からオープンな展開になったことで、双方ともゴールへ向かうチャンスが生まれ、スリリングでスタジアムが沸く瞬間も少なくなかった試合ではあったが、内容のクオリティしては、大いに課題が露見した一戦となった。
本音を言えば、ホーム味スタで勝利し、反撃の狼煙を上げたいところだったが、ともあれ、勝ち点1を積み上げたことで、予断は許さないが降格圏は脱出。だが、ほんの少しでも気を緩めれば、再び降格圏に吞み込まれることには変わらない。特にこの6月は次節のアウェイG大阪の後は、現在最下位の20位と苦しむ横浜FM、その横浜FMとの直接対決で新潟が勝利したことで19位へと転落した横浜FCとの試合が組み込まれている。今週のミッドウィークには天皇杯もあり、天皇杯・金沢戦から中3日でG大阪戦、中2日で横浜FM戦、中2日で横浜FC戦とタイトなスケジュールとなる。とはいえ、下位の横浜2チームには絶対に敗戦は許されない。ここで連勝を果たせば、降格圏から大きく抜け出せるきっかけにもなるはずだ。天皇杯はターンオーヴァーをするだろうが、勝利への貪欲な姿勢を崩さないためにも、しっかりと勝ち切って、アウェイG大阪戦へ挑みたい。
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明治安田J1リーグ 第20節
2025年6月14日(土)19:03KO
味の素スタジアム
入場者数: 24,572人
天候:雨 / 気温:21.6℃ / 湿度:66%
主審:荒木友輔
副審:聳城 巧、安藤康平
第4の審判員:榎本一慶
VAR:上原直人
AVAR:坂本晋悟
FC東京 2(1-1 / 1-1)2 C大阪
【得点】
(東):マルセロ・ヒアン(3分)、マルセロ・ヒアン(81分)
(C):ラファエル・ハットン(42分)、田中駿汰(71分)
〈試合経過〉
03分 得点 東京 マルセロ・ヒアン
42分 得点 C大 ラファエル・ハットン
46分* 交代 C大 登里享平 → 高橋仁胡
56分 交代 C大 ヴィトール・ブエノ → 中島元彦
60分 交代 東京 東 慶悟 → 佐藤恵允 / 安斎颯馬 → 俵積田晃太
66分 交代 C大 香川真司 → 田中駿汰 / チアゴ・アンドラーデ → 本間至恩
71分 得点 C大 田中駿汰
75分 交代 東京 遠藤渓太 → 野澤零温
81分 得点 東京 マルセロ・ヒアン
84分 交代 東京 木本恭生 → 岡 哲平 / マルセロ・ヒアン → エヴェルトン・ガウディーノ
85分 交代 C大 ラファエル・ハットン → 柴山昌也
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【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 02 室屋 成
DF 03 森重真人
DF 04 木本恭生
DF 99 白井康介
MF 07 安斎颯馬
MF 08 高 宇洋
MF 10 東 慶悟
MF 18 橋本拳人
MF 22 遠藤渓太
FW 19 マルセロ・ヒアン
〈控えメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 30 岡 哲平
DF 32 土肥幹太
DF 05 長友佑都
MF 37 小泉 慶
FW 16 佐藤恵允
FW 28 野澤零温
FW 33 俵積田晃太
FW 98 エヴェルトン・ガウディーノ
〈監督〉
松橋力蔵
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【FC東京 2025シーズン 試合日程】
◇2025明治安田J1リーグ
第01節 02月15日(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FC(A・ニッパツ)
第02節 02月22日(土)15:00✕FC東京 0-1 町 田(H・味スタ)
第03節 02月26日(水)19:00〇FC東京 3-1 名古屋(H・味スタ)
第04節 03月01日(土)14:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 03月08日(土)16:00△FC東京 0-0 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月15日(土)14:00✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第07節 03月29日(土)17:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第08節 04月02日(水)19:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ)
第09節 04月06日(日)13:00✕FC東京 0-1 岡 山(A・JFEス)
第10節 04月11日(金)19:00△FC東京 1-1 柏 (H・国 立)
第11節 04月20日(日)15:00△FC東京 1-1 C大阪(A・ヨドコウ)
第12節 04月25日(金)19:30〇FC東京 3-0 G大阪(H・国 立)
第13節 04月29日(火)13:05✕FC東京 0-2 清 水(H・味スタ)
第14節 05月03日(土)14:00〇FC東京 3-2 新 潟(A・デンカS)
第16節 05月10日(土)15:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第17節 05月17日(土)16:00✕FC東京 2-3 浦 和(A・埼 玉)
第18節 05月25日(日)15:00✕FC東京 0-3 広 島(H・国 立)
第19節 05月31日(土)19:00✕FC東京 0-3 京 都(A・サンガS)
第20節 06月14日(土)19:00△FC東京 2-2 C大阪(H・味スタ)
第21節 06月22日(日)18:30 FC東京 ✕ G大阪(A・パナスタ)
第15節 06月25日(水)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)※1
第22節 06月28日(土)19:00 FC東京 ✕ 横浜FC(H・味スタ)
第23節 07月05日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 (A・三協F柏)
第24節 07月19日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(H・味スタ)
第25節 08月10日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島(H・味スタ)
第26節 08月16日(土)19:00 FC東京 ✕ 湘 南(A・レモンS)
第27節 08月24日(日)19:00 FC東京 ✕ 京 都(H・味スタ)
第28節 08月31日(日)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(A・豊田ス)
第29節 09月13日(土)・14日(日)・15日(月)00:00 FC東京 ✕ 東京V(H・味スタ)
第30節 09月20日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎(A・U等々力)
第31節 09月23日(火)00:00 FC東京 ✕ 福 岡(H・味スタ)
第32節 09月27日(土)・28日(日)00:00 FC東京 ✕ 横浜FM(H・味スタ)
第33節 10月04日(土)・05日(日)00:00 FC東京 ✕ 清 水(A・アイスタ)
第34節 10月18日(土)・19日(日)00:00 FC東京 ✕ 広 島(A・Eピース)
第35節 10月25日(土)・26日(日)00:00 FC東京 ✕ 岡 山(H・味スタ)
第36節 11月09日(日)00:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(日)00:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第38節 12月06日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟(H・味スタ)
※1 横浜FMが「AFCチャンピオンズリーグエリート 2024/25」準々決勝以降進出の際は6月25日(水)19:30に、敗退時は5月6日(火)14:00に開催
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