10/25(木)--- 第5日
ほとんど寝付けないまま、朝になってしまった。
頭痛と吐き気がする。自分がこんなに煙に敏感だなんて、今まで気付かなかった。
外に出ると、空が茶色い煙のヴェールで覆われている。その向こうに見える太陽は
空にポッカリ浮かぶオレンジ色のボールのようだ。
しかし、この辺りの空気はまだ、職場に比べればマシな方である。
私と妻はとりあえず、息子を友人宅に預けて職場に向かう。
昨日、黒い煙がモクモクと上っていた山の辺りは黒と白が混ざってしまったのか、今では茶色い煙がわだかまっている。
早朝から営業している日曜大工店で作業用のマスクを買う。昨日から今日にかけて、同様のマスクをしている人をチラホラ見かけたので、真似することにしたのだ。
職場に着く。ビルの外も中も空気が悪い。やはり、マスクを着用していた方が良さそうだ。
「恥ずかしい」などと言っている場合ではない。
それに、会社に対しても「空気が悪いよ」(気付いてないわけがないが)というアピールになる。
今日も結局、早退者が続出する。
だが、早退してばかりいたら仕事が溜まる一方である。
私はここ数日、自分のノートパソコンをずっと持ち歩いているので、インターネット経由でほとんどの仕事がこなせるようにセットアップしてもらい、昼過ぎに早退した。
妻と合流し、息子を迎えに行き、ロサンジェルス郡の義兄宅に向かう。
サンティアゴ火災が始まって間もなく閉鎖されていた有料道路が使えるようになった。炎が通過して行き、今は燃えていないからだ。
炎が道路を「飛び越えた」と報道されていたが、確かに道の両側の丘や畑はあちこち焦げているものの、道路そのものはダメージを受けなかったようである。
もちろん、燃えにくい材質を使っているのだろうが、不思議といえば不思議だ。
有料道路脇の貯水池はかなり水位が下がっている。消火に使われているのだろう。
デジタルカメラで貯水池の写真を撮ろうとした息子が「Bush(低木、茂み)が邪魔になって写真が撮れない。Bushなんて嫌い!」と文句を言った時、ちょうど、カーラジオからブッシュ(Bush)大統領の記者会見が流れ出す。
息子はすかさず、「Bushは二通りの意味で嫌い」と苦笑いする(イラク戦争の話)。
これは昨日のニュースでも言っていたことなので私は知っていたのだが、今日はブッシュ大統領がサンディエゴを視察しているのだ。
ただ、記者会見の内容そのものは昨日のシュワルツェネッガー州知事のそれと同様、関係各方面への感謝とねぎらいがほとんどで、これといった新情報はなかった。
それに、ブッシュ大統領は台本(通常はスピーチ・ライターが用意してくれる)なしで喋っているのか、しどろもどろな印象を受けた。
それはともかく、「連邦政府がサポートする」という姿勢をハッキリと示してくれたのはありがたい。
途中、有料道路脇のホテルの駐車場に5台の消防車が待機しているのが見える。水を補給しているのだろうか?
ロサンジェルス郡の義兄宅に着く。このあたりも各方向から流れてくる煙のおかげで、空が白茶色に染まっているが、煙のニオイはしない。
義兄の子どもたちはまだ学校から帰っていない。
緊急事態とはいえ、うちの息子は「自分は学校に行かなくてすむから、ちょっとトクした気分だ」と言う。
不謹慎といえばそうだが、その反面、さまざまなストレスもあるのはわかっているから、敢えて叱らないことにする。
こういう時だけに、少しでもポジティブな事を考えた方が精神衛生上、良いはずである。
明日も学校が休みになるかどうかはまだわからないが、今夜はともかく、義兄宅に泊まらせてもらえれば安心して眠れる。
もし、明日は開校するということになったら、朝早く起きて息子を登校させるなり、あるいはそれでもここにいさせるなり、決めれば良い。
夕方。義兄宅の高速インターネットを使わせてもらい、仕事をする。
息子がインターネットで遊びたがるが、「せっかく、ここに来てるんだから、イトコたちと遊びなさい」と言い聞かせる。
息子が起きてる間は一緒に遊んであげて、寝てから仕事をするという手もあるのだが、なにしろ、職場から遠い所に泊まらせてもらっているので、朝早く起きなければならない。
しばらくして休憩を取り、火事関連の情報をチェックする。
サンティアゴ火災の鎮火率は昨日、一時的に50%まで達していたが、その後、すぐ30%に戻っている。
最初100人足らずだった消防士の数はその後、急ペースで増え続け、もう1100人になっている。
その他、警察やCHP(ハイウェイ・パトロール)等の人員も数百人いる。
消防車も数百台となっており、航空機やブルドーザー等もどんどん増加している。
州北部(+アリゾナ州?)から応援が駆けつけてくれたこともあるが、他地域の火災の鎮火が進むにつれ、こちらに人員や車輌・航空機を回してくれているのだ。
最初のうち、オレンジ郡のサンティアゴ火災はサンディエゴ、マリブ、サンバナディノに比べてニュースでのプライオリティが低いという印象を受けたが、ようやくフォーカスが当たるようになってきた。
学校区のサイトをチェックすると、明日も休校だというメッセージがアップされていた。
ほぼ予測していたことだが、これで、「息子を朝早く叩き起こして学校に連れて行く必要がなくなった」と安心する。もっとも、たとえ開校するようになった場合でも、空気の悪さを考えると登校させなかっただろう。
なお、今回は留守電用メッセージを音声ファイルとしてアップしてくれている。インターネットにさえ繋げれば自宅にいなくても聞けるという親切さだ。しかも、英語版とスペイン語版から選べる。
息子の学校の各先生のサイトもチェックしてみた。
どれも「今日は宿題はお休み」ということだ。
今週末もリトルリーグの試合が予定されているが、おそらく、キャンセルされるだろう。
他の習い事はすでにキャンセルした。
明日、会社には一応、顔を出さなければならない。ほとんどの仕事をインターネット経由でこなせるようにしてもらったとはいえ、出社しないとできないこともある。特に(金)はそうなのだ。
サンティアゴ火災は東方向にジワジワ進んでおり、遂にクリーヴランド大森林に達してしまった。そこは北はリヴァーサイド郡、南はサンディエゴ地域にまで達している巨大な森林である。
サンディエゴ北部の火災までにはまだ距離があるが、合流したりしたら大変だ。
昨夜のニュースでは「防御線を張って、進行方向の樹木を伐り倒したり、『バックファイア』という技術を使って、火が燃え移りそうな区域の可燃物を先に燃やして地ならししている」という話だったが、あまり効果がなかったのだろうか?
こうやって、火事の動きを追うのはまるで、巨大な動物...怪獣が移動するのを眺めるようだ。この怪獣は行く先々の食料(樹木等)を食いつぶしては先に進んで行く。
怪獣は自衛隊や地球防衛軍(消防隊)にいくら弾(水)を浴びせられても、ほとんどビクともしない。
家族サイトの掲示板に近況報告をアップする。ここ数日は自宅にいたりいなかったりだが、日本の実家でも火事が起こっていることだけは知ってるので、こちらが電話に出ないとパニクるかもしれない。かといって、こちらから電話をかけるタイミングも難しいし、義兄宅から国際電話をかけるのもはばかられるので、こうやって、ほぼ毎日、近況報告をアップしているのだ。
こういう形なら、写真や地図をアップしたり、最新情報がわかるサイトへのリンクを貼ったりもできるし、後になってチェックするのにも便利だ。
あとは自宅で落ち着いた時にタイミングをみて電話をかければ良い。
ほとんど寝付けないまま、朝になってしまった。
頭痛と吐き気がする。自分がこんなに煙に敏感だなんて、今まで気付かなかった。
外に出ると、空が茶色い煙のヴェールで覆われている。その向こうに見える太陽は
空にポッカリ浮かぶオレンジ色のボールのようだ。
しかし、この辺りの空気はまだ、職場に比べればマシな方である。
私と妻はとりあえず、息子を友人宅に預けて職場に向かう。
昨日、黒い煙がモクモクと上っていた山の辺りは黒と白が混ざってしまったのか、今では茶色い煙がわだかまっている。
早朝から営業している日曜大工店で作業用のマスクを買う。昨日から今日にかけて、同様のマスクをしている人をチラホラ見かけたので、真似することにしたのだ。
職場に着く。ビルの外も中も空気が悪い。やはり、マスクを着用していた方が良さそうだ。
「恥ずかしい」などと言っている場合ではない。
それに、会社に対しても「空気が悪いよ」(気付いてないわけがないが)というアピールになる。
今日も結局、早退者が続出する。
だが、早退してばかりいたら仕事が溜まる一方である。
私はここ数日、自分のノートパソコンをずっと持ち歩いているので、インターネット経由でほとんどの仕事がこなせるようにセットアップしてもらい、昼過ぎに早退した。
妻と合流し、息子を迎えに行き、ロサンジェルス郡の義兄宅に向かう。
サンティアゴ火災が始まって間もなく閉鎖されていた有料道路が使えるようになった。炎が通過して行き、今は燃えていないからだ。
炎が道路を「飛び越えた」と報道されていたが、確かに道の両側の丘や畑はあちこち焦げているものの、道路そのものはダメージを受けなかったようである。
もちろん、燃えにくい材質を使っているのだろうが、不思議といえば不思議だ。
有料道路脇の貯水池はかなり水位が下がっている。消火に使われているのだろう。
デジタルカメラで貯水池の写真を撮ろうとした息子が「Bush(低木、茂み)が邪魔になって写真が撮れない。Bushなんて嫌い!」と文句を言った時、ちょうど、カーラジオからブッシュ(Bush)大統領の記者会見が流れ出す。
息子はすかさず、「Bushは二通りの意味で嫌い」と苦笑いする(イラク戦争の話)。
これは昨日のニュースでも言っていたことなので私は知っていたのだが、今日はブッシュ大統領がサンディエゴを視察しているのだ。
ただ、記者会見の内容そのものは昨日のシュワルツェネッガー州知事のそれと同様、関係各方面への感謝とねぎらいがほとんどで、これといった新情報はなかった。
それに、ブッシュ大統領は台本(通常はスピーチ・ライターが用意してくれる)なしで喋っているのか、しどろもどろな印象を受けた。
それはともかく、「連邦政府がサポートする」という姿勢をハッキリと示してくれたのはありがたい。
途中、有料道路脇のホテルの駐車場に5台の消防車が待機しているのが見える。水を補給しているのだろうか?
ロサンジェルス郡の義兄宅に着く。このあたりも各方向から流れてくる煙のおかげで、空が白茶色に染まっているが、煙のニオイはしない。
義兄の子どもたちはまだ学校から帰っていない。
緊急事態とはいえ、うちの息子は「自分は学校に行かなくてすむから、ちょっとトクした気分だ」と言う。
不謹慎といえばそうだが、その反面、さまざまなストレスもあるのはわかっているから、敢えて叱らないことにする。
こういう時だけに、少しでもポジティブな事を考えた方が精神衛生上、良いはずである。
明日も学校が休みになるかどうかはまだわからないが、今夜はともかく、義兄宅に泊まらせてもらえれば安心して眠れる。
もし、明日は開校するということになったら、朝早く起きて息子を登校させるなり、あるいはそれでもここにいさせるなり、決めれば良い。
夕方。義兄宅の高速インターネットを使わせてもらい、仕事をする。
息子がインターネットで遊びたがるが、「せっかく、ここに来てるんだから、イトコたちと遊びなさい」と言い聞かせる。
息子が起きてる間は一緒に遊んであげて、寝てから仕事をするという手もあるのだが、なにしろ、職場から遠い所に泊まらせてもらっているので、朝早く起きなければならない。
しばらくして休憩を取り、火事関連の情報をチェックする。
サンティアゴ火災の鎮火率は昨日、一時的に50%まで達していたが、その後、すぐ30%に戻っている。
最初100人足らずだった消防士の数はその後、急ペースで増え続け、もう1100人になっている。
その他、警察やCHP(ハイウェイ・パトロール)等の人員も数百人いる。
消防車も数百台となっており、航空機やブルドーザー等もどんどん増加している。
州北部(+アリゾナ州?)から応援が駆けつけてくれたこともあるが、他地域の火災の鎮火が進むにつれ、こちらに人員や車輌・航空機を回してくれているのだ。
最初のうち、オレンジ郡のサンティアゴ火災はサンディエゴ、マリブ、サンバナディノに比べてニュースでのプライオリティが低いという印象を受けたが、ようやくフォーカスが当たるようになってきた。
学校区のサイトをチェックすると、明日も休校だというメッセージがアップされていた。
ほぼ予測していたことだが、これで、「息子を朝早く叩き起こして学校に連れて行く必要がなくなった」と安心する。もっとも、たとえ開校するようになった場合でも、空気の悪さを考えると登校させなかっただろう。
なお、今回は留守電用メッセージを音声ファイルとしてアップしてくれている。インターネットにさえ繋げれば自宅にいなくても聞けるという親切さだ。しかも、英語版とスペイン語版から選べる。
息子の学校の各先生のサイトもチェックしてみた。
どれも「今日は宿題はお休み」ということだ。
今週末もリトルリーグの試合が予定されているが、おそらく、キャンセルされるだろう。
他の習い事はすでにキャンセルした。
明日、会社には一応、顔を出さなければならない。ほとんどの仕事をインターネット経由でこなせるようにしてもらったとはいえ、出社しないとできないこともある。特に(金)はそうなのだ。
サンティアゴ火災は東方向にジワジワ進んでおり、遂にクリーヴランド大森林に達してしまった。そこは北はリヴァーサイド郡、南はサンディエゴ地域にまで達している巨大な森林である。
サンディエゴ北部の火災までにはまだ距離があるが、合流したりしたら大変だ。
昨夜のニュースでは「防御線を張って、進行方向の樹木を伐り倒したり、『バックファイア』という技術を使って、火が燃え移りそうな区域の可燃物を先に燃やして地ならししている」という話だったが、あまり効果がなかったのだろうか?
こうやって、火事の動きを追うのはまるで、巨大な動物...怪獣が移動するのを眺めるようだ。この怪獣は行く先々の食料(樹木等)を食いつぶしては先に進んで行く。
怪獣は自衛隊や地球防衛軍(消防隊)にいくら弾(水)を浴びせられても、ほとんどビクともしない。
家族サイトの掲示板に近況報告をアップする。ここ数日は自宅にいたりいなかったりだが、日本の実家でも火事が起こっていることだけは知ってるので、こちらが電話に出ないとパニクるかもしれない。かといって、こちらから電話をかけるタイミングも難しいし、義兄宅から国際電話をかけるのもはばかられるので、こうやって、ほぼ毎日、近況報告をアップしているのだ。
こういう形なら、写真や地図をアップしたり、最新情報がわかるサイトへのリンクを貼ったりもできるし、後になってチェックするのにも便利だ。
あとは自宅で落ち着いた時にタイミングをみて電話をかければ良い。