平川怜がJ1初出場。それ以外光明を見い出すのが難しい敗戦を喫し、未勝利も6試合を重ねる。
代表ウィークでの中断が明け、J1リーグも残り3節。マッシモ・フィッカデンティ監督はじめ、権田、河野とFC東京にも馴染み深い人たちが所属する鳥栖での一戦は、鳥栖の「クラブ創設20周年記念試合」という特別な試合にこちらからも華を添えてしまう結果となった。
シュート数で見れば、鳥栖の6本に対してFC東京が11本を示すように、前後半の立ち上がりにチャンスを作ったのはFC東京。6分の永井のミドルは権田がセーヴ、11分の太田からのクロスをダイレクトでボレーした橋本のシュートは高くバウンドしてバーの枠上へと、攻勢を仕掛ける。しかし、16分にゴールやや左の位置から、原川が左ポスト内側を叩いてゴールマウスへ飛び込むFKを決めて鳥栖が先制。それでも、24分に太田のアーリー気味のクロスを中央に走り込んだウタカがフリーで合わせられる決定機を掴むが、ウタカがこのチャンスを活かせず、ヘディングシュートは枠外左へ。
FC東京が決定機をものに出来ないでいると、33分に鳥栖が右サイドの小野からエリア中央に走り込んだイバルボへのスルーパスが通ってチャンス到来。イバルボのシュートは一度大久保択生が身を挺してセーヴに成功するが、その弾いたボールが転がるエリア中央へ猛然と駆け込んできた福田が冷静に決めて鳥栖が追加点を挙げる。チャンスをものにする鳥栖と決定機をことごとく外してきたFC東京との差が露呈した前半となった。
51分からは左サイドから、東のパスを受けたウタカがエリア奥へスルーパス。これに反応した永井が折り返す。一度は鳥栖ディフェンスに阻まれるものの、ペナルティアーク付近でそのセカンドボールを収めた橋本が倒れ込みながら室屋へ流すと、室屋が左足で巻き込むようなシュートを放つも僅かに枠外。一方、鳥栖も途中からシステムを5-4-1に変更して守備で固める戦術へ切り替えて逃げ切りを図るなか、74分にカウンターでイバルボが単独突破して抜け出し、GKとの1対1の場面を作る。さらに追加点と思われたが、イバルボのシュートははるかゴール上へ。FC東京はイバルボのシュートの精度に助けられる形に。
試合終了間際、ロングボールに反応した前田の落としの対処にまごつく鳥栖キム・ミンヒョクを尻目に、ボールを奪った大久保嘉人が権田との1対1を冷静に決めて1点を返したものの、時すでに遅し。FC東京は9月中旬の仙台戦以来勝ち星に見放される結果をまた更新してしまった。
ACL圏内以上も望めず、残留争いも僅かの差で逃れた現状のFC東京。誤解を恐れずに言えば、J1残留は確定しているため、結果はどうなろうとも今季は問題がないといえばそれまでだ。だが、この調子から脱却出来ないでいれば、来季以降のJ1は保証されていないのはもちろん、クラブとして築くべきチームカラーの構築は非常に困難と言わざるをえない。
安間体制になってから初戦の仙台戦こそ勝利したものの、それ以降は未勝利。つまり、6試合勝ち星を得られていない状況は、安間体制の結果の推移そのものとなる。3バックを継続しているが、2失点以上の試合は負け、それ以外はドローと攻守にわたって成果を発揮しているとは到底思えない。さらに、相手が優勝やACL圏内を争う上位ならまだしも、直近の4戦のうち3戦は甲府、札幌、清水の残留争いをしているチームとの戦いで、その3戦も2分1敗と低迷ぶりを露呈してしまっている。
この日の先発には梶山や、クラブとしての正式発表はされていないが来季J1に昇格する長崎への移籍が確実の徳永が先発に名を連ねる一方、怪我明けの大久保嘉人ほか、山田やユ・インス、平川の若手がベンチスタート。もちろん“結果”を掴み取ろうとするのは当然だが、その結果次第で圏内を狙えたり降格に甘んじる状況がない今を考えると、来季に向けて若手などに経験を積ませる舞台にしてもいいのではないか。若手の将来へのチャレンジの場であれば、ファン・サポーターもまだ結果ばかりに囚われずにすむだろうが、それもなくただ敗戦を積み重ねていくばかりでは、クラブへの求心力の低下へ拍車がかかる一方だ。
残り2戦はアウェイで広島とホームでのG大阪となる。残留を掛けた広島はモチベーション含め容易な相手ではなく、チーム状態から見ても現状では勝利は非常に厳しいだろう。最終節の相手はG大阪。こちらも25節から未勝利が続き、今節でも25本のシュートを打たれて（G大阪は僅か1本）川崎に敗戦。攻撃の形が全く作れていない。次節の札幌でも敗れることになると、9月以降未勝利のチーム同士が最終節を戦うという状況も生まれかねない。さらに滑稽となりそうなのが、今季の退任が決定しているG大阪の長谷川健太監督が、来季のFC東京の監督就任濃厚という報道がなされていること。最終節にFC東京が勝利したところで、今のFC東京に勝てないチームの監督を来季に迎え入れて大丈夫なのかという不安は募り、G大阪が勝利すれば、FC東京は8試合未勝利で今季を終えなければならない（しかも天皇杯も残されていない）というフラストレーションが募る。ドローもどっちつかずと、不信感が高まるばかりとなってしまいそうだ。
もはや、引退を決めた石川直宏が最終節までにその勇姿を披露するかのみが、数少ないポジティヴな要素となっている状態。徳永への貢献度は重々承知だが、他J1チームへ移籍濃厚する選手よりも、今節ベンチに入った山田をはじめ、U-23で切磋琢磨している若手を起用していくことの方が有益ではないか。本来ならば、今からでも成果や内容を出せていない監督を替えることも考えねばならない危機的状況という認識がどこまであるのか。少なくともその認識を残り2節で示してもらいたい。対策を打てずになし崩し的にシーズンを終えれば、ファン・サポーターはスタジアムから足が遠のくばかりだ。
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ戦 第32節】
2017年11月18日(土)14:05 試合開始 ベストアメニティスタジアム
入場者数 19,476人
天候 曇 ／ 気温 15.0℃ ／ 湿度 56％
主審 廣瀬格 ／ 副審 金井清一、馬場規 ／ ４審 西山貴生
鳥 栖 2（2-0 / 0-1）1 FC東京
≪得点≫
（栖）： 原川力（17分）、福田晃斗（34分）
（東）： 大久保嘉人（90+4分）
≪退場≫
◇◇◇
【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 01 大久保択生
DF 22 徳永悠平
DF 14 チャン・ヒョンス
DF 05 丸山祐市
MF 02 室屋 成
MF 37 橋本拳人
MF 38 東 慶悟
MF 06 太田宏介
FW 10 梶山陽平 → 大久保嘉人（62分）
FW 15 永井謙佑 → 前田遼一（78分）
FW 09 ピーター・ウタカ → 平川 怜（72分）
≪サブスティテューション≫
GK 33 林 彰洋
DF 36 山田将之
DF 04 吉本一謙
MF 21 ユ・インス
MF 40 平川 怜
FW 13 大久保嘉人
FW 20 前田遼一
≪監督≫
安間貴義
◇◇◇
◇◇◇
【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島（A・カシマ）
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮（H・味スタ）
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎（H・味スタ）
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖（H・味スタ）
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌（A・札幌ド）
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和（H・味スタ）
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟（A・デンカＳ）
第09節 04/30(日)15:00〇FC東京 1-0 広 島（H・味スタ）
第10節 05/07(日)14:00〇FC東京 2-0 仙 台（A・ユアスタ）
第11節 05/14(日)15:00✕FC東京 1-2 柏 （H・味スタ）
第12節 05/20(土)19:00△FC東京 1-1 神 戸（A・ノエスタ）
第13節 05/28(日)16:00△FC東京 1-1 甲 府（H・味スタ）
第14節 06/04(日)13:00〇FC東京 2-0 清 水（A・アイスタ）
第15節 06/18(日)18:00✕FC東京 0-1 横浜FM（H・味スタ）
第16節 06/25(日)18:00✕FC東京 0-2 磐 田（A・ヤマハ）
第17節 07/02(日)19:00✕FC東京 1-3 Ｃ大阪（A・金鳥スタ）
第18節 07/08(土)19:00△FC東京 2-2 鹿 島（H・味スタ）
第19節 07/30(日)19:00△FC東京 1-1 新 潟（H・味スタ）
第20節 08/05(土)19:00△FC東京 1-1 川 崎（A・等々力）
第21節 08/09(水)19:00〇FC東京 2-1 大 宮（A・NACK５）
第22節 08/13(日)19:00〇FC東京 1-0 神 戸（H・味スタ）
第23節 08/19(土)19:00✕FC東京 1-2 浦 和（A・埼 玉）
第24節 08/26(土)19:00✕FC東京 0-1 横浜FM（A・日産ス）
第25節 09/09(土)19:00✕FC東京 1-4 Ｃ大阪（H・味スタ）
第26節 09/16(土)19:00〇FC東京 1-0 仙 台（H・味スタ）
第27節 09/23(土)16:00✕FC東京 1-4 柏 （A・ 柏 ）
第28節 09/30(土)16:00△FC東京 0-0 磐 田（H・味スタ）
第29節 10/15(日)14:00△FC東京 1-1 甲 府（A・中銀スタ）
第30節 10/21(土)16:00✕FC東京 1-2 札 幌（H・味スタ）
第31節 10/29(日)17:00△FC東京 0-0 清 水（H・味スタ）
第32節 11/18(土)14:00✕FC東京 1-2 鳥 栖（A・ベアスタ）
第33節 11/26(日)13:00 FC東京 vs 広 島（A・Ｅスタ）
第34節 12/02(土)14:00 FC東京 vs Ｇ大阪（H・味スタ）
◇◇◇
