アメリカに暮らす

アメリカのTV番組や日常生活等について綴ります。ニュースのネタバレ度は弱~中、エピガイのネタバレ度は強です。

ノベライゼーション版『古畑任三郎』

2006年01月20日 | 読書
先日、日本に一時帰国した際に『古畑任三郎』のノベライゼーション版(扶桑社刊)を購入した。これは同番組の脚本家である三谷幸喜自身が第1シリーズの10本のエピソードを自ら小説化したものだ。元々はハードカバー版1冊で1994年に出版されたもので、私が購入した文庫版(1996年初版発行)は全2巻(5話ずつ)に分かれている。

このノベライゼーション版はTV版(残念ながら、私は第1シリーズは未見)とは構成が異なるらしく、各エピソードが「犯人の視点」から描かれている。

私の場合、元ネタ(TV版)を知らないのも幸いしてか、とても楽しませてもらった。

ミステリー小説というものは大体、まず死体が発見されて、「誰がどうやって殺したか」という種明かしは最後にされる。つまり、事件の真相を知らない読者は文中に散りばめられた数々のヒントを元に推理して一種の「パズル解き」を楽しむわけだ。

だが、このノベライゼーション版『古畑任三郎』ではまず犯人が紹介され、彼(彼女)がどういう経緯で殺人を犯すことになったのかが描かれる。そして、現場捜査にやって来た…あるいはたまたま現場付近に居合わせた古畑警部補が物語の途中から登場する。犯人は自分が疑われないよう四苦八苦し、表面上は捜査の協力までしてあげたりもする。

ストーリーは「犯人の心理描写」と「犯人と古畑警部補の会話」を中心に進んで行く。その結果、読者は犯人の身になって「古畑警部補は一体、何を考えいるんだろう?」と推理することになり、いつの間にか犯人に感情移入させられてしまう。最後は「自分」が犯人だとバレてしまう…いや、古畑警部補と出会った時からすでに彼の術中にハマっている事がわかってるだけに却ってスリルがある。これは非情に効果的な手法だ。

さらに、著者が脚本家だからなのか、会話のテンポがとても良く、スラスラと読ませてくれる。また、1話1話が短いので気軽に読める。これなら、TV版をすでに見ている人も楽しめるのではないだろうか?

ちなみに、巻末に各エピソードのTV版の主要ゲスト俳優(つまり犯人役?)のリストが載っているので、各俳優たちの顔と声を思い浮かべながら読んでも良いし、または自分で勝手な配役を決めて読むのも楽しいだろう。

なお、「あとがき」によれば、三谷幸喜はこれ以上、『古畑任三郎』のノベライゼーション版を書くつもりはないらしい。脚本家の彼としてはノベライゼーション版を書く暇があったら新作の脚本をどんどん執筆したいからなのだそうだ。だけど、『古畑任三郎』が「ファイナル」となってしまった今なら、もしかしたら心変わりしてくれるかも…と期待したい。

とにかく、これは単なる「TVドラマのノベライゼーション版」ではなく、「小説」として面白い本だ。ミステリー好きにもそうでない人にもオススメ。


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2 コメント

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知らなかった! (まめ)
2006-01-20 17:37:51
恥ずかしながら日本にいながら小説版を知りませんでした(^^;

三谷さんの空気は大好きなので

ぜひ読んでみたいと思います

ありがとうございました♪

近く「有頂天ホテル」も見に行く予定です(^^)
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僕も読みました (シロ)
2006-01-21 07:39:07
こんにちは。

僕は発売当初に手に入れて読みました。

でも現在実家から出ており、本はおきっぱなし。

ひさびさに読んでみたくなりました。

あーー、送ってもらおうかな(笑)
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