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テンセントに監視の目、中国政府の脅威に。 SNS「ウィーチャット」の普及で反政府活動を警戒

2018-07-11 14:07:42 | 中国・中国共産党・経済・民度・香港

テンセントに監視の目、中国政府の脅威に

SNS「ウィーチャット」の普及で反政府活動を警戒

2018 年 7 月 9 日 14:38 JST  THE WALL STREET JOURNAL

 【深セン(中国)】スマートフォンアプリ「微信(ウィーチャット)」を開発する中国の テンセント

ホールディングス にとって、アプリの普及率の高さが新たな難題を生み出している。政府による監視の強化だ。


 10億人を超える利用者を有するウィーチャットは中国で近年、個人や企業、組織の主要なコミュニケーション手段

となっている。その結果、テンセントは世界有数のIT(情報技術)企業と肩を並べる水準にまで成長し、今や国家を

代表する企業となっている。しかし一方で、国家の通信を厳しく統制してきた中国共産党にとって脅威にもなっている。


 中国のITコンサルタント、マシュー・ブレナン氏は「テンセントの事業と政府は本質的に相いれないものだ」と

指摘する。


 ウィーチャットはテキスト送信、請求の支払い、娯楽コンテンツのストリーミング視聴、ゲーム、ニュースや

意見の共有などに使用されている。しかしウィーチャットに詳しい関係者によると、中国の規制当局は

ウィーチャットを使用して「偽ニュース」や反政府的な発言が拡散したり、反政府活動の隠れみのに偽の

オンラインIDが使用されたりしていることを主に懸念している。

 

 テンセントは法律上、ニュースフィードなどのプラットフォームに違法コンテンツが入り込まないようにする

責任があり、それには「国家の名誉と利益」を脅かしたり、「国家の団結」を損なったりする内容のものも含まれる。

また中国の新しいサイバーセキュリティー法では、企業にウェブプラットフォームの違法コンテンツを

取り締まることを義務づけており、同法が昨年施行されて以来、テンセントは少なくとも2回は法律違反で

罰せられている。


 規制当局がやり玉に挙げているのはウィーチャットだけではない。テンセントはゲームやモバイル決済でも大きな

存在感を示しており、昨年は同社で最も人気のモバイルゲームが国営メディアによってその依存性が「有害」だと

批判された。


 この件について、テンセントはコメントを差し控えた。中国の国家インターネット情報弁公室はコメントの

求めに応じなかった。


ウィーチャットは政府に見られている

 ウィーチャットは同社のプラットフォームが大規模なグループの組織化に利用されないようにする措置を

講じている。中国が2009年に フェイスブック やツイッターなどの欧米のソーシャルメディア(SNS)

プラットフォームを締め出したのも、それが理由だと考えられている。正式な理由は通知されなかったが、

それに先んじて、国営メディアはSNSが国内の少数派イスラム教徒の不穏な動きをあおったと非難する

報道を流していた。


 ウィーチャットでは、チャットグループは500人までに制限されており、グループの人数が100人に達したら、

新しいメンバーのアカウントを国有通信会社の認証済みの携帯電話アカウントにひも付けなければならない。


 中国でウィーチャットは政府におおむね監視されていると見られている。中国の活動家らによると、アプリで

非公開だと思っていた発言について当局に質問されたことがあるという

 

  テンセントは、ウィーチャットのメッセージをサーバーには保存しておらず、当局はアクセスできないと

説明している。しかし、メッセージはフェイスブックのSNS「ワッツアップ」のように暗号化されていない。

事情に詳しい関係者によると、テンセントはメッセージを保存することができ、それを警察の要請に応じて

引き渡すことが可能だという。


 さらに、政府がウィーチャットのデータにアクセス可能だと見なされているだけでも、海外事業の成長の

妨げになると同社に近い関係者は話す。フェイスブックなどの米IT企業も、顧客データの利用のようなさまざまな

問題で政府からの要請をかわすのに苦慮している。


 テンセントの競合である アリババ・グループ ・ホールディングをはじめ、中国の大手IT企業はいずれも政府の

監視に直面している。しかし、ウィーチャットのSNSとしての役割から、テンセントにはとりわけ厳しい目が

向けられている。


 香港科技大学の丁学良・社会科学教授は「アリババは人々が商品を売買する単なる消費者サービスだ」とし、

「テンセントは違う。同社にはプロパガンダや情報を拡散する役割がある」と述べた。

 テンセントの馬化騰CEO 


政府対応に忙殺される馬CEO

 政府の監視が厳しくなるにつれ、テンセントの馬化騰(ポニー・マー)最高経営責任者(CEO)は規制当局との

渉外役を担うようになっている。現在46歳の大富豪である馬氏は共産党員ではないが、党が厳しく統制する年1回の

政治会合、全国人民代表大会(全人代)に積極的に参加している。


 テンセントに近い関係者によると、馬氏をはじめとする幹部は政府の要求対応に費やす時間が増えているという。

取締役会では、規制の変更などテンセントの製品やサービスに影響する可能性のある措置が頻繁に話題に

上っているという。


 「彼は内向的だが、しなければならないことを受け入れている」。テンセントの幹部の1人は馬氏が政府高官への

対処で果たす主導的役割についてこう述べた。また、馬氏はむしろ新製品やサービスの開発にもっと没頭したがって

いるのだとも指摘した。この件について、馬氏はコメントを差し控えた。


 馬氏は今年3月、全人代の無数の責務に追われ、会社の通期決算発表の延期を余儀なくされた。米企業がCEOの

政治会合出席による不在を理由に同様の措置を取ることは想像しがたい。


 馬氏は会社に照準が向けられた際も迅速に行動している。共産党の機関紙、人民日報は昨年、テンセントのゲーム

「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」に関する社説を掲載し、夜遅くまでプレーしていることが原因で子供が

学校で居眠りする事態が生じていると酷評した。これを受け、テンセントの株価は香港の証券取引所で

3%以上下落した。


 そこでテンセントは18歳未満の子供のプレー時間を制限。馬氏は和解のために北京を訪れ、人民日報のオフィスで

同紙幹部と写真に収まった。その後、同社株は値を戻した。


 テンセントを長年追跡するアレート・リサーチの創業者リチャード・クレイマー氏は「同社は自分たちが規制当局の

意図を理解していることを暗に見せつけているのだ」と述べた。


 4万5000人以上の従業員を擁するテンセントは最近、総工費6億ドル(約663億円)の深センの新社屋に

移転を開始した。2棟の高層ビルが空中通路でつながれた未来的な建物だ。


 建築家は当初、重役室に大胆なプランを描いていた。戦艦の艦橋のようなガラス張りの中央の指揮所に馬氏や

幹部を配置しようと考えていた。

 しかし、それは駄目だと建築家は告げられた。多くの政府関係者がやって来るため、彼らの訪問を目立たないように

する必要があるというのがその理由だった。重役室は結局、ビルの高層階に配置された。

 


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