アメリカに暮らす

アメリカのTV番組や日常生活等について綴ります。ニュースのネタバレ度は弱~中、エピガイのネタバレ度は強です。

オレンジ郡の火事 [The Santiago Fire] - 第2日

2007年10月27日 | アメリカ生活
10/22(月)--- 第2日

今朝はちょっと寝不足だ。夜遅くまで、ニュースをチェックしていたせいである。
もちろん、いざ避難するとなった場合のために体力は温存しておくようにしないといけないのだが、気になって仕方がない。

私は通常、朝にシャワーを浴びるのだが、その時間も惜しんで最新ニュースをチェックする。
火事の件数があまりにも多い(10件以上)ため、TVの報道で自分の地域の火事の「順番」が回って来るのがジレったい。それに、今のところ、ここオレンジ郡のサンティアゴ火災はマリブやサン・バナディノ、サンディエゴ地域のものと比べて扱いが小さいようだ。
特定の1件の火事にしぼった情報を得ようとするなら、インターネットの方が良いのだが、こういうリアルタイム報道ではインターネットはまだスピードに欠けていると実感させられる。
インターネットの記事やインタラクティブが更新されている間にも、火事はどんどん「動いて」いるのである。

火事と煙の心配をしながらも、「今日のところは大丈夫そうだ」と判断し、息子を学校に送り出し、私と妻は出勤する。
地理的に見ると、北から、火災現場→職場→自宅→学校となっているので、とりあえずは学校にいるのが一番安全なはずだ。それに、学校は広い校庭があるから、避難場所としては良いだろう。

朝、仕事をしていると、窓際の同僚が「外、見て!」と皆を呼ぶ。
職場はアーヴァインの南東に位置するが、サンタアナ風が南に吹いているため、黒い煙がこちらの方向に流れて来ており、ほんの数ブロック先を横切っているのである。
「煙だけなら良いんだけど...」

昼頃、社内アナウンスがあった。
「炎が3ブロック先まで迫って来ています。今すぐ、避難して下さい」
もっと早く言えよー。

先ほど、煙が走っていたあたりの道路はすでに閉鎖されている。
幸い、私たちの家と息子の学校は反対方向にあるので大丈夫だが、道があまり混まないうちにやるべき事をやらなけらばならない。

私と妻は学校に息子を迎えに行く。他にも何人かの保護者の姿が見える。
終業時間は午後3時なので早退させることになるが、安全第一だ。宿題はインターネットでもチェックできるし、事態が事態だから、テストがあったとしても、後であらためて受けさせてくれるだろう。
事務所に行くと、すでに約100人の生徒が早退しているという。理由は皆、一言、「火事」である。学校のあたりはまだ避難勧告が出ているわけではないが、「火事」だけで十分な理由になるのだ。

あらかじめチェックしてあった情報を元に、閉鎖されている道路を避け、フリーウェイ5号線に向かう。本来なら有料ハイウェイの241号線&133号線を経由して5号線に合流した方が早いところだが、ちょうど、その2本の有料ハイウェイが交差するあたりが燃えていて、すでに閉鎖されているのである。

ともかく、使える道路がまだ残っているうちに、この地域を脱出したい。

途中、息子が「金魚は?」と訊く。我が家ではオスのベータ・フィッシュを飼っている。見た目は綺麗だが、獰猛で、「2匹のベータ・フィッシュを同じ鉢に入れておくと必ず殺し合いになるため、複数飼いたい場合は必ず別の鉢に入れること」という注意書き付で売られてるやつだ。
ちなみに、ウォルマートで買えば、一匹$10もしない。

「犬や猫なら、もちろん、一緒に連れて行くけど、金魚はなあ。万が一、車を捨てて逃げるような事態になったら、金魚鉢を持って走るわけに行かないだろう?他にもっと大事な物がいっぱいあるし。第一、金魚には飼い主を飼い主として知覚するほどの知能はないと思うよ」と、ちょっと意地悪だとはわかりつつも、すでに中学生である我が子に「非常事態のプライオリティ」を認識してもらいたくて、言ってみた。
すると、後部座席の息子が鼻をすする音が聞こえてくる。頭ではわかったつもりで我慢しているのだが、涙が出て来るのを抑えられないのだ。

実は一昨年、我が家ではペットのウサギに死なれ、最近はミドリガメに死なれたばかりだ。「犬を飼おうか」という話も出たのだが、諸々の事情により、実現できないでいる。
そのせいか、息子はベータ・フィッシュの餌は誰に言われなくても自分で毎晩あげており、親が思っていたよりも強い愛情を抱いていたようだ...と、気付いた私たちは少し回り道をして、いったん家に戻ることにする。

そのついでに、服も動きやすいものに着替え、トイレに行く。道路の閉鎖・混雑の状況によっては何時間後にトイレに行けるかわからない。

そして、火の元の再点検をしたり、全てのドア(部屋と部屋の間のドアも含む)と窓が閉まっていることを再確認する。また、洗面所にも水を溜めておく。
どの程度の効果が望めるかはわからないが、火や煙を少しでもブロックするためだ。1件の家が燃え落ちるのに1分でも余計にかかれば、被害に合う家の合計件数が減るかもしれない。

「忘れ物はないかな?」とあらためてチェックしていて、とんでもない事に気付いた。父の位牌を忘れていたのだ。父の葬儀は12年前に日本で行ったのだが、位牌を1つ余分に作ってもらい、アメリカに持って来ていた。これを忘れるなんて、なんという親不孝者なのだろう。
ともかく、金魚騒動(?)のおかげで、位牌をちゃんと持ち出すことができた。

こうして文章にすると長いのだが、家にいたのは2~3分だけだ。

再び車を出す。

昨夜から、夫婦で「もし避難するとしたら、どこに行こうか?」と相談していた。
北はマリブ、サンタ・クラリタ(マジック・マウンテンの辺り)、レイク・アローヘッド、カホン・パス(ラスベガスに向かう道)等で火事が起こっている。リヴァーサイド方面もヤバそうだ。要するに、ロサンジェルスの北側は全部危ないし、あまり東に行き過ぎてもいけない。
南ではサンディエゴ付近のエスコンディド(ワイルド・アニマル・パークがある所)やラモナ(サンディエゴ東北の山中にある高級住宅地域)等が燃えている。

「ここから、ちょっとだけ南のオーシャン・サイド辺りはどうかな?海が近いし」
「でも、あそこは原子力発電所があるじゃない?」
「そうか...それに、どこか知らない土地で野宿するよりは親戚の家の方が安心だよね」

...というわけで、結局、アーヴァインを抜けてロサンジェルスのダウンタウン方面を目指す。
妻の兄がロサンジェルス郊外に住んでいるのだが、あそこなら、どこの火事からもとりあえず遠い。
アーヴァイン~タスティン地域さえ無事に抜けられれば、あとはダウンタウンを目指すつもりで進めば良い。

心配していたアーヴァインだが、意外とスンナリ通り抜けることができた。
サンタアナ~アナハイム付近は少し渋滞していたが、ディズニーランドのあたりからはスイスイと進む。考えてみれば、まだ通常のラッシュアワーまでには時間があるのだ。

義兄の家に近付いたところで、安心したせいか、「あっ、ラジオを持って来たのは良いけど、電池を忘れちゃったね」と思い出す。
だが、ここまで来たら電池を買う必要もないので、昼食のテイクアウト(吉野家の牛丼!)だけを買い、義兄の家に直行する。
息子はすでに学校で昼食を摂っていたので大丈夫だ。ちなみに、今日は屋外のテーブルではなく、体育館の中で食べたのだという。炎が回って来る心配は少ないとはいえ、煙と灰のせいで空気が悪くなってきているからだ。

義兄の家族は仕事&学校で留守だった。「世間」ではウィークデーの昼間なのだとあらためて気付く。
だが、先に避難していた義妹がドアを開けてくれた。

遅い昼食を摂ってシャワーをあび、ひと休みする。

夕方。息子の中学校の各先生のサイトにアクセスし、宿題を確認する。今日、すっぽかしてしまったクラスの分で宿題のやり方がよくわからないのがあったので、息子に「Eメールで先生に問い合わせなさい。授業をすっぽかしたお詫びもするんだぞ」と指示する。

しばらくして、社会の先生からレスがあった。まだ学校にいたのだという。「宿題はこうだけど、事情が事情だから、できなくてもOKよ」という暖かい返事だ。
「先生はこう言って下さってるけど、できる限りのことはしないとね」という親と、「しなくても良いって言ってるじゃん」という息子が口喧嘩のようになってしまうが、どうにかやらせることに成功した。

夜。引き続き、TVとインターネットで情報をチェックする。サンティアゴ火災の鎮火率は30%だという。他の火災に比べれば良い方か?

学校区のサイトを頻繁にチェックするが、火が迫って強制避難命令が出ているフットヒル&ポートラ・ヒルズを除き、学校はいつも通り運営するようだ。スクールバスも同様。
でも、火だけでなく、煙による空気汚染も心配なので、息子の中学校の校長先生と、学校区の代表にEメールを送って問い合わせてみる。

ちなみに、シュワルツェネッガー州知事は昨日の夜、非常事態宣言を発したらしいが、一方、ホワイトハウスのサイトではカリフォルニアの火事に関するニュースは見当たらない。

あと、今日になって知ったのだが、昨日、サンティアゴ火災が発生する数時間前、マリブの火災の消火を手伝うため、オレンジ郡から100人近くの消防士が派遣されたのだという。
もし、彼らがオレンジ郡に残っていたら、サンティアゴ火災も規模がもっと小さいうちに消火できていたのだろうか?

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私がチェックしているサイト:

※カリフォルニア南部の火災状況(インタラクティヴ・マップ)
- http://www.ocregister.com/news/maps-small-utf-1902318-google-msa

※オレンジ郡の火災状況(インタラクティヴ・マップ)
- http://www.ocregister.com/article/map-santiago-fire-1902193-orange-county

※地元消防機関
- http://www.lafd.org/
- http://www.ocfa.org/

※地元新聞&TV局
- http://www.latimes.com/
- http://www.ocregister.com/
- http://www.kcal9.com/
- http://www.abc7.com/
- http://www.fox11.com/
- http://www.nbc4.com/
- http://www.ktla.com/


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3 コメント

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Unknown (tom)
2007-10-28 19:18:15
はじめまして。
tinkerさんのサイトからたどり着きました。
大変な緊急事態で、ご無事をお祈りしております。

当方、中国の上海に在住しており、
海外ドラマを何よりの楽しみにしている退屈な主婦です。

どうぞお気をつけて!
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Unknown (Shira)
2007-10-29 13:50:49
私は3年前の中越地震で被災していますが、火事は地震とはまた違う怖さがありますね。皆さんが早く安心してご自宅に戻れるよう願っています。
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Unknown (ジョウ)
2007-10-30 06:50:00
tomさん&Shiraさん、ありがとうございます。

幸い、私たちの場合はまだ避難勧告も出てませんので、隣山の火を見ている感じですが、念のため、しばらく自主的に親戚の家に避難しながら出勤し、昨日(現地時間10/28)帰宅しました。

ここオレンジ郡の火事は東にジワジワ移動していますが、先ほどチェックしたところ、鎮火率が65%で、今日は雨が降る可能性があり、11/2(金)までには完全に鎮火できる見込みだそうです。

地震といえば、ノースリッジ地震の時は振動が伝わって来ました。かなり遠いんですけどねぇ。
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