EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

日本の産業セキュリティー強化は急務 防衛業界の利益のためにも機密情報の確実な保護を

2018-04-20 08:29:05 | 防衛・安全保障・インテリジェンス

日本の産業セキュリティー強化は急務

防衛業界の利益のためにも機密情報の確実な保護を

2018 年 4 月 19 日 13:01 JST    THE WALL STREET JOURNAL By Arthur Herman

――筆者のアーサー・ハーマン氏は米ハドソン研究所上席研究員で「1917: Lenin, Wilson and the Birth of the New World Disorder」と「Pacific Partners: Forging the US-Japan ‘Special Relationship.’」の著者


 ドナルド・トランプ米大統領と安倍晋三首相による首脳会談の議題に、日本の脆弱(ぜいじゃく)な産業セキュリティーが

含まれていたと願いたい。日本政府とその請負業者に機密情報を保護する能力がなければ、未来の先進兵器システムの設計・製造は

困難になり、日米両国にとってマイナスだ。


 過去何十年も自衛隊だけにサービスを提供してきた日本の防衛産業が、世界市場に進出しようとしている。多くの米国企業が

共同防衛プロジェクトで三菱重工や 富士通 、NEC、IHIエアロスペースなどの日本企業と手を組みたがっている。

しかし、日本は機密データを安全に取り扱う仕組みが欠如しているため、そうした米企業の希望はおおむね留保されたままだ。


 日本は防衛業界の雇用を規制する一貫した仕組みもない。現行法では機密情報にアクセスする労働者に適切なトレーニングや

セキュリティークリアランス(機密情報の取扱者に対する適性審査)を確実に受けさせることはできない。


 産業セキュリティーは現代の防衛業界の土台となっている。米国はもちろんのこと、どの国も、機密情報が外部の目に触れないと

確信できない限り、外国の取引相手や請負業者と情報共有しようとはしないだろう。民間企業も日本とのパートナーシップを

拒み続けることになり、自社だけで先進システムを製造可能な企業がほとんどない今の時代において、日本の防衛業界の能力は

大幅に制限されることになる。


 防衛秘密を保護する上でカギとなるのがサイバーセキュリティーだ。米国がその重要性に気づいたのは2000年代半ば、

中国のハッカーが米国防総省や最先端戦闘機F35の製造に関わっていた複数の民間企業の機密データを盗んだことがきっかけだった。


 米国やその他諸国が近年、自国のセキュリティーを強化している一方で、日本は立ち遅れている。情報セキュリティー責任者を

置いている企業の割合は欧米が70~80%に上る一方、日本ではわずか27%だ。また欧米企業は「情報共有・分析センター」を

通じてサイバー攻撃やハッキングに関する情報を共有しているのに対して、日本の防衛業界にはいまだにそうしたネットワークがない。


 日本は米国と軍事情報の安全性を相互に確保する協定を交わし、特定の国家秘密を秘匿するための法案も国会で可決した。

しかし、政府職員や民間従業員に対するセキュリティークリアランスを規制する法的強制力のある仕組みが依然欠けている。

代わりに日本は独自の堅固な仕組みが開発されるのを待つ間、米政府の専門家に頼って一時しのぎの是正策を講じている。


 過去の両国の連携は、日本の産業セキュリティーを期待通りの水準に引き上げる手助けを米国ができる可能性を示している。

第2次世界大戦後、日本の工学者である田口玄一氏は統計に基づく製造という新しい米国式プロセスを、細かく質の高い職人技を

重んじる日本の産業文化に適合させた。そうした製造慣行をテコに日本は強力な工業部門を構築し、競争し烈な世界市場で

自動車と電子機器の販売を支配できるようになった。


 経済学者の八代尚宏氏はかつて、日本はシステムを輸入したが、それを日本式に変更したと述べた。

日本が産業セキュリティーでやるべきことはそれだ。日本政府は米国など他国のベストプラクティスに学び、それを自国の

人物審査や知的財産権・機密情報の保護に応用すべきだ。そうすれば日本産業の独自性に合ったセキュリティー体制が自然と

出来上がるだろう。


 日本の産業の安全確保は日米の防衛分野での取引を拡大させるだけでなく、米軍と自衛隊の装備を向上させることで、

より安全な世界を構築する手助けにもなる。これはトランプ・安倍両政権ができる限り早く採用すべきゴールだ。