6月に娘が高校卒業と同時に、イスラエルでは成人とみなされる18歳を迎え、子育てに大きな区切りがついたので、一時帰国の折に単身で一泊の小旅行に出かけた。
行ったことのない土地、知っている人のいない土地という条件の下、真夏でも比較的涼しい東北地方を選んだ。
私は九州の生まれ育ちというのもあって、関東より北のほとんどが未踏の地である。
自分を思う存分労いたかったので、お一人様でも受入れてもらえる老舗の温泉宿に決めた。
行く先は宮城県にある鎌先温泉。
新幹線で白石蔵王駅まで。駅からは送迎バスで宿に向かう。
バスで町を抜けると心潤す美しい田んぼが広がる。
「一級旅館」の文字に期待が高まる。
和装がしっとりと決まっている女将さんに玄関で出迎えられる場面で、それが「いつか大人になったら」という幼少時の漠然とした憧憬だったなと思い出す。
まさか一人で来ることになるとは思っていなかったけれど。
私がこの宿を選んだ大きな理由は、この料亭。大正から昭和にかけて建てられた木造建物で、国登録有形文化財に指定されるほど貴重なものである。
建物の中は大小の個室に仕切られていて、朝夕の食事をそこで摂ることになっている。
木造でこれだけのスケールともなると、建造に携わった職人たちのロマンに想いを馳せずにはいられなくなった。
夕食までまだ時間があったので、真っ先に温泉に浸かり、そのあと宿の周辺を散策。
裏手の山の方へ少し歩くと可憐な花々が咲いていた。
さらに奥へ歩みを進めると、段々とただならぬ気配がしてくる。
トトロか何かが出てきそう。
御神木。そんなに大きいわけでもないのに、すぐにそれだとわかる存在感。
澄んだ水と空気のおかげで鯉かと見紛うほど大きく育った金魚。
日が傾く頃、料亭のあかりが灯りはじめる。
そう、これが見たかったんだ!
さあ、お楽しみの夕食の時間。
この長い廊下の一番先にある小さな角部屋へ案内された。
米どころならではの地酒をお伴に、美味しい料理に箸が進む。写真を撮るより先に料理が口に入ってること度々。まあ、それでよいのだけど。
美しい盛り付けとこだわりの器。
口の中で溶けた仙台牛。
おしながき。
そして、こちらは朝食。
「朝からいいのか、こんな贅沢?!」と言いたくなるような素敵なセッティング。
箸置きが可愛い。
普段は朝食を食べない私が、ここでは最後のデザートまでぺろっと完食。
個室料亭の良いところは、グループ客の間でひとり浮き立つこともなく、且つ近隣の個室から食事を楽しむ人々の気配を感じながら、自分のペースで食事を楽しめる点だろうか。一人のスタッフが部屋から料亭の個室への案内と料理の配膳などを担当してくれ、食事の合間にちょっとした会話も交わせるので、ひとり飯でも寂しさが程よく紛れた。ひとりぼっちではなく、ひとりきりを味わう時間。「これが大人か〜」と40代も後半になっていながらしみじみ思った。
朝だと夜とはまた違った雰囲気。
古いけど隅々まで手入れが行き届いている。
もうひとつのメインである温泉について言うと、これまた更に長い歴史があって、はじまりは600年も遡るのだとか。
この宿には薬湯と美肌湯とがあり、一泊二日の間に合わせて5回入浴。薬湯の効能はすぐには思い当たらなかったけれど、美肌湯の方は入ったそばから実感。自分でも驚くほどスベスベのなめらかな肌になっていた。イスラエルのカルキの多い硬水にさらされた肌だから余計に効能を感じたのかもしれない。
温泉効果は眠りにも作用して、久しぶりに朝まで一度も目覚めることなく熟睡。よほど芯までリラックスできたのだろう。
歴代続く老舗宿の細やかで丁寧な一級のおもてなしはまさに日本の財産。心に残る優雅なひとときを過ごして、もう少し頑張ってみようという気持ちが持てた。
またいつか訪れたいな。
Nozomi
行ったことのない土地、知っている人のいない土地という条件の下、真夏でも比較的涼しい東北地方を選んだ。
私は九州の生まれ育ちというのもあって、関東より北のほとんどが未踏の地である。
自分を思う存分労いたかったので、お一人様でも受入れてもらえる老舗の温泉宿に決めた。
行く先は宮城県にある鎌先温泉。
新幹線で白石蔵王駅まで。駅からは送迎バスで宿に向かう。
バスで町を抜けると心潤す美しい田んぼが広がる。
「一級旅館」の文字に期待が高まる。
和装がしっとりと決まっている女将さんに玄関で出迎えられる場面で、それが「いつか大人になったら」という幼少時の漠然とした憧憬だったなと思い出す。
まさか一人で来ることになるとは思っていなかったけれど。
私がこの宿を選んだ大きな理由は、この料亭。大正から昭和にかけて建てられた木造建物で、国登録有形文化財に指定されるほど貴重なものである。
建物の中は大小の個室に仕切られていて、朝夕の食事をそこで摂ることになっている。
木造でこれだけのスケールともなると、建造に携わった職人たちのロマンに想いを馳せずにはいられなくなった。
夕食までまだ時間があったので、真っ先に温泉に浸かり、そのあと宿の周辺を散策。
裏手の山の方へ少し歩くと可憐な花々が咲いていた。
さらに奥へ歩みを進めると、段々とただならぬ気配がしてくる。
トトロか何かが出てきそう。
御神木。そんなに大きいわけでもないのに、すぐにそれだとわかる存在感。
澄んだ水と空気のおかげで鯉かと見紛うほど大きく育った金魚。
日が傾く頃、料亭のあかりが灯りはじめる。
そう、これが見たかったんだ!
さあ、お楽しみの夕食の時間。
この長い廊下の一番先にある小さな角部屋へ案内された。
米どころならではの地酒をお伴に、美味しい料理に箸が進む。写真を撮るより先に料理が口に入ってること度々。まあ、それでよいのだけど。
美しい盛り付けとこだわりの器。
口の中で溶けた仙台牛。
おしながき。
そして、こちらは朝食。
「朝からいいのか、こんな贅沢?!」と言いたくなるような素敵なセッティング。
箸置きが可愛い。
普段は朝食を食べない私が、ここでは最後のデザートまでぺろっと完食。
個室料亭の良いところは、グループ客の間でひとり浮き立つこともなく、且つ近隣の個室から食事を楽しむ人々の気配を感じながら、自分のペースで食事を楽しめる点だろうか。一人のスタッフが部屋から料亭の個室への案内と料理の配膳などを担当してくれ、食事の合間にちょっとした会話も交わせるので、ひとり飯でも寂しさが程よく紛れた。ひとりぼっちではなく、ひとりきりを味わう時間。「これが大人か〜」と40代も後半になっていながらしみじみ思った。
朝だと夜とはまた違った雰囲気。
古いけど隅々まで手入れが行き届いている。
もうひとつのメインである温泉について言うと、これまた更に長い歴史があって、はじまりは600年も遡るのだとか。
この宿には薬湯と美肌湯とがあり、一泊二日の間に合わせて5回入浴。薬湯の効能はすぐには思い当たらなかったけれど、美肌湯の方は入ったそばから実感。自分でも驚くほどスベスベのなめらかな肌になっていた。イスラエルのカルキの多い硬水にさらされた肌だから余計に効能を感じたのかもしれない。
温泉効果は眠りにも作用して、久しぶりに朝まで一度も目覚めることなく熟睡。よほど芯までリラックスできたのだろう。
歴代続く老舗宿の細やかで丁寧な一級のおもてなしはまさに日本の財産。心に残る優雅なひとときを過ごして、もう少し頑張ってみようという気持ちが持てた。
またいつか訪れたいな。
Nozomi
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