Chateau Grand Vin日記

◯◯◯プロデューサーJの日常のつれづれ

慈恩弘国   ランバラル大尉(中野新一)と フラウボウ5号      (前編)

2010-10-29 23:08:57 | Weblog
  茨城県での仕事を終え、東京都内に戻って来たのは既に正午を過ぎ、もうすぐ1:00になろうかという頃であった。

 改札口を出て駅前の大きな交差点にある横断歩道を渡っていた時、前方から見覚えのある顔の女性が歩いて来た。


「フラウボウ・・・」



 フラウボウは声を掛けようとする私に気付くことなく5メートル先ですれ違い、駅地下に延びる階段を降りて行った。








  京都市東寺に「とてもいい感性を持った人物がいる」との情報をいただき初めて訪問したのは今から2年半前、2008年4月半ばのことである。
 話によると、その方は優秀なグラフィック・デザイナーであり、本業の傍ら金、土、日曜日等、週末の夜だけ「お好み焼き店」を営まれているとのことであった。

  

近鉄・東寺駅から西に向って徒歩20分、国道1号線沿いに派手な電飾を灯した住宅があり、その一階部分が店舗になっている。

  店の名前は「慈恩弘国(じおんこうこく)」。弘法大師さまのお膝元・東寺にある慈愛と恩恵に満ち満ちた国という意味らしいが、この言葉の響きに何か聞き覚えがある。


 店内はカウンターを中心に構成され、グループ用の座敷や離れも用意されている。そして、そのエリア一つ一つに「コロニー」「ソロモン」「ア・バオア・クー」「サイド7」といった名前が付けられている。

 名物メニューは「座苦(ざく)焼き」。これは座禅の苦行を表現したお好み焼き。
  そして「怒無(どむ)焼き」。こちらは、怒りを無くして悟りの境地を表現したお好み焼き。いづれも何処か聞き覚えのある言葉である。

  以上からも分かるとおり、こちらの店は、あの「人気ロボット・アニメーション作品」をテーマとしたお好み焼き店である。



  店主、中野新一さんは自らを、その作品に登場する主人公(アムロ・レイ)とは敵方の軍人「ランバラル大尉」と名乗り、衣装まで同じものを誂えていた。
  そして、従業員は主人公(アムロ・レイ)の女友達「フラウボウ」と称し、こちらもピンク色の軍服を身に纏っている。フラウボウはランバラル大尉の「捕虜」という設定である。

  地元・京都や近所というよりは、日本全国から集まったと見られる客が店内を埋め尽くし、焼き上がるお好み焼きを待ちながら、店主やフラウボウから発せられる言動に耳を傾け楽しそうに笑っている。そして、その笑い声に絶え間がない。私も日本各地の飲食店で食事をさせていただくことがあるが、これ程、笑いに溢れた温かい雰囲気のお店は見たことがない。あたかも、「小さなディズニーランド」である。


  その後も数度訪問した。東京出張帰りで、比較的早めに帰って来ることが出来たときに。半年に一度ぐらいであろうか・・。私はロボット・アニメーションファンでもなければ、アニメオタクでもない。ただただ、中野新一という感性豊かな人物に会い、その話を通して学び吸収することが目的である。

  訪問する度にフラウボウの顔ぶれは変わっていた。フラウボウは元々、女子大学生がアルバイトで入っていることが多く、学業の都合や就職等により当店を去らなければならない事情があるのであろう。

  そんな中、ただ一人、三回連続でお見かけしたフラウボウがいた。明るさの中にも、どこか憂鬱をかかえている様な表情を持つ美しい女性。スタイルが良く「連邦軍のピンク色の軍服」が良く似合っていた。後から分かったことであるが、諸般の事情により大学卒業後も慈恩弘国に残り、平日は中野新一さんのグラフィック・デザイン業のアシスタントとして働き、週末はお好み焼店でフラウボウとして働かれていたそうである。
それが、フラウボウ5号だった。

  店では中野新一さんと話すことが殆んどであり、フラウボウ5号さんとは、きちんと話したことはなかった。ただ一度、彼女が焼き上げた「たこ焼き」が「外パリ、中トロ」で、余りに美味しく、そのクオリティーが大阪の人気店を上回る程のものであったので、その旨、中野さんに申し上げたところ、

フラウボウ5号さんは

「こだわりの粉屋さんのものを使っていますので」

と嬉しそうに笑われていた。







  話をもどすが、そのフラウボウ5号さんが東京の街角で私の目の前を通り過ぎ、駅地下に向う階段を降りていた。私は一瞬迷ったが何か縁の様なものを感じたので、彼女に声を掛け挨拶するべく彼女の後を追いかけた。








                                                                                                                  つづく・・











  


  

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