米若者のジュエリー離れ、高級ブランドは対応に苦慮
ミレニアル世代は自分だけの宝飾品やカスタマイズが好き
2018 年 6 月 21 日 13:29 JST THE WALL STREET JOURNAL
高級宝飾品店は問題を抱えている。ミレニアル世代は、数十年前にその親や祖父母を魅了した外出用の
きらきらした飾りを買おうとしないのだ。
ブルガリやデビアス、その他の宝飾品ブランドは20代や30代を振り向かせるため、店舗のデザインを見直し、
先鋭的で価格が低いシリーズを発売し、ミレニアル世代お気に入りの女優やモデルを宣伝に採用している。
博物館のような従来の高級ブティックには興味がないミレニアル世代の心をつかむため、ファッション業界の
戦略に追随。カスタマイズできる製品をデザインし、社会的責任や環境に配慮した事業プロセスをうたう。
ネット販売も強化している。
宝飾品を売るのは難しい。誰でも服は必要とするが、宝飾品は違うからだ。特に、「カジュアルフライデー」
以降の世代はそうだ。ストリートファッション好きの若者にとっては、クラシックな宝飾品は古臭く退屈で、
特別な場でのみ身に着ける物だ。
ミレニアルはそれ以前の世代に比べて出勤・外出時に着飾らない傾向があるため、宝飾店はそれに合わせて
マーケティング方法を変えなくてはならない。かつて高級宝飾店は、若い消費者に結婚式や記念日、贈り物用の
宝飾品を売ろうとした。今では、特別な機会を待たずに身に着ける宝飾品を自分のために買うという
アイデアを売り込んでいる。
宝飾店によると、ミレニアルは貴金属や宝石に関心があるが、彼らを顧客にするには現代的な製品と
マーケティングが要る。若者にアピールする製品をデザインし、記念日だけでなくいつでも自分に宝飾品を
買うよう説得する必要があるのだ。
学生ローンに追われるミレニアル
ミレニアル世代には、高い宝飾品ではなくハイテク製品や休暇のためにぜいたくを控えている人が多い。
テネシー州のエンジニア、トレーシー・フーバーさん(26)は「私には高すぎる。別の物にお金を使ったほうが
いいと思う」と述べた。フーバーさんと夫は自由になるお金の「大半を旅行に」使っている。
フーバーさんが普段身に着ける宝飾品はキュービックジルコニア(ダイヤモンドに似た人工石)のピアスのみ。
婚約指輪の石はキュービックジルコニアだ。フーバーさんも夫も、仕事の邪魔になるため結婚指輪はほとんどしない。
フーバーさんによると、「指輪は3つ合わせて600ドルだった」。4年前に結婚した時、高級宝飾品の優先順位は
低かった。「高い指輪か、引っ越したばかりの家に置く家具か、どちらかしか買えなかった」という。
同世代に宝飾品を身につけている友達はいない。「今も学生ローンの返済をしている知人ばかり。同世代で
本当に宝飾品を優先している人は多くないと思う」
いざミレニアルが宝飾品を買う時には、グッチなどはやりのブランドから厳選することが多い。
アナ・シェフィールド、ビンバン、キャットバード、ReBeといった小さなブランドや新しいブランドの凝った製品、
オンライン市場エッツィで売られている手作り品も好きだ。
ミレニアル世代とそれ以前の世代では宝飾品の使い方が違う。
市場調査会社ミンテルのダイアナ・スミス氏によると、ミレニアル世代は高価な物とそうでない物を合わせる。
同社の調査によると、彼らは個人のスタイルを表現するために、自分だけの宝飾品を作ることやカスタマイズ
することが好きだ。
宝飾品業者はネット販売をしたり環境に配慮していると強調したりしてネット世代に訴えようとしている。
ブランド品の電子商取引サイト、ファーフェッチとネッタポルテは最近ミレニアル世代を意識した
高級宝飾品セクションを立ち上げた。ティファニーやスイスの時計・宝飾品ブランド、ショパールなど
幾つかのブランドが、ファーフェッチまたはネッタポルテあるいは両方と契約している。
ティファニーのCMにヒップホップ
創業181年のティファニーは、現代的な感性のペンダントや指輪などの新コレクション「ペーパーフラワー」の
コマーシャルに女優のエル・ファニングさんを採用した。ティファニーブルーのパーカを着たファニングさんは
ラップ歌手エイサップ・ファーグさんのヒップホップに合わせて踊っている。
曲は、1961年の映画「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘップバーンが歌っていた「ムーン・リバー」に
絡めた作品だ。
ティファニーが昨年立ち上げた「ハードウェア」シリーズは、ニューヨーク市の街が持つエネルギーを形にして
ミレニアル世代の共感を呼ぼうとしている。宣伝役には、ファニングさん、レディー・ガガさん、
女優ゾーイ・クラビッツさんが選ばれた。
一方、デビアスの「フォーエバーマーク」ブランドが5月にオープンした上海の店舗には、高額商品を購入した
客用のVIPラウンジを設けるなど、ナイトクラブの趣向が加えられている。
店内の宝飾品は「中国のミレニアル世代4億2000万人にアピールするためにデザイン」されているという。
イタリアの老舗ブルガリは若い消費者を念頭に店舗のデザインや販売方法を改めた。ローマの旗艦店のそばに
建てた店舗では、客がデザインブックを参考にしたり、同店舗の限定商品を買ったりできる。
ジャン・クリストフ・ババン最高経営責任者(CEO)はこの店舗について、「ブルガリの顧客全てのために
デザインされたが、特にミレニアル世代の顧客を意識した」と話している。