アマゾンが新たな模造品対策、ブランドに削除権限
メーカー自身で煩雑な手続きなしに対処
2019 年 3 月 1 日 13:12 JST THE WALL STREET JOURNAL
米アマゾン・ドット・コムは、同社サイトに出品された模造品をブランドオーナー自身が削除できる
ようにするプログラムを開始した。模造品対策に苦戦する中、これまでの方針を一転し、責任の一部を
他社に移譲した格好だ。
アマゾンは28日、「プロジェクト・ゼロ」という新たな模造品対策プログラムを開始した。これを
利用すれば、ブランド側は煩雑な手続きでアマゾンに報告するのではなく、削除対象の出品商品を
クリックするだけで済むため、模造品業者からブランドをより確実に保護できるようになるという。
アマゾンは約15社と数カ月にわたり試験的にプログラムを実施してきたが、今回新たに一部企業を招いて
本格的にスタートさせた。アマゾンはいずれ全てのブランドオーナーに参加してもらいたいと考えているが、
具体的なスケジュールについては言及しなかった。
プロジェクト・ゼロの一環として、商品単位ごとに個別のコードを作成し、ブランドが既存のパッケージに
印刷したり、各商品に貼ったりできるようにもする。商品がアマゾンの倉庫に入荷した際、コードを
読み取れば本物かどうかを確認できる。さらにアマゾンによると、自動的に出品サイトをスキャンし、
疑わしいものをブロックして削除できるようアルゴリズムをさらに強化している。
このように監視責任や権限の一部をブランド側に移譲するのは異例のことだ。他のIT(情報技術)企業は
外部業者の助けを借りてプラットフォームを監視しているが、一般にユーザーにコンテンツを削除させる
ことはしていない。アマゾンではこれまで、模造品とおぼしき商品をアマゾンの社内チームにブランド側から
報告させ、そのチームが調査をして商品を削除するかどうかを決めていた。
「われわれは完璧ではないことに気づいた」。アマゾンで顧客信頼とパートナー支援業務を世界的に
統括するダルメシュ・メタ氏はこう述べた。「(プロジェクト・ゼロは)ブランドに権限を渡すものだ」
プログラムを乱用される恐れも
ペットの抜け毛クリーナー「チョムチョムローラー」を販売する米ワードエイプは最近、アマゾンに
「中古品」が出品されていることを発見した。同社のアーロン・マラー最高経営責任者(CEO)によると、
1000個もの商品が通常より低い価格で販売されていたため、模造品であることは明白だった。同氏は試験
プログラムの一環として、アマゾンの新しいツールを使用してそれら商品を排除した。
「ネット販売の新時代だ」。マラー氏はこれまでの模造品対策を「モグラたたき」にたとえたうえで、
新プログラムを利用すれば模造品を完全に排除できると話した。
プロジェクト・ゼロに招かれた企業は、特別なサイトにログインし、自社商品のキーワードや画像を
検索できる。不正が疑われる出品商品をクリックすると、その商品または出品者が自動的に削除される。
これはアマゾンの自動保護システムを強化するのにも役立つ。システムはサイトを絶えずスキャンし、
出品商品をブロックして削除している。
このプログラムはブランドにかなりの信頼を置くもので、その権限を乱用される恐れもある。
多くのブランドが価格をコントロールしたり、限定感を保ったりするために、特定の商品をアマゾン上で
販売したくないと考えている。しかし、新たなツールはブランドがアマゾンで販売してほしくないという
だけの理由で、本物の商品を削除するためのものではないとアマゾンは説明している。
消費者の保護が最終的な目標
また、アマゾンではブランドによるプログラムの利用状況をモニターし、乱用されないようにしていくとも
説明。出品者は決定に異議を申し立てることも可能だ。プログラムは招待制で徐々に拡大する計画だが、
当初のグループはこの問題に積極的に取り組んできたブランドでおおむね構成されているという。
ブランドは通常、アマゾンに出品されている商品を購入・検査して模造品かどうかを判断している。
だが中には生産していない商品など模造品であることが明らかなものもある。
出品商品の削除は無償だが、商品単位コードは数量に応じて1コード当たり約1~5セントかかる。
単位ごとに固有の読み取り可能なコードが割り当てられ、倉庫に入荷したときに模造品でないことを
確認できる。この仕組みを機能させるには、メーカーはウォルマートやターゲットなどどこで
販売されるかにかかわらず、全ての商品にコードを付ける必要がある。
このシステムの狙いは、ジャスティン・センプスロットさんがしたような経験を防ぐことにある。
米アイダホ州で救急救命医として働くセンプスロットさんは昨年、アマゾンで子供用のライフジャケットを
発注したが、数週間待った末に中国から明らかな模造品が送られてきた。
「これほど重要な安全製品が模造品だっため、がっかりした」。非営利団体(NPO)の国境なき
水難救助団で責任者を務めるセンプスロットさんはこう話す。「それに本当に粗悪な模造品でもあった」