EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

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アフリカ難民たちの過酷な1食 ONE MEAL A DAY  / テロ組織が難民支援をねらう!? ~世界最大キャンプ閉鎖の裏で~

2017-10-18 13:42:44 | 民族・人種問題・宗教・人権問題(差別・迫害)

アフリカ難民たちの過酷な1食

ONE MEAL A DAY

2017年10月17日(火)18時30分  Newsweek   Photographs by Chris De Bode
 
 

カメルーン北部のメメで避難生活を送る難民の食事。欠けたボウルには米粒と乾燥豆がほんの少し載せられているだけだ

<アフリカ中央部のチャド湖周辺地域では、270万人以上の難民がイスラム武装組織に家を追われ、日々の最低限の

食事にさえ困窮するアフリカ最大規模の人道危機が発生している>


想像できるだろうか、1日1食で生きることを。アフリカ中央部のチャド湖周辺地域に暮らす多くの難民にとって、それは紛れもない

現実だ。ナイジェリア、カメルーン、ニジェール、チャドの4カ国にまたがる同地域では、アフリカ最大規模の人道危機が起きている。


ナイジェリア北部から始まったイスラム武装組織ボコ・ハラムと政府軍による紛争は国境を超えて拡大し、周辺では270万人以上が

家を追われた。日々の最低限の食事にさえ事欠く人々は、700万人以上に上る。

 

サバンナの広がるワザ国立公園を抱えるカメルーン北部はかつて、冒険好きの旅行者に人気の観光地だった。だが今やこの地は

紛争と気候変動が重なり、深刻な食料危機に襲われている。


写真家クリス・デ・ボーデは英国赤十字社と共にカメルーンに渡り、破壊的な人道危機の現実をカメラに収めた。彼が注目したのは、

難民たちの食事。1日に1度ありつけるかどうかの食料は、あまりに少なく、あまりに粗悪だ。

国際ニュースで報じられることもめったにない、忘れられた人々の一皿は、彼らの苦境を静かに物語っている。

 

使い古されたスプーンは20歳の女性アミナの大切な持ち物。妊娠中の彼女は家を追われ、難民キャンプで暮らしている

 

ペースト状にしたピーナツ。天日で乾燥させ、味気ない主食の風味付けに使う。女性たちがピーナツを挽き、こねて、1年ほど保存できる状態にする。メメの市場でピーナツ1袋は25CFAフラン(約5円)で売られている

 

メメの露店で入手したトマト。紛争から逃れた難民たちは1日に1度の食事にありつければ幸運なほうだ

 

小さな魚の干物は、ゆでトウモロコシなどの主食の味付けに使われることが多い。メメの市場では7尾入った1袋が200CFAフラン(約38円)

 

味付けに使われた魚の骨の残り

 

6歳のアイチャドゥと4歳のイブラヒムのきょうだいは、ゴミ捨て場で見つけた古いイワシ缶でままごと遊びをする。彼らが缶詰の中身を食べられたのははるか昔のことだ


ペースト状にした赤トウモロコシの下には、マンゴーの葉から作った緑のソースが敷かれている。夫を殺され、4人の子供と共に難民キャンプに逃れてきた30歳のパルタ・アリはこの食事を下の2人の子供と分け合う。10代の2人のきょうだいの分はなく、彼らは毎日、村に物乞いに出掛けている


カメルーン北部はこのときタマネギの収穫期のはずだったが、メメの市場には傷んだ赤タマネギしか売られていなかった。1個10CFAフラン(約2円)


黄トウガラシ。1日1食の味気ないゆでトウモロコシの食事が基本的なカメルーン北部では、野菜はめったに手に入らない貴重品だ。こうした食生活は子供の慢性的栄養失調につながり、心身の成長を阻害する


各種イモ類の葉を乾燥させたものは、主食のトウモロコシがゆの風味付けに使われる。地元市場では乾燥した葉がよく売られており、この袋は50CFAフラン(約10円)だった


難民は燃料になるまきを集めて売り、食料を買うための足しにする


刻んだオクラの一皿


ボウルに入った乳白色の液体は栄養食のスーパーシリアル。タンパク質を補給し栄養失調を予防するための緊急援助食だ


赤トウモロコシの実。周辺地域で戦闘が続いているため、武装組織が身を隠す恐れのある高さ1メートル以上の作物は栽培が禁じられている。爆発物の原料になり得る肥料の流通も規制され、雑穀やトウモロコシなど多くの穀物類の生産の妨げになっている


黒目豆の入った小さな袋は、80歳のアチェの家に保存されていたもの。アチェは4人の娘とその子供たちと狭い家に暮らす。一家は故郷で襲撃を受け男たちが殺害もしくは連れ去られたため、女だけで逃れてきた。物乞いで1日1食を確保しようとするが、それすらかなわない日もあるという


ペースト状の赤トウモロコシに白米、刻んだマンゴーの葉を交ぜた食べかけの食事。58歳のラマタ・マドゥと6人の子供たちの一日分の食料だ。難民キャンプ周辺の家を物乞いして回り、施しの食料をかき集めている



これからペースト状に加工されるピーナツ


トウモロコシの皮の食事。食料が極端に不足しているため、くずも捨てずに口にする


<資料>アフリカを覆う「難民問題」の厳しすぎる現実 報道写真家が現地で体験したこと


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テロ組織が難民支援をねらう!? ~世界最大キャンプ閉鎖の裏で~

2017年10月10日(火)   NHK クローズアップ現代

世界の難民や国内避難民などの数は6800万人。難民危機が深刻な中、爆発的に難民が増加しているのが、アフリカだ。

そうした中、ケニアでは、世界最大の難民キャンプが「テロの温床になっている」として閉鎖され始めた。

国連機関UNHCRは、難民の自発的帰還を支援、多くの難民が内戦の続く祖国ソマリアに戻っている。

今回、取材班は、テロ組織の元メンバーにも接触、難民支援の物資がテロ組織に狙われている構図が明らかになってきた。

岐路に立つ難民支援の今を考える。

出演者

  • 瀬谷ルミ子さん (日本紛争予防センター理事長)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

 

テロ組織にねらわれる “難民支援”!?

NHKが接触した、あるテロ組織の元メンバー。“テロリストが難民支援をねらっている”という衝撃的な内容を語り始めました。


テロ組織 元メンバー
「テロ組織は、難民キャンプから支援物資を盗み、資金源にしていました。ただ難民のふりをすればいいんです。」

 

今世紀最悪“難民危機” アフリカ非常事態に…

世界の難民や避難民は、ここ数年急増。6,800万人を超えています。中でも今、最大規模の難民を抱えるアフリカが非常事態に。

2017年、自衛隊が撤収した南スーダンでは内戦状態が激化。200万人もの人々が難民となっています。

難民
「食料が足りない!」

 

一方、ケニアは、テロの温床だとして世界最大の難民キャンプを閉鎖すると宣言。国際社会に衝撃が…。多くの難民が、戦闘が続く祖国へ

帰らざるをえない状況になっています。


国連難民高等弁務官
「いまや世界中で難民が発生しています。国際社会にとって、大きな懸念となっています。」

 

日本も重要な役割を果たしてきた難民支援が、大きな岐路に立っています。

田中:世界各地で難民問題が深刻化しています。紛争・暴力・迫害によって強制移動させられた人たちは、2016年、世界で6,800万人にも

上りました。シリア難民を生んだ中東にならんで難民が急増しているのがアフリカです。世界の3分の1に当たる、およそ2,000万人の人が

故郷を追われています。こうした難民たちを受け入れているのは、ほとんどが周辺の国々です。その1つがケニアです。ケニアは隣国の

ソマリアから多くの難民を受け入れて保護してきました。

しかし、今、そのケニアにある世界最大規模の難民キャンプが支援半ばで閉鎖され始めています。

 

世界最大の難民キャンプ “閉鎖”に衝撃が…

世界最大規模24万人を抱えるケニアのダダーブ難民キャンプです。キャンプ閉鎖が決定されて以降、援助団体の撤退が相次ぎ、食糧の

配給も減っています。

キャンプ設置は26年前、隣国ソマリアでの内戦がきっかけでした。ソマリアでは当時の政権が崩壊し内戦状態に。国際社会が介入

しましたが、その後、長年にわたり混乱は収まっていません。多くの難民が発生し今も100万人以上が国外へ逃れています。

26年の人生のほとんどをキャンプで過ごしてきたファトゥマさんです。キャンプの閉鎖が決まり途方に暮れていました。

支援物資も減り、栄養状態が悪化。1歳半の息子を病気で亡くしました。残る3人の子どもたちをどこで育てればいいのか分からないと

言います。

ソマリア難民 ファトゥマ・アリ・アブディさん
「最近、食料が足りず、子どもたちの健康状態もよくありません。」

 

世界最大のキャンプ閉鎖 背景に“テロ組織”が…

ケニア政府が、ダダーブ難民キャンプの閉鎖に踏み切った大きな理由は、相次ぐテロです。ケニア国内では、ソマリアを拠点としISに忠誠を

誓うアッシャバーブによるテロが繰り返し起きています。ケニア政府は“難民キャンプがテロの温床になっている”と見ているのです。

テロリストたちは、難民キャンプでどのような活動を行っているのか。その一端を知る人物に接触する事ができました。

3年前までテロ組織アッシャバーブにいたという男です。

テロ組織 元メンバー
「これが私です。こっちは友人。」

男は“キャンプの近くにあるケニア軍の基地への襲撃を繰り返していた”と言います。

「ダダーブ難民キャンプに行ったことがありますか?」

テロ組織 元メンバー
「3回は行きました。難民キャンプに紛れ込むには、ただ難民のふりをすればいいんです。

テロ組織は、そこで難民向けの支援物資を盗んでいます。」


テロ組織は難民への支援物資をかすめ取り、資金源にしているというのです。


テロ組織 元メンバー
「テロ組織のメンバーは難民キャンプに400人以上はいます。商売を装って転売しているため、見つけるのは簡単ではありません。

そうやってテロ組織は資金を稼いでいるんです。」

 

相次ぐテロに打つ手がなく、難民キャンプ閉鎖に踏み切ったケニア政府。難民問題の責任者は、国際的な非難の高まりに対し

“先進国も安全保障上の理由から難民を制限している”と反論しました。


内務省 難民問題責任者 ムウェンダ・ジョカ氏
「テロリストと関係の深いキャンプから閉鎖しています。“難民のふりをした者”が脅威となるなら、対処するしかありません。

ヨーロッパで国を守るために難民を受け入れなかったことと同じです。」

 

閉鎖の動きが広がれば、積み上げてきた難民対策が破綻しかねない。国連は、このキャンプの閉鎖を重大な岐路と捉えています。


国連 ソマリア難民問題特別大使 モハメド・アブディ・アフィ氏
「ケニア政府に難民キャンプの閉鎖を考え直すよう依頼しましたが、まだ結論が出ていません。今の時点では(ソマリアは)多くの難民が

帰れるような状態ではないのです。」

 

世界最大のキャンプ閉鎖 さまよう難民はどこへ!?

総面積50平方キロメートル。5つのエリアに分かれるダダーブ難民キャンプ。閉鎖はエリアごとに進められています。既に閉鎖されたエリア。

テロリストの利用を防ぐためテントは破壊されていました。

学校も閉鎖。多い時には2,500人の子どもたちが学んでいました。キャンプが閉鎖されたあと、難民たちの取り得る選択の1つは、

ケニアへの定住です。しかし、現実には容易ではありません。キャンプの閉鎖を前にナイロビ市内に移り住んだソマリア難民の女性です。

言葉の壁で賃金の安い仕事にしか就けず、厳しい生活を送ってきました。更にケニアでは、相次ぐテロでソマリア系住民への排斥感情も

高まっています。女性も突然、警察から尋問を受け、これまでに3回拘束されたと言います。

ソマリア難民
「拘束されたとき『お前をソマリアに送還するぞ』と脅されました。今も怖いです。隠れるように暮らすしかありません。」

 

世界最大のキャンプ閉鎖 危険な祖国への“帰還”

ケニアでの定住も難しい場合、残された道は祖国へ戻る事です。今、国連は難民キャンプからソマリアへの自発的な帰還を支援しています。

帰還の意思を確認した上で当面の生活資金として、およそ2万8,000円を支給。更に安全な帰還のため、飛行機を用意しています。

その中に人生の大半をキャンプで過ごしてきたファトゥマさんの姿がありました。3人の子どもを育てるため、キャンプが完全に閉鎖される

前に帰還を決断したと言います。


ソマリア難民 ファトゥマ・アリ・アブディさん
「帰ったあとのことは、何も分かりません。(子どもたちにとって)生活が少しでも良くなれば、と思ったんです。」


難民たちの祖国ソマリアでは、今も内戦が続いています。生まれてすぐに祖国を離れたファトゥマさんにとって26年ぶりの祖国は、

ほとんどなじみがありません。これまでにソマリアに戻った難民は7万人。国連が比較的安全だとしているソマリア南部の町キスマヨ。

帰還した難民の様子を映した映像です。

長引く内戦で、町には学校や病院さえ整っていません。水や食糧が不足した状態も続いています。国連の支援を受け、部屋を借りて生活を

始めたファトゥマさん。

ソマリア難民 ファトゥマ・アリ・アブディさん
「祖国に帰れたことは幸せだと思いますが、井戸には水がなく、生活していくお金も十分にはありません。」

生活への不安、治安への懸念、祖国に戻った事を後悔し始めていました。

「まだ難民キャンプに残っている人に言いたいことはありますか?」

ソマリア難民 ファトゥマ・アリ・アブディさん
「まだキャンプを出ない方がいいと思います。」

「どうして?」

ソマリア難民 ファトゥマ・アリ・アブディさん
「ソマリアに帰ると、支援は受けられません。彼らに、このつらさを味わってほしくないですから。」

 

難民支援ねらうテロ組織 世界最大のキャンプ閉鎖

ゲスト 瀬谷ルミ子さん(日本紛争予防センター理事長)

テロの温床となっているという懸念も分かる一方、24万人もの人が暮らす生活の場をそういう理由で閉鎖していいのかと

いう疑問もあるが?

瀬谷さん:ダダーブキャンプ自体、もう10年以上前から“このままどれだけの期間、維持するのか”という議論がケニア国内では起きて

いました。難民がたくさん流入してくる国では、国内の治安問題とか経済問題が悪化した時に難民をその原因としてスケープゴート化する

事もあるんです。そうやって国民の不満を自分たち政権から反らすと。なので、本来は難民たちが元いた国に帰還するなり、自分たちの国で

定住するようにきちんと道筋をつけた支援をしておくべきなんですが、あるタイミングで突然、難民キャンプの閉鎖という事をしてしまって、

強制的に帰還させてしまうと、やはり難民が、また元いた国でまともな生活を送れず、問題が根本的に解決しないという結果を生む事も

ありえます。


元の国に戻すという政策には、どういう問題が出てくるのか?

瀬谷さん:多くの場合、よほど本国で支援する身内がいたりしないかぎり、多くの難民は帰還しても、また国内避難民化する傾向があります。

国内避難民への支援というのは、難民支援に対してやはり限られているので、支援物資が限られていて、生活がより苦しくなる。

もう1つ問題なのが、国内避難民になってしまうと国際社会の注目も低下する。そして、内戦状態の国にまた戻らなければいけないとなると、

メディアなどもなかなか避難民の生活にアクセスしにくくなる。そうなる事で避難民の抱えている問題というのを我々、外部の人間が知る

機会が更に限られてしまうという事が一番大きな問題だと思います。


田中:難民問題を解決するためには、避難していた国に残る、あるいは祖国に戻る以外に、もう1つの道があります。

それは、緊急性の高い難民を先進国などで受け入れる“第三国定住”と言われる道です。ただ、こうした第三国定住による最大の受け入れ

国だったアメリカでは、トランプ大統領が入国禁止令を発表。受け入れを拒否される難民が相次いでいます。こうした「自国第一主義」とも

いうべき動きはヨーロッパにも広がり、難民の受け入れを制限する動きが相次いでいます。

 

自国第一主義の広がりが、難民支援に陰を落としている現状をどう見る?

瀬谷さん:難民を受け入れるとなるとデメリットばかり、皆、注目されがちだと思うんです。テロリズムとか、職が奪われるとか。

ただ、難民を受け入れる事で、逆に経済が活性化したり、難民たちが持つ文化を生かした新たな産業育成にもなるというメリットもあります

ので、きちんと受け入れる国も難民を受け入れる事で、どのようなメリットが生じるかというのをきちんと認識したうえで国民にもそれを広く

共有する、そういう姿勢が大事だと思います。


田中:更にアフリカの難民支援が岐路に立っている事はお金の流れからも見えてきます。今回、私たちは国連の難民支援を担当する

UNHCRのデータを独自に入手しました。こちらは、難民支援のためのお金が毎年どれだけ投入されたのかを地域ごとに集計したものです。

毎年の変化を見ていくと、中東でシリア難民が大量に発生したのを機に、2013年からアフリカへの支援額を中東への支援額が上回って

います。必要な額に対してどれだけ集まったか、その割合を見ますと、アフリカは5割を切っています。


アフリカの支援の現状を、どう捉えているのか。UNHCRのトップである国連難民高等弁務官に話を聞きました。


国連難民高等弁務官 フィリッポ・グランディ氏
「何とかしなければいけません。アフリカの難民支援の水準が他の地域よりも低いことはあってはならない。それでは、難民の受け入れ国の負担は解消できません。それどころか、負担はますます大きくなるばかりです。」

 

なぜ、アフリカへの支援が中東やヨーロッパに比べて不足しているのか?

瀬谷さん:やはり支援国は、自分たちの国により近い地域での難民問題が自国の安全保障に直結するので、そちらを優先的に支援する

傾向にあります。例えば、ヨーロッパの場合はシリア難民、イラク難民が実際、自分たちの所に流入してますので、そこの安定化や

難民支援に優先順位を置く傾向があります。アフリカの中でも、例えば、南スーダンのように今、国際的に危機が注目されてる地域に

対しては比較的支援が集中するんですが、それ以外に南スーダンの前に難民問題が深刻だった国というのは、やはり優先順位が下がって

しまう。そうなると、本当だったらあと5年10年難民問題の解決に支援が必要なところを、いきなり打ち切られてしまう、もしくは半額に

なってしまう。そうなる事で難民の置かれる状況が更に困窮してしまって、難民問題の悪化が急速に起こってしまうという事にもつながります。


(支援もある程度分担して、継続的にやっていく必要がある?)

そうですね。支援国間での支援調整ですとか、急激に支援がなくなる国が発生しないような工夫が必要だという事になります。

 

そのアフリカでは、ソマリア以外にも難民が増え続け、危機的状況にある地域があります。そこで難民支援の新たな打開策を模索する取り組みを

追いました。

 

南スーダン 難民急増 100万人超で支援は

アフリカ東部の国ウガンダです。日本の自衛隊が撤収した隣国の南スーダンから1年で100万人を超える難民が押し寄せています。

難民
「食料が足りない!」

難民
「明日じゃなくて、今、必要なんです!」


ここで活動するUNHCRの職員、辻井萌子さんです。大きな岐路に立つ難民問題に打開策を見つけたいと模索を続けています。

UNHCR職員 辻井萌子さん
「何が必要ですか?」

難民
「子どもを育てるために働きたいのです。そのための支援がほしいのです。」

辻井さんたちが進めているのは、難民が自立した生活を送れるよう支援する事です。現在28万人が暮らす居住区。

難民が割り当てられた土地に家を作り、畑で作物を育てながら生活しています。

育てた米や野菜を地元の住民に売る事で収入を得てもらい、地域にも活気をもたらすのがねらいです。

更に辻井さんたちはウガンダ政府と協力し、地元の住民に難民が移り住む土地の提供を呼びかけ、定住につなげようとしています。


地元住民
「あっちに広い土地がありますよ。」


住民たちも難民が土地を活用する事にメリットを感じ始めています。


地元住民
「ここは今は誰も使っていません。難民の人たちに使ってもらえれば、土地も耕されていいと思います。」

UNHCR職員 辻井萌子さん
「難民がここで暮らすことは、どう思いますか?」

地元住民
「たくさんの人がいて、にぎやかですね。」


しかし、こうした自立支援の取り組みで、すべてをカバーできるわけではありません。内戦の激化に伴って増えているのが、親を亡くした

孤児や内戦で夫を亡くした女性たち。難民全体の9割に上る女性や子どもにいきなり自立を促すのは難しく、従来型の支援もやめるわけには

いかないのです。


南スーダンからの難民
「夫がいない中で、私1人でやっていけるのか不安です。」


難民対策が大きな岐路に立つ今、新たな支援の形を作る事はできるのか、模索が続いています。


UNHCR職員 辻井萌子さん
「十分な支援を行き渡らせるのが難しいチャレンジだなと思います。国際社会の注目が必要になってきていると思います。」

 

岐路に立つ難民支援 “周辺国”がカギに

田中:このように難民が発生している周辺の国で自立を図るやり方を評価する専門家もいます。欧米などで受け入れるよりもコストが

抑えられるからです。


東洋英和女学院大学大学院 滝澤三郎氏
「今、ヨーロッパで起こっているように、大量の難民が来た場合のさまざまなネガティブなことを考えれば、難民の発生する(国の)周辺国で

国際社会の支援を受けつつ難民を保護してもらう。そこに経済学的な発想を持ち込んで、難民の持つ力、いわば労働力を使って難民の

自立をはかる。そうすることで(難民を受け入れてきた)先進国の負担も減る。今まで使ってきた同じお金で人命を何十倍も救うことができる

メリットがあります。」

 

南スーダン難民急増 100万人超で支援は

周辺国で自立を促すという事だが、100万人という膨大な難民に対応できるのか?

瀬谷さん:アフリカの中で移住する人たちの中で、難民や避難民って全体のたったの14%しかいないんです。残りの86%の人たちは、

よりよい生活や教育を求めて自らの意思で移住する人たちなんです。なので、難民キャンプを今すぐなくす事は難しいとは思うんですが、

難民の人たちも5年10年20年、宙ぶらりんの状態で難民キャンプにただ居続けるよりも、どこにでも通じるスキルというものを早い段階で

身につけて、どこでも自分たちの意思で移住できるような選択肢を得るという事も必要だと思います。

 

日本は難民支援で大きな役割を果たしてきたが、今できる事は何か?

瀬谷さん:やはり日本は戦後復興を劇的に成功したという事で、アフリカ地域から希望をもたらしてくれる存在だと見られる事もあるんです。

今、破綻国家と呼ばれてるような自分たちの国を、日本と同じように復興できるんじゃないかと。なので、日本は先進国の中でも日本だけが

持つ、その歴史的な価値というものをもっと生かして、日本の中立性とか、復興の経験のノウハウをアフリカの問題で苦しむ地域に支援して

いくという事が必要じゃないかと思います。

 

相次ぐテロや先進国の内向きの意識によって、今、この時間も多くの難民が行き場を失って、命の危険にさらされています。

国際社会の関与がもう一度、戻ってくる事が必要だと思います。