2度のリードを耐えきれず、逆転敗戦で3連勝ならず。
近2試合で負け、引き分けと勝利がないホーム・浦和と今季初の連勝を飾ったFC東京との一戦は、打ち合いの末にホーム・浦和が逆転し、3試合ぶりに勝利。FC東京は2度リードしながらも、そのアドヴァンテージを守り切れず、勝ち点3を失うこととなった。
残念ながら、両者にとって納得しがたいジャッジが散発したことで、物議を醸すことに。まずは、7分にFC東京の遠藤がペナルティエリア左から侵入した際に、浦和・安居からファウルを受けてPKの判定となったシーン。遠藤が緩急をつけて走り込んだ際に安居の足に引っ掛かり、放送では多少ファウルを“貰い”にいった感じを足元にフォーカスしていたが、安居が手で後ろから遠藤を確実に押しており、主審の位置からはその手の使い方を重視したか。それを考えれば、PK判定でもおかしくはなく、どちらともとれる状況ではあった。
次に、後半の80分、浦和・原口の左CKからの流れから、そのこぼれ球を収めた金子が右サイドからクロスし、最後は松本が押し込んだ場面。ここでは2点のVARチェックが発生。まずは、金子のクロスをダニーロ・ボザがヘディングシュートで狙ったため、ダニーロ・ボザが触れていれば松本は完全にオフサイドの位置だった。ネットを揺らした瞬間、ダニーロ・ボザが膝スライディングのセレブレーションを見せており、(選手視点からすれば)自身が触れていなければそこまで歓喜の感情を爆発させないだろうということを考えると、おそらく何かしら触れていた可能性は高い。だが、最も近いカメラの映像ではその瞬間はポストが邪魔して明確に判断できないものでもあったから、確実に触れていたとも言い難い。
もう一つは、松本がハンドではないかという点。クロスボールに対して、ジャンプしたダニーロ・ボザが影となっていた松本は、意図的にシュートを打ちにいった訳ではなく、腕にボールが当たって、ゴールとなった。腕には当たっているのは事実だが、身体から腕が離れているものの必要以上に大きく手を広げたとまでは見えず、明らかなハンドと即時に断定するのは難しいか。直接腕に触れてゴールとなった場合はハンドとなるが、こちらもVARをもってしても、どちらともとれる状況に見えたのかもしれないとも感じた。
また、前半アディショナルタイムに、ペナルティエリア内で浦和・荻原が佐藤恵允に倒されたと思われる場面。ここではボックス内に侵入しようとした荻原が切り返した時に、佐藤恵允が勢い余って身体に当たってしまい、荻原が倒れる形となった。映像を見る限りでは、佐藤恵允は強く当たってはおらず、上体はすり抜けている感じ。ただ、ボールには触れず、荻原の太ももあたりに接触している。荻原も切り返した際に佐藤恵允がプレスに来ることは分かっていただろうから、こちらも接触前に倒れかけて多少“貰い”にいった感じもある。PKでもノーファールにもとれる判定ではあったが、遠藤の時との差異は、手を使っているかが大きかったのではないか。
浦和にしてみれば、前半アディショナルタイムでPKが与えられ、逆転できる可能性もあったといえるし、FC東京にしてみれば、松本の同点弾の際、1つのプレーに2回のVARが介入するという事態をスッキリと消化できず、そこから試合の潮目がはっきりと変わったことを踏まえても、不完全燃焼と悔しさが残るものになった。
しかしながら、FC東京としては、失点したシーンがクロス対応の不味さから生まれたもので、ここは当初からの改善・修正ポイントの肝となる部分だった。浦和の攻撃陣を考えると、高さではそれほど劣ることはないはずだが、易々とボックス内で先にボールに触れられているのが問題。マークを徹底し切れていないのか、ポジショニングの悪さなのか、素早くセーフティに蹴り出せない落ち着きのなさなのか。いずれにせよ、ゴール前での守備の共通認識が完全に合致していないことが、失点を許しやすい結果となっている。守備においては、1対1で個で負けない、というだけでは、なかなか失点を防ぐことはできない。(この試合ではラッキーな部分もあったが)得点を獲れるようになっていることはポジティヴな要素だが、得点を奪っても早い時間帯に失点を重ねてしまっては、試合を自ら難しくすることにほかならない。
得点後という意味では、リードした後に、しばらくボールを保持する時間帯を作りたい意図があったのかもしれないが、試合のテンポをスローダウンさせるまでは良いとしても、後方でボールを回してしまうことで、ラインが下がり、結局浦和の攻撃を受けてしまう構図に移ってしまっては、自らの推進力を削ぐ形になってしまう。ボールを繋ぐにしても中盤より前で、相手陣内でボールを保持することになれば、テンポをスローダウンさせても、優位に試合を運べたはずだ。得点直後から流れを引き寄せている状況で、追加点を挙げられたら、戦い方にも余裕が生まれただろう。
そして、やはり気になるのが選手交代。マルセロ・ヒアンや橋本は負傷による交代ゆえ、致し方ないが、終盤に最終ラインを代えてしまうのは、ここまで功を奏していないことが多い。この試合に後から投入された長友や森重に直接的な原因がある訳ではないが、最終ラインのバランスを崩してしまうリスクも考えていかないと、勝ち点を逃してしまう結果に繋がる可能性も低くはない。奇しくも橋本やエンリケ・トレヴィザンが交代した後に攻勢の主導権を渡してしまう場面も散見。その守備に強さと固さを植え付けなければ、いたずらに勝ち点を失ってしまいかねない。
まだ予断を許さない状況は続くが、大切なのは悪い流れを断ち切り、連敗に陥らないこと。いくつか縦パスからワイドへ送ってゴール前でチャンスを作るなど、良いトライも見せているから、そういった積極性を削ぐことなく、次の試合に挑んでもらいたい。蒸し暑さが続く厳しい季節がちらほら顔を出しているが、5、6月に勝ち点を多く上げることが低迷からのジャンプアップに繋がる。次節ホーム国立での広島戦に勝利し、不調から浮上するきっかけを生み出してもらいたい。
◇◇◇
明治安田J1リーグ 第17節
2025年5月17日(土)16:03KO
さいたまスタジアム2002
入場者数: 36,002人
天候:曇のち雨 / 気温:21.9℃ / 湿度:90%
主審:山本雄大
副審:堀越雅弘、中澤 涼
第4の審判員:清水勇人
VAR:榎本一慶
AVAR:松澤慶和
浦 和 3(1-1 / 2-1)2 FC東京
【得点】
(浦):石原広教(32分)、松本泰志(80分)、松本泰志(90+3分)
(東):マルセロ・ヒアン(9分、PK)、遠藤渓太(68分)
〈試合経過〉
09分 得点 東京 マルセロ・ヒアン
32分 得点 浦和 石原広教
45+3分 警告 東京 マルセロ・ヒアン
48分 交代 東京 橋本拳人 → 小泉 慶
62分 交代 東京 マルセロ・ヒアン → 安斎颯馬
67分 交代 浦和 大久保智明 → 金子拓郎 / サミュエル・グスタフソン → 長倉幹樹
68分 得点 東京 遠藤渓太
73分 交代 浦和 渡邊凌磨 → 松本泰志 / マテウス・サヴィオ → 関根貴大
78分 交代 浦和 荻原拓也 → 原口元気
78分 警告 東京 エンリケ・トレヴィザン
80分 得点 浦和 松本泰志
87分 交代 東京 遠藤渓太 → 長友佑都 / エンリケ・トレヴィザン → 森重真人 / 佐藤恵允 → 仲川輝人
90+3分 得点 浦和 松本泰志
90+11分 警告 東京 長友佑都
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【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 32 土肥幹太
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
DF 47 木村誠二
DF 99 白井康介
MF 08 高 宇洋
MF 18 橋本拳人
MF 22 遠藤渓太
MF 33 俵積田晃太
FW 16 佐藤恵允
FW 19 マルセロ・ヒアン
〈控えメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 03 森重真人
DF 30 岡 哲平
DF 05 長友佑都
DF 07 安斎颯馬
MF 10 東 慶悟
MF 37 小泉 慶
FW 28 野澤零温
FW 39 仲川輝人
〈監督〉
松橋力蔵
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【FC東京 2025シーズン 試合日程】
◇2025明治安田J1リーグ
第01節 02月15日(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FC(A・ニッパツ)
第02節 02月22日(土)15:00✕FC東京 0-1 町 田(H・味スタ)
第03節 02月26日(水)19:00〇FC東京 3-1 名古屋(H・味スタ)
第04節 03月01日(土)14:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 03月08日(土)16:00△FC東京 0-0 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月15日(土)14:00✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第07節 03月29日(土)17:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第08節 04月02日(水)19:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ)
第09節 04月06日(日)13:00✕FC東京 0-1 岡 山(A・JFEス)
第10節 04月11日(金)19:00△FC東京 1-1 柏 (H・国 立)
第11節 04月20日(日)15:00△FC東京 1-1 C大阪(A・ヨドコウ)
第12節 04月25日(金)19:30〇FC東京 3-0 G大阪(H・国 立)
第13節 04月29日(火)13:05✕FC東京 0-2 清 水(H・味スタ)
第14節 05月03日(土)14:00〇FC東京 3-2 新 潟(A・デンカS)
第16節 05月10日(土)15:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第17節 05月17日(土)16:00✕FC東京 2-3 浦 和(A・埼 玉)
第18節 05月25日(日)15:00 FC東京 ✕ 広 島(H・国 立)
第19節 05月31日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都(A・サンガS)
第20節 06月14日(土)19:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ)
第21節 06月22日(日)18:30 FC東京 ✕ G大阪(A・パナスタ)
第15節 06月25日(水)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)※1
第22節 06月28日(土)19:00 FC東京 ✕ 横浜FC(H・味スタ)
第23節 07月05日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 (A・三協F柏)
第24節 07月19日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(H・味スタ)
第25節 08月10日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島(H・味スタ)
第26節 08月16日(土)19:00 FC東京 ✕ 湘 南(A・レモンS)
第27節 08月24日(日)19:00 FC東京 ✕ 京 都(H・味スタ)
第28節 08月31日(日)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(A・豊田ス)
第29節 09月13日(土)・14日(日)・15日(月)00:00 FC東京 ✕ 東京V(H・味スタ)
第30節 09月20日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎(A・U等々力)
第31節 09月23日(火)00:00 FC東京 ✕ 福 岡(H・味スタ)
第32節 09月27日(土)・28日(日)00:00 FC東京 ✕ 横浜FM(H・味スタ)
第33節 10月04日(土)・05日(日)00:00 FC東京 ✕ 清 水(A・アイスタ)
第34節 10月18日(土)・19日(日)00:00 FC東京 ✕ 広 島(A・Eピース)
第35節 10月25日(土)・26日(日)00:00 FC東京 ✕ 岡 山(H・味スタ)
第36節 11月09日(日)00:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(日)00:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第38節 12月06日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟(H・味スタ)
※1 横浜FMが「AFCチャンピオンズリーグエリート 2024/25」準々決勝以降進出の際は6月25日(水)19:30に、敗退時は5月6日(火)14:00に開催
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