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無料で使える仮想化技術【第一回】

2011-08-08 15:05:05 | 仮想化技術

・ はじめに


近年、ITシステムの高度化、複雑化にともない、社内サーバ数が増加しています。このため、サーバの維持や管理コストの割合も増加し続けている現状です。しかし、ハードウェアは年々高性能になり、サーバの処理能力は飛躍的に向上していることから、リソースが効率的に使用できず、余剰リソースとなり、サーバの稼働率はピーク時以外およそ10%程度であると言われています。このような現状からリソースの有効活用やコスト削減、運用負荷の軽減に対する有効な手段として、仮想化技術のニーズがここ数年で高まっています。


とは言っても、仮想化技術とは何を仮想化するの?という疑問が出てくると思います。そこで、『仮想化技術とは何だろう?』という観点から調べました。


第一回は『仮想化技術の概要について』、第二回は『無料で使えるサーバの仮想化ソフトウェアについて』の2回に分けて掲載します。仮想化技術についてこれから学ぼうとしている方や、興味のある方に読んで頂けたら幸いです。


今回の掲載内容は以下の構成となります。



  1.  仮想化技術とは

  2.  歴史

  3.  仮想化の種類について

  4.  仮想化技術に伴うメリット・デメリット


 


 1. 仮想化技術とは


従来のシステムでは、APサーバ、DBサーバ、開発環境、バックアップなどの環境を整えるには膨大なコストと時間が掛かってしまいます。これを解決するために仮想化技術が誕生しました。


仮想化技術とは、コンピュータのCPUやメモリ、ディスク、通信インターフェースなどを物理的構成によらず柔軟に分割する技術です。例えば、通常ハードウェアとOSは1対1の関係ですが、仮想化技術を使うと、1台のコンピュータをあたかも複数のコンピュータであるかのように扱うことができるようになり、それぞれに別のOSやアプリケーションを動作させることが可能になります。


 


複数台のサーバを統合



 


 2. 歴史

仮想化というのは、大規模なメインフレームハードウェアのパーティショニングを行い、ハードウェアの使用率を向上するために、1960年代に開発されたテクノロジーです。最初に仮想化機能を搭載したメインフレームはSystem/360という1964年にIBMが開発したOSに搭載されました。1967年にはIBMの汎用機「Sysyem/360 model 67」で稼働し、仮想機能をもったOS「CP-67/CMS」が商用化されています。近年では、ハードウェアの高性能化・低価格化や、仮想化技術の発達によって、一般のコンピュータやサーバでも簡単・手軽に導入できるようになりました。


 


 3. 仮想化の種類について


仮想化技術といっても、何を仮想化するのかによって様々な種類があります。仮想化技術は主に以下の4つの種類に分類されます。


(1) サーバの仮想化




サーバの仮想化とは、サーバ向けの仮想マシンソフトウェアを利用し、1台のサーバを独立した複数台のサーバとして動作させる技術です。プロセッサやメモリ、ディスクをまとめて仮想的に複数の領域に分割し、それがあたかも1台のコンピュータであるかのように振る舞い、異なるOSやアプリケーションを同時に実行できます。サーバの仮想化によってコンピュータを管理する人員や設置場所、消費電力の削減につながります。


 


(2) デスクトップの仮想化




デスクトップの仮想化とは、OSを含めたデスクトップ環境をサーバ上の仮想マシンで稼働させる技術です。ユーザはさまざまなデバイスを使用して、LANやインターネットなどのネットワーク経由で安全に仮想クライアントOSを利用できます。ユーザが入力するキーボードやマウスの情報に応じて、サーバ上で実行されている仮想クライアントOSの画面情報が転送され、ローカル環境と同じようなデスクトップの操作ができます。外部メディアの利用規制や不正ソフトウェアのインストール防止などのセキュリティ強化やアプリケーションの集中管理やクライアント端末の一元管理、運用コストの削減といったメリットがあります。


 


(3) ストレージの仮想化




ストレージの仮想化とは、複数のストレージ装置を統合して仮想的なひとつのストレージプールとして扱い、柔軟な容量変更を可能としたり、物理ストレージに障害が発生してもシステムの稼働を継続させたりといった機能を実現する技術です。おもにハードディスクを効率良く利用するという目的で用いられています。具体的にはディスクスペースの共有や、複数のストレージを必要に応じて分配するなどが挙げられます。


 


(4) ネットワークの仮想化




ネットワークの仮想化とは、ルータやハブ・スイッチなどのネットワーク機器を仮想環境上で構築し、機器台数の集約と管理の効率化を目的とした技術です。1台の装置を複数に分散させたり、複数の装置を1台に集約させたりすることによって、ネットワークの信頼性を向上させ、一元的な運用を可能とすると共に、セキュリティの確保も実現します。ネットワークの仮想化では「ネットワーク接続の仮想化」と「ネットワーク機器の仮想化」という2つの機能が中心となります。


 


 4. 仮想化技術にともなうメリット・デメリットについて


仮想化技術のメリット・デメリットを考慮するための物差しは大きく2つに分類されます。


1つは「コスト」、もう1つは「機能」です。具体的な分類の説明については以下のとおりです。


 


「コスト」は2つの分類に分けることができます。


(1-1) イニシャルコスト(初期費用)




コンピュータやシステムを導入・構築する際に必要となる経費のことを指します。購入費用などもこれに当たります。


 


(1-2) ランニングコスト(運用費)




機器やシステムの保守・管理に必要な費用のことを指します。人件費や、機器の電気代、保守サービスの料金などが該当します。


 


   「機能」は3つの分類に分けることができます。


(2-1) スケーラビリティ(拡張性)




システムの利用者や負荷の増大に応じて、柔軟に性能や機能を向上させられることを指します。リソース不足に陥ったときにどの程度拡張できるか、また、拡張の際のコストや手間などを検討します。


 


(2-2) アベイラビリティ(耐障害性・可用性)




システムを正常な状態で継続的に使い続けることができる耐久性のことを指します。システムの障害・停止・破損が発生しにくく、それらの不具合が生じた際に速やかに復旧できるかどうかを検討します。


 


(2-3) パフォーマンス(性能)




システムの処理速度や実行速度を指します。要求される性能を満たすことができるか。また、要求性能を満たす場合にはどれだけのコストをかけなければいけないのかを検討します。


 


これらの観点から、仮想化技術におけるメリット・デメリットを以下にあげます。


 


  4.1 メリット


(1) 運用コスト削減




複数のサービスでシステムリソースを共有できるようになり、利用効率が向上します。またそれによりシステムの複雑性が解消し、運用コストの削減も可能となります。


 


(2) 電力・設置場所などのランニングコスト削減




物理サーバの運用台数を大きく減らすことができ、省電力・設置スペース・管理リソースといった様々な側面での大きなコスト削減を実現できます。


 


(3) リソースの有効活用




従来ではアイドル時間に大量に余りがちだったCPU処理能力やメモリといったサーバーリソースを複数のOSで分配し有効に活用できます。


 


(4) リスク軽減




仮想化によって、機器の障害や過大なピーク需要に対応できるようにリソースを迅速に配分できるようになるため、システム全体で見ると常に安定した稼動状態を維持できます。


 


(5) サービス品質の向上




仮想化技術によって複数のサービスがシステムを共有した場には、ピークに達したサービスに対して優先的にシステムのリソースを割り振るなど柔軟な運用が可能となり、過剰な設備を導入することなくユーザ・サービスを高いレベルで維持することが可能となります。


 


(6) 耐障害性




仮想マシンはそれぞれが完全に隔離されており、いずれかがクラッシュしても他の仮想マシンはそのまま稼働するため、仮想マシン同士のサーバークラスタで可用性向上・耐障害性の向上が可能となります。


 


 4.2 デメリット


(1) 新しい技術を導入することへの技術的な管理負担増




仮想化は複数のハードウェア資源を仮想的に1台のものに見せているため、従来1つの物理的なサーバを1つのアプリケーションで利用していた際とは異なり、仮想化によりシステム統合されると、他のアプリケーションにも影響がでる可能性があります。また、バックアップ運用が行いにくくなってしまう可能性もあります。仮想化で複数のアプリケーションが統合されていたりすると、バックアップのための静止点の確保が難しくなってしまいます。


 


(2) 性能劣化




システムに仮想化という新たな層が加わることで、仮想化の処理が必ず途中に入ることになり、性能が劣化する可能性があります。


 


(3) 標準化(ガバナンス)




仮想化技術の利点を最大限に引き出すには、環境の標準化が必要です。複数のサーバ上で動作していたOS/アプリケーションを、仮想化技術を利用して1つのサーバに単に集約しただけでは、ハードウェアの管理工数が減るだけとなってしまいます。管理効率までを向上させるためには、OS/パッチ・レベル/アプリケーションを標準化しておくことが必要です。これにより要求に応じて迅速なコンピュータリソースの割り当てや、メンテナンス性が向上し、開発効率につながります。


 


どうでしょう、仮想化技術について少しはイメージが湧きましたか?今回は仮想化技術の概要について記載しました。


次回は『サーバの仮想化』をターゲットにして、無料で使えるサーバ仮想化のソフトウェアをご紹介します。


 ・ サーバの仮想化について


 ・ サーバ仮想化ソフトウェアについて


 ・ 製品比較




 


株式会社ジェイエスピー


システム部


吉田 利充



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