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ワクチン開発競争にロシアも参戦、欧米に対抗心 。 新型コロナで世界に広がる「ワクチン国家主義」

2020-06-13 15:59:10 | 医療・疾病・疫病・パンデミック・新型コロナウイルス

 

ワクチン開発競争にロシアも参戦、欧米に対抗心

新型コロナで世界に広がる「ワクチン国家主義」

2020 年 6 月 13 日 04:00 JST    WSJ By Georgi Kantchev and Drew Hinshaw

ロシアのバイオテク企業BIOCADの製造ライン(5月20日)

 

 【モスクワ】ロシアではシベリアの国営研究所でも軍駐屯地でも、国内屈指の

科学者らがウラジーミル・プーチン大統領に要求された難題に応えるべく奮闘している。

その要求とは、秋までに新型コロナウイルスのワクチンを開発することだ。研究所では

ラットで実験が行われ、駐屯地では臨床試験に控えて軍人が隔離されている。

 

 新型コロナ感染症(COVID-19)の予防ワクチン開発を巡る世界的な競争は、

1960年代にソビエト連邦共和国が米国に対抗心を燃やした宇宙開発競争に例えられている。

 

 期限に間に合わせるため、ロシアは軍を巻き込み、試験の承認期間を短縮化し、

臨床評価も加速させている。目指しているのは、勝者に経済的・政治的な優位性を

もたらす可能性があるワクチン開発競争で勝利を収めることだ。ロシアは当初、

感染拡大を阻止するためにロックダウン(都市封鎖)すべきかどうかで揺れていた。

だが政府は今や、真っ先に自国民にワクチンを接種すべく奔走している。

 

 ロシアより多くのワクチン候補を持つのは米国、中国、カナダのみだ。

世界保健機関(WHO)によると、ロシアは10種の候補を持っている。プーチン氏は

9月までに初のワクチンを登録すると主張して譲らない。だが公衆衛生専門家は、

非常に短いタイムラインであり、ワクチンの副作用について徹底的な研究が行われ

なければ、健康上のリスクを引き起こしかねないと警告している。

 

 ロシア政府にとって、これはとりわけ大きな賭けとなる。ロシアは米国とブラジルに

次いで感染者が多く、公式統計によると6000人以上の死者と約50万人の感染者が報告

されている。

 

 ロシア経済はまず原油安に見舞われ、続いて新型コロナの感染拡大を受けた長期に

わたる閉鎖措置で打撃を受けた。7月1日には、プーチン氏が2036年まで続投が可能に

なる憲法改正法案の是非を問う全国投票が行われる。

 

 セチェノフ大学のトランスレーショナル医療・バイオテクノロジー研究所のバディム・

タラソフ所長はインタビューで、「今は危機的状況であり、全てを迅速に行わなければ

ならない」とし、「研究プロセス、臨床試験、全てが加速している」と語った。

同研究所もワクチン1種の治験を実施している。

 

 ロシア軍は先週、軍に所属する男性45人と女性5人を隔離した。ロシア国防省と保健省が

共同開発したワクチンを投与するためだ。7月中に治験結果が出る予定だ。

 

 同国保健省からワクチン開発プログラムについてコメントは得られていない。

国内の科学者や当局者は、あらゆる安全対策を講じており、ワクチンはあくまで厳格な

試験を行った上で登録されると述べている。

 

 ロシアのアプローチは、世界の大国が自国民へ優先的に予防接種を行い、国際協力を

最低限にとどめる「ワクチン国家主義」の実例となる。

 

 ロシアの場合、米国や中国とわずかな差で開発を成功させるだけでも、プーチン氏の

評価が上がり、制裁で締め付けられた同国経済がなお、世界の富裕国と競争できることを

示す証明になる。

 

 プーチン氏の要請に従い、研究所や軍施設はここ数週間に取り組みを加速させている。

モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は先週、同市が10月までに大量のワクチン第1弾を

受け取ることを期待していると述べた。

 

 セチェノフ大学研究所のタラソフ所長は、全ての安全基準が満たされれば、そうした

スケジュールは可能だとみる。同大では動物実験を成功させてから2週間後のヒト臨床

試験開始を目指している。

 

 臨床試験ではボランティア数十人が2週間にわたって、療養所の個室で隔離生活を

送る予定で、治験終了時に1人1300ドルが支払われる。ボランティアは新型コロナや

その他の疾病の検査を受けた上でワクチンを投与され、経過を観察される。

初回の結果が出るのは8月上旬の見通しだ。

 

 サンクトペテルブルク実験医学研究所が開発中の別のワクチンは、ヨーグルトなどの

乳製品に混ぜて投与できる。研究者が明らかにした。ワクチンを機能させる新型コロナの

遺伝子を、プロバイオティクス細菌を通して導入する。

 

 最終的にワクチンが承認されれば、民間バイオテクノロジー企業BIOCAD(サンクト

ペテルブルク本社)などロシア企業が全力で生産する見通しだ。

 

 BIOCADのドミトリー・モロゾフ最高経営責任者(CEO)はインタビューで、

「研究所や規制当局と密に協力している。全てがこれ以上ないほど迅速に進んでいる」

と述べた。プロセスを加速させるため、同社は臨床試験の完了後にまとまったデータを

規制当局に送るのではなく、研究データを継続的に送付している。

 

 それでも国内の科学者や当局者は、ヒト臨床試験の結果が出るまでは勝利ではないとし、

慎重な姿勢を促している。

 

 消費者向け保健規制当局である福祉監督庁のアナ・ポポワ長官は先週、「発表された

タイムラインは人への希望となるが、現時点で期待を掛けるのは時期尚早に思える」

と語った。

 


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