goo blog サービス終了のお知らせ 

*** june typhoon tokyo ***

DOUBLE 『10YEARS BEST WE R&B 1998-2008』

Double “double”“Double”を経ての“DOUBLE”の軌跡。

 彼女との出会いはデビュー・シングル「For Me」から。正確に言えば、彼女たちとの出会い、か。
 当時は姉のSACHIKOとのデュオだった。それぞれのルックス・イメージとは逆で、パンチの効いたパワフルなヴォーカルを聴かせるSACHIKOとクールでスムースなヴォーカルを聴かせるTAKAKOというスタイルに、いっそう興味を覚えていた。
“横田基地でライヴをした本格派R&Bデュオ”みたいなフレーズでアピールしていたが、当時は“そんなことどうせ眉唾ものだろ”と思っていた(どうやらデビューする条件に横田基地でのライヴがあったらしい)けれど、そんなことはどうでもよかった。
R&Bシンガーと名乗ったはいいが、すっかりR&B風のポップスへと“転向”してしまうシンガーが多いなかで、彼女たちならやってくれるのではと期待を抱いたデュオ……それがDOUBLEだったのだ。

Double_crystal 4thシングル「Shake」でブレイクした彼女たちだが、それ以前に松尾“KC”潔のプロデュースによってしっかりとしたヴィジョンが描かれていた。それが3rdシングル「BED」で、この10周年を記念してリリースされた「残り火-eternal BED- 」では、タイトルにあるように「BED」をモチーフとしており、「BED」こそが彼女らの原点といえる。この楽曲でジャパニーズ・シーンでの“R&B”を追求していく自信がついた彼女らは、、今井了介をプロデューサーに迎えた「Shake」で一気に認知されることになった。ただ、直後にSACHIKOがクモ膜下出血により急逝。だが、これにより、どちらかといえばSACHIKOが得意としていたポップ寄りのR&Bよりも深く踏み込んだ、TAKAKOが強く求めていたディープなUS調R&Bへと移行出来、成功したことは、皮肉な結果なのかもしれない。

 ソロ・ユニットとして再起したTAKAKOは、Full Of Harmony(当時はF.O.H)を迎えて、重い感情を押し殺すような軽快でスムースなグルーヴを持った「handle」、クールなダンス・ミッド「U」をリリース。これらには意を決したような強さがヴォーカルの節々に見受けられる。そして、さらなる高みへと上ったのが、次のシングル「Angel」だ。姉SACHIKOのことを綴った美メロ・バラードといったこと以上に、アンジェラ・ジョンソン(Angela Johnson)が制作に携わったのが大きい。感情をてらいなく、しかしながら上質なものとして届ける、まさにハートウォームなこの楽曲は、TAKAKOの音楽活動に多大な影響を及ぼしたことは間違いない。表向きの激しさやキャッチーなフレーズなどなくとも、良質なサウンドを心より搾り出せば、リスナーの気持ちに訴える、揺らすことが出来る……そう意識付けられたのではないだろうか。アンジェラ・ジョンソンは他にも、F.O.HのHIROとの艶美なデュエット・チューン「Let's Get Together」も提供している。(アンジェラ・ジョンソンのアルバムについては、以前の日記を参照)

 スムースなグルーヴィR&Bを極めたといってもいいのが、2ndアルバム『VISION』(『Crystal』はプロローグ・アルバム扱い)。テイスト・オブ・ハニー「今夜はブギ・ウギ・ウギ」(「Boogie Oogie Oogie」)をネタ使いした「Driving All Night」や軽快なグルーヴとエレピのアクセントが魅力の9thシングル「Who's That Girl」、前述の「Let's Get Together」、切ない想いを繊細かつキュートに仕上げた「Kissing You」など、珠玉の名曲が揃った傑作だ。この時期の楽曲は本当に素晴らしく、流行り廃れがせわしい現代の音楽シーンのなかでも、しっかりと後世に受け継がれる楽曲たちだ。個人的には、10年を通しても、この『VISION』やこのアルバムに収録された楽曲は、彼女の最高峰の楽曲群だと思っている。

Double_call_me ただ、ここでDOUBLEは上を見ることをやめなかった。
それまでのクールでスムースなR&B路線から、Trackboyz(ネリー「Air Force Ones」をトラックメイク)とmarkeeをプロデューサーに迎えたアッパー「Rollin' on」をリリースしてきた。かなりブラック色の濃いUS調R&Bで、チープな男女の掛け合いをフィーチャーしたチルアウト・ダンス・チューンだ。続いて、うねるボトムと跳ねるようなエレピのアクセントの絡みが絶妙なダンス・チューン「destiny」をリリース。ネクスト・ステップへと自らを奮い立たせているような彼女に、多少違和感を感じながらも、さらなる艶をどう表現するかに期待していた。
 そのネクスト・ステップを披露したのが3rdアルバム『Wonderful』だったが、残念なことにCCCD(コピーコントロール)でのリリースとなってしまった。DOUBLEのCDはフォーライフからのリリースだったので、CCCDがかかることはなかったと思ったのだが…。 個人的にはこれがCDの購入にストップをかけてしまった(後に購入するが…)。しかし、どうしてもネクスト・ステップ“DOUBLE”を体感したかった自分は、レコードを購入。タイトル・ナンバー「Wonderful」をはじめ、「Souljah」や前述のシングル「destiny」 「Rollin' on」などチープなアッパーも多いが、その根底には良質なサウンドを届けるという「Angel」での信念がしっかりと垣間見られる。そして、それをストレートに打ち出したのがスロー・バラード「Okaeri」で、彼女が持つ純日本人的な母性やささやかさに溢れていた。CCCDというアルバム形態は落胆したが、内容は彼女の音楽的振幅を広げようという試みを持った予想以上の良作だった。

 その後、BOY-KENとオルケスタ・デ・ラ・ルスをフィーチャーした、サルサとレゲトンの融合とでもいうべきラテン調の「ROCK THE PARTY」、濃厚な妖艶さを持ったファルセット・ヴォーカルが特色の「Call Me」、高揚感を煽るホーンを大胆に汲み入れたダンス・クラシック調R&Bチューン「Emotions」をリリース。意を決した感じはさらに高まり、それは「Emotions」のリリックに見られる通りで、“走り出したら止まらないエモーション”“ひとりでに踊りだすNOTE どこに向かうの?”と枯渇を知らない湧き上がるイマジネーションを抑えるのに必死だというような心境が窺える。
 そのイマジネーションが激変したのか、幾重にもコーラスを重ねた美メロ・ミッド・バラード「SPRING LOVE」のPVでは、天使の羽をつけただけのセミヌードを披露。また、m-floのVERBALを迎えた「SUMMERTIME」では、海をテーマにキャッチーでダンサブルといった、ベタなチープ・チューンを手掛けた。それらを収録したアルバム『Reflex』は、一聴とっ散らかってる感じもするが、質の高いインタールードを随所に挟み込んでまとめあげている。“ジンジギ ザンザ ザンガザン~”の強力フックで一躍注目の的となった「ジンギー」で知られるアクセント(Ak'Sent)やルーペ・フィアスコ(Lupe Fiasco)をフィーチャーした楽曲もあり、精力的な姿が見受けられるが、そこでも細やかなハープをトッピングしたしなやかなバラード「WHY DO YOU GO」で、しっかりとDOUBLEの原点を見せていて、軸はぶれていないところを示している。


Double_takako 10年の活動を通してみると、さまざまなアプローチで多方面にベクトルを伸ばしているが、自身がDOUBLE足りうるべき信念をどの楽曲にも必ず持たせるというプライドが見え隠れしている気がする。真摯にR&Bを追求していく……その意志はかなり強固なもので、時には頑固にまで感じられるかもしれない。だが、それこそが“double”でも“Double”でもなく、“DOUBLE”としての存在意義であり、ソロ・ユニットとしての“DOUBLE”のある姿なのだ。
 この10年でいわゆる成長した……とは思わない。楽曲に限ってみれば、当初から多くが完成されていたのだから。ただ、テクニックやサウンドなどを彼女の表現方法のハードであるとするならば、心持ちや内面を映し出すヴォーカルといったソフトは、画期的に向上したといえる。ZEEBRA、平井堅、S-WORD、AIら多くのアーティストと交流し、m-flo『ASTROMANTIC』での参加曲「Life Is Beautiful」をきっかけにジャズ・アルバムを制作、井上陽水、安全地帯らの楽曲のカヴァー、久保田利伸とのデュエット……その向上的な身軽さを持って、さまざまに影響を受け、咀嚼している途中なのだろう。「Emotions」よろしく、溢れるイマジネーションをどこでどのように注ぎ出していけばいいのか、そう考えている最中なのではないか。それらを“成長”というのならば、DOUBLEは劇的に成長した。TAKAKOの“DOUBLE”として。そして、それは今も継続中である。

 楽曲に限ってみれば、当初から完成していた……それはこの10年の軌跡をみても(聴いても)、デビュー時からしっかりと軸が備わった、10年前も今も遜色ない上質な楽曲であるところからも解かるだろう。しかしながら、個人的に完成していたと思っていたが、この10年を区切りに、またさらなる高みへと上り詰めていくような気がしてならないのも事実。「SPRING LOVE」で羽を手に入れてしまった彼女が、新たに目指す“VISION”はどこか。DOUBLEのネクスト・ネクスト・ワールドは?そわそわと浮き足立つ気持ちを抑えながら、またじっくりとこのアルバムを聴き返してみよう。そこに答えのヒントが隠されているかもしれないのだから。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「CDレヴュー」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事