アサリ料理は楽しい。
下ごしらえから、食べ終わるまで、それぞれのシーンにそれぞれの楽しみ方がある。作って終わり、食べて終わりじゃ決してない。
まずは、砂抜きから。アサリの砂抜き自体は、数時間で終わるので、夜食べるなら、午前中にアサリを買ってくれば間に合うけど、僕としては、ぜひ、前日から砂抜きに取り組むことをお勧めする。
買ってきたアサリをボールに入れて、アサリが隠れるか隠れないくらいの水を注ぎ、塩を入れて、片付けの終わった台所にでも置いておこう。
アサリは最初、全員が身を固くして寄り沿っている。しばらくすると、何匹(?)が恐る恐る水管を延ばして様子をうかがったりするけど、人気を感じると、すぐに引っ込めてしまう。
そう、奴らはまだ生きている。最近では、食材を生きたまま購入して持ち変えることは少なくなった。アサリ、ハマグリの二枚貝系以外では、皆無と言っていいだろう。
アサリの砂抜きは、料理の行程から見れば下ごしらえの一部だが、実際にやっていることは「飼育」以外の何物でもない。
アサリが水管を伸ばしてくれると嬉しい。ピュッって塩を吐いてくれるともっと嬉しい。心を開いてくれたんだな、と思う。
「ゆっくりしていきなさい」なんて、子供の友達を家に招いたような気分になる。
ところが、一夜明けて、ボールの中を覗き込むと、昨夜までの貞淑さはどこへやら、アサリ達は、水管と言わず、斧足と言わず、外套膜なんかも、こう、だらーっと出しちゃって、あられもない姿を晒している。
修学旅行で明け方、女子の部屋の扉を突然明けたら、きっとこんな感じなんだろうな。ていうか、床が水浸しじゃないか!
いいさ、楽しい飼育観察の時間はここまでだ。ここからは、苛烈なお仕置きが始まる。
アサリ料理にもいろいろなパターンがあるが、ここはひとつ、イタリアンで行きたい。イタリアンでアサリと言えばボンゴレ。それも、今日はトマトソースをふんだんに使った「ボンゴレ・ロッソ」に挑戦したい。
まず、アサリを洗って、フライパンに並べ、コンロに火を付ける。
この時点では、彼女達(なにか?)に目立った変化はない。フライパンが温まったら、白ワインを注いでみよう。
ジャーッ、ここですかさずフライパンにふたをして、20秒ほど蒸し焼きにする。
次に、ふたをとり、口の開いたアサリから順次ボールに取り出していく。
新鮮なアサリは、あっと言う間に口を開く。しかし中には強情なのもいて、半開きまではいくものの、そこから先がなかなか開かない。
誘ったら簡単に付いてきたくせに、ここにきて「あたし、そんな女じゃないからね!」なんて口走ったりする。
何を今さら、と思いながら、無言で火力を上げると、やがて観念したように、しぶしぶ足じゃない、殻を開く。ここまでの作業は何回やっても興奮してしまう。
殻が開いたアサリは、急いで取り出さないと、身が硬くなってしまう。殻が開いたアサリは、死んでるアサリであり、さっきの蒸し焼きが大虐殺だとすると、この取り出し作業は、遺体の回収にあたる。
広いフライパンに死屍累々。いったい誰がこんなひどいことを、と思うが、自分がやったんだから、何も言えない。
さて、すっかり遺体を回収したフライパンに、トマトソースを流し込む。
最初に言っておくべきだったが、トマトソースは前もって作っておくか、市販のものを用意しておこう。
ソースが温まったところで、アサリを戻し、ゆで上がったパスタを投入する。あとは、軽く混ぜて、皿に盛りつけて完成だ。
最後に、大葉を刻み振りかける。スィートバジルでもいいんだけど、僕的には、大葉のほうが好み。大葉は、葉の裏側に、香りのカプセルが付いているので、壊さぬよう、ハサミでざく切りにするのがいいらしい。「ためしてガッテン」で、そう言っていた。
ほら、皿の上には、トマトソースにまみれ、そしてパスタにまみれたアサリ達がいる。真っ赤なソースに白いパスタ。様々な意匠のアサリの殻。そして濡れぼそる身肉達。うーん、エロチック。料理界の杉本彩とはよく言ったものだ(誰が)。
下ごしらえから、食べ終わるまで、それぞれのシーンにそれぞれの楽しみ方がある。作って終わり、食べて終わりじゃ決してない。
まずは、砂抜きから。アサリの砂抜き自体は、数時間で終わるので、夜食べるなら、午前中にアサリを買ってくれば間に合うけど、僕としては、ぜひ、前日から砂抜きに取り組むことをお勧めする。
買ってきたアサリをボールに入れて、アサリが隠れるか隠れないくらいの水を注ぎ、塩を入れて、片付けの終わった台所にでも置いておこう。
アサリは最初、全員が身を固くして寄り沿っている。しばらくすると、何匹(?)が恐る恐る水管を延ばして様子をうかがったりするけど、人気を感じると、すぐに引っ込めてしまう。
そう、奴らはまだ生きている。最近では、食材を生きたまま購入して持ち変えることは少なくなった。アサリ、ハマグリの二枚貝系以外では、皆無と言っていいだろう。
アサリの砂抜きは、料理の行程から見れば下ごしらえの一部だが、実際にやっていることは「飼育」以外の何物でもない。
アサリが水管を伸ばしてくれると嬉しい。ピュッって塩を吐いてくれるともっと嬉しい。心を開いてくれたんだな、と思う。
「ゆっくりしていきなさい」なんて、子供の友達を家に招いたような気分になる。
ところが、一夜明けて、ボールの中を覗き込むと、昨夜までの貞淑さはどこへやら、アサリ達は、水管と言わず、斧足と言わず、外套膜なんかも、こう、だらーっと出しちゃって、あられもない姿を晒している。
修学旅行で明け方、女子の部屋の扉を突然明けたら、きっとこんな感じなんだろうな。ていうか、床が水浸しじゃないか!
いいさ、楽しい飼育観察の時間はここまでだ。ここからは、苛烈なお仕置きが始まる。
アサリ料理にもいろいろなパターンがあるが、ここはひとつ、イタリアンで行きたい。イタリアンでアサリと言えばボンゴレ。それも、今日はトマトソースをふんだんに使った「ボンゴレ・ロッソ」に挑戦したい。
まず、アサリを洗って、フライパンに並べ、コンロに火を付ける。
この時点では、彼女達(なにか?)に目立った変化はない。フライパンが温まったら、白ワインを注いでみよう。
ジャーッ、ここですかさずフライパンにふたをして、20秒ほど蒸し焼きにする。
次に、ふたをとり、口の開いたアサリから順次ボールに取り出していく。
新鮮なアサリは、あっと言う間に口を開く。しかし中には強情なのもいて、半開きまではいくものの、そこから先がなかなか開かない。
誘ったら簡単に付いてきたくせに、ここにきて「あたし、そんな女じゃないからね!」なんて口走ったりする。
何を今さら、と思いながら、無言で火力を上げると、やがて観念したように、しぶしぶ足じゃない、殻を開く。ここまでの作業は何回やっても興奮してしまう。
殻が開いたアサリは、急いで取り出さないと、身が硬くなってしまう。殻が開いたアサリは、死んでるアサリであり、さっきの蒸し焼きが大虐殺だとすると、この取り出し作業は、遺体の回収にあたる。
広いフライパンに死屍累々。いったい誰がこんなひどいことを、と思うが、自分がやったんだから、何も言えない。
さて、すっかり遺体を回収したフライパンに、トマトソースを流し込む。
最初に言っておくべきだったが、トマトソースは前もって作っておくか、市販のものを用意しておこう。
ソースが温まったところで、アサリを戻し、ゆで上がったパスタを投入する。あとは、軽く混ぜて、皿に盛りつけて完成だ。
最後に、大葉を刻み振りかける。スィートバジルでもいいんだけど、僕的には、大葉のほうが好み。大葉は、葉の裏側に、香りのカプセルが付いているので、壊さぬよう、ハサミでざく切りにするのがいいらしい。「ためしてガッテン」で、そう言っていた。
ほら、皿の上には、トマトソースにまみれ、そしてパスタにまみれたアサリ達がいる。真っ赤なソースに白いパスタ。様々な意匠のアサリの殻。そして濡れぼそる身肉達。うーん、エロチック。料理界の杉本彩とはよく言ったものだ(誰が)。