回転寿司「1皿100円でも儲かる」カラクリの要諦
「お子様向け商品」を拡充する深いワケ
2019/05/04 11:00 東洋経済
回転寿司の発祥の地は、実は東大阪。元禄寿司が約60年も前の1958年、「廻る元禄寿司 1号店」
を開店したのが始まりだ。売上高日本一を誇るスシローが1号店を大阪に開店したのはそれから
30年近く後の1984年。
現在、全国展開をしている回転寿司店だけでも、「スシロー」「無添くら寿司」「はま寿司」
「かっぱ寿司」「すし銚子丸」「がってん寿司」「元気寿司」などがあり、これらの店の
ほとんどは1皿100円(税別)のメニューを売りにしている。
街の寿司店なら、ちょっとつまんで飲んで1人最低5000円が当たり前のところ、1皿100円の
回転寿司がどうして儲かっているのか、不思議に思う人は多いはずだ。
回転寿司の「儲けの仕組み」
飲食店なので、儲けを考えるときの基本的な計算方法がある。「客単価×座席数×回転数」で
店舗の売り上げを計算し、そこから原材料費(原価)や人件費、店舗の家賃、経費などを
差し引けばわかる。
回転寿司にあてはめてみると、「客単価は低めだが、座席数は多く、回転数も多い」ことは
わかるだろう。それぞれの回転寿司チェーンでは、客単価を高くする試みや回転数をさらに高める
仕掛けなどもしているだろうが、どれも「安いのに儲かる」回転寿司の秘密とは言い切れない。
それでは、原価はどうなのだろうか。メニューごとの原価では、ウニやマグロなどが高く
75〜85円程度とされている。基本的に1皿100円(税抜)とすると、80%前後が原価という
ことになる。回転寿司店は原価率が高いのが特徴で、一般的な飲食店では約30%程度の原価率を、
10ポイント以上、上回ることが珍しくないという。ウニやマグロの原価率がこれだけ高いことを
考えると、原価率の低いメニューが必要になる。
その代表格は、ツナマヨ、コーン、かっぱ巻き、タマゴなどで、いずれも原価率20%以下だ。
みそ汁などは10%程度、コーヒーに至っては2%程度だという。
店側としては原価率の低いメニューをなるべくたくさん食べてもらえれば、ウニやマグロなどを
食べる客がいても儲かる。そのためにはどうしたらいいか。実は原価率の高いメニューと低い
メニューを比べると、ある特徴があることがわかる。原価率の低いメニューは子どもが好きそうな
ものが多く、逆に高いメニューは子どもが敬遠しそうなものが多い。
それこそが、回転寿司が儲かる仕組みで、ようするに、子どもの客を増やせばいいのだ。
子どもが原価率の低いネタをたくさん頼めば、ウニやマグロの注文で高くなりつつある原価率を
下げられる。ただし、子どもは1人では来られないので、ファミリー層を狙う。
回転寿司店が郊外や新開発の住宅地などに立地することが多いのは、そこに若いファミリー層が
多く住んでいることが多いからだ。広い駐車スペースを併設するのも、そうした若い親子連れや
3世代連れの利便を考えてのことで、家族もろとも子どもを呼び込む作戦といえるだろう。
家族連れなどの客が入店した後も、回転寿司では、儲けを出すためのさまざまな工夫がなされている。
回転寿司店のファミレス化などということが近ごろ言われているが、まさにそのとおりで、
回転寿司が出現したばかりの頃に比べるとメニューは格段に多様化している。
それも、子どもに向けた多様化で、ポテトフライや唐揚げ、ラーメン、デザート類が豊富に
ラインアップされている。しかも、ラーメンやハンバーグ、デザートなどは、子どもに人気だが、
それらの値段を寿司よりは少し高めに設定して、少しでも儲ける仕組みを徹底している。
回転寿司業界の「次の狙い」
さて、例えば、ある回転寿司店の原価構成が、材料費=40%、人件費=30%、諸経費=25%で
合計95%とする。そうなると利益はわずかに5%。もう少し利益率を上げたいが、材料費は
下げられない。
そこで、次はその人件費をなんとか抑えようとする工夫が必要になってくる。その1つが、
寿司店でありながら寿司職人を置かないこと。ほとんどの店でシャリをにぎるのはロボットで、
それに加工済みのネタをのせるだけというシステムをとっている。注文取りも今ではタッチパネル
で行うのが当たり前だ。これは人件費の抑制と同時に廃棄ロスを少なくして、コストを節約する
という効果もある。
ここまで示したように、回転寿司が儲かる理由は1つではない。郊外に駐車場完備で立地し、
子どもと家族連れを呼び込む。寿司職人の代わりにロボットでにぎる、タッチパネルで客に
「食べたいネタを注文させる」など、その工夫はさまざまだ。こうした工夫を組み合わせた
「総合力」こそ、回転寿司の「儲ける力」になっているのだ。