同プロジェクトは、中国第3位の大手不動産開発会社で香港株式上場企業の「碧桂園」(カントリー・ガーデン・

ホールディングス)とジョホール州政府子会社クンプラン・プラサラナ・ラクヤット・ジョホールによる合弁会社が

手がける。

 

 同州企業はジョホール州スルタン(州王)が最大株主で、実質、中国とジョホール州王室とのジョイントベンチャーだ。

同州は、シンガポールを領土としてかつて保有し、国内の州の中でも莫大な資産、資本を抱え、州政府の中で唯一、

州軍も所有する”独立色”の強い州でも知られる。

さらに、同州の権益はスルタンが所有し、大型投資などの案件許諾も独占して握っている。


 王室の権限を縮小したいマハティール首相と王室統治の「ジョホール州・ファースト」を提唱する同州スルタンとは、

長年の因縁の間柄。また、スルタンはナジブ前首相と懇意の仲だ。

同プロジェクト中止を目指すマハティール首相の狙いは、憲法上、国の統治者となっているこうした王室絶対主義の

修正への民主化加速への狙いも影にはある。


 一方、中止した東海岸鉄道プロジェクトとともに、フォレスト・シティ計画は、習近平政権が進める「一帯一路」に

関連する中国の大手企業による開発だ。


 2016年3月の同計画起工式後の同年末発行の「瞭望週刊」(新華社発行)では、中国政府の幹部が同計画は

一帯一路戦略の「模範的プロジェクト」と絶賛。碧桂園集団の朱剣敏副総裁も「一帯一路戦略上の計画」と公言した。


 碧桂園は、年商1500億元(約2兆5500億円)、社員約10万人の中国を代表する企業で、中国政府の

バックアップのもと、森林都市計画が進められており、中国からの大量移民による「植民地100万都市構想」で

中国人を100万人、マレーシアに定住させる思惑が根底にあるといわれている。


 しかし、この1000億ドル計画も、中国政府が昨年、不動産投資目的の海外への外貨送金を禁止したため

頓挫するのでは、とささやかれ始めている。


 中国人のフォレスト不動産購入者は、手付金は支払ったものの、購入資金の送金がその後できなくなり、しかも、

購入を断念するとペナルティーとして、「購入価格の30%」を開発業者の碧桂園に支払うことが義務付けられており、

契約解除で支払済みの預託金の返済を求めることすら、困難になっているという。

 

そのような状況下で、一部完成しているフォレストの高級マンションは、買い手があっても誰も住まず、よって

商業施設もオープンしない悪循環に苛まれているという。

 

 中国国内には、完成しても人が住めない「鬼城(ゴーストタウン)」が散在して社会問題に発展している。

このままいけば、森林都市計画は、海外での中国「鬼城」が“輸出”された初のケースになる可能性も出てきている。


 一方、中国の華人にとっては、独裁国家の中国ではあり得ない民主選挙で選ばれた政権交代で、政策が180度転換し、

中国による投資がマレーシアでは歓迎されない予想外の結果に戸惑っている。

皮肉にも、自らの行いが中国への反発を呼び、マレーシアでの政権交代を実現させたと痛感しているだろう。


 シニカルなレトリックを好むマハティール首相は「フォレストシティは、本当の意味で森になるだろう。なぜなら、

そこの住民はサルとヒヒ(汚い醜い人)で十分だからだ」と述べた。

中国の植民地計画は醜い、そう一刀両断する小国の老練宰相が大国を戒めるときが再び、来るだろう。

 

マレーシア、マハティール首相が都市開発の外国人物件購入を禁止 狙いは中国人投資家排除?