中国の有名女優、謎の失踪 脱税巡り共産党が関係か
2018.09.17 Mon posted at 16:24 JST CNN
(CNN) 映画やテレビで活躍していた中国の有名女優、范冰冰(ファンビンビン)さんが、突如として姿を消し、
消息が分からないままになっている。当局は有名人の脱税に対して摘発の姿勢を強めており、中国共産党が関与した
可能性を指摘する声もある。
范さんは中国や欧米の映画に出演していたスター女優で、ハリウッド映画「X-MEN」シリーズにも登場し、
収入もトップ級だった。高級ブランドのCMにも起用され、2015年のタイム誌では中国で「最も有名な女優」に
選ばれていた。
ところが6月初旬以来、公の場に姿を見せなくなった。
中国国営メディアは9月6日、范さんが行動を規制され、法の裁きを受ける予定だとする記事を掲載した。
この記事はその後削除されたが、范さんの居所や、立件の可能性などに関する公式発表は行われていない。
問題の発端は5月下旬、范さんの署名の入った映画出演の契約書とされる画像が中国のソーシャルメディアに
掲載されたことだった。
国営タブロイド紙のグローバル・タイムズによると、契約書は2枚あり、1枚は納税用で范さんの出演料は
1000万人民元(約1億6300万円)と記載され、別の1枚には5000万人民元(約8億1000万円)と
記載されていた。
これは中国で有名な脱税の手口で、少額を記載した契約書が納税申告に使われ、額が大きい方の契約は
非課税所得として扱われる。
この書類を流出させたテレビ司会者は6月、范さんに対して謝罪したが、中国の国家税務総局は同月、同国の
映画業界における脱税疑惑について緊急捜査を指示した。
范さんの事務所などは疑惑を全面否定していたが、范さんはその後、公の場に登場していない。
中国の大手制作会社に所属するプロデューサーは、CNNの取材に対し、脱税目的で2種類の契約書を作成する
行為は映画業界で一般化していると指摘。
范さんの失踪を受けて誰もが不安を強めていると語り、「ほとんどすべての契約に何らかの不審な点があり」、
監査には耐えられないだろうと予測した。
中国のエンターテインメント業界に詳しい米芸能誌ハリウッド・リポーターの元アジア担当エディター、
ジョナサン・ランドレス氏は、中国共産党が「チャイニーズ・ドリーム」を売り込むために有名人を利用しながら、
一方で所得の著しい格差が拡大することは望んでいないと解説。
「これは税金を収めさせるための脅しかもしれない。もし誰かが摘発されれば、今後何年もの間、映画制作に
波及効果が及ぶ」と推測している。
中国の国民的スター女優、拘束のうわさ 当局は「CSRゼロ」の酷評
米ハリウッド映画「X-Men」にも出演した、中国の国民的女優ファン・ビンビン(范冰冰)さんは、脱税行為が
浮上した4カ月前から、テレビや映画といったスポットの当たる場所に姿を見せなくなった。
最近、中国当局は彼女に対して「社会的責任(CSR)ゼロ」の酷評を下した。SNSでの更新も止まっており、
当局により拘束されているとの報道もある。
ビンビンさんは、世界でも最高収入の俳優の一人とされ、歴史ドラマ「武則天」で主役を演じるなど、中国なら
誰しもが知る人気女優だ。しかし、今年5月末に中国中央テレビ(CCTV)の元アナウンサーが中国SNS「微博」で、
彼女には2重契約問題や巨額の脱税疑惑があると暴露し、スキャンダルとなった。官製メディアによると、
税務当局はビンビンさんを取り調べ対象としている。
武則天のファン・ビンビン
スキャンダル以後、当局によりメディア出演は統制されたと考えらえている。
もっとも最近では、鳳凰ネットなどによると7月1日に、上海のある病院の小児科を訪問し、子供たちと接したと報じた。
ビンビンさん本人からは、7月23日付の微博の投稿を最後に、情報発信は行っていない。
2018年まで、映画やテレビ界の俳優、歌手、そのほかエンターテイナーに関する評価を発表した。
ビンビンさんに対しては100点満点中0ポイントが付けられた。
評価基準は、「スターとしての社会的なふるまい」「テレビや映画での活躍」「中核となるエネルギー」「様々な表現力」
など。
官製メディア・中国日報は9月11日、「中国スターCSR報告で2人がゼロ点」と題した記事で、100人中100位の
ビンビンさんの最低評価を強調した。
この100人リストには、台湾出身の女優リン・チーリン(林志玲)さんが8位で61ポイント、
ハリウッド俳優ジャッキー・チェン(成龍)さんが42位で38ポイント、女優チャン・ツィイー(章子怡)さんが48位で
36ポイントとなっている。
9月初旬、官製メディア証券日報は、ビンビンさんは「調査対象であり、法的な決定を受け入れた」と報じた。
さらに、脱税容疑は「氷山の一角」であり「さらなる違法な融資や腐敗に関わった疑いがある。最悪の場合、刑罰が下る」
と書いた。しかし、この報道は数時間後に取り下げられ、閲覧できなくなった。