【社説】中国が抗議すべきは韓国のTHAADではなく日本のXバンドレーダー
2017/04/27 09:51 朝鮮日報
在韓米軍は昨日、慶尚北道星州郡の旧ロッテ・スカイ・ホテル・ゴルフ場に米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高
高度防衛ミサイル(THAAD)」に関連する必要な機材を搬入し、設置のための作業を行った。作業が行われたのは深夜
から未明にかけてだが、これはTHAAD配備に反対するデモ隊との衝突を避けるためだ。これに対して5月9日に投票
が行われる第19代韓国大統領選挙に立候補している進歩(革新)系「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は
「THAADの奇襲配備は韓国国民の自決権を押さえ込み、主権を踏みにじる暴挙だ」などと激しく批判した。
THAADはもちろん完全とは言えないが、現時点で北朝鮮の核兵器やミサイルによる攻撃を防ぐのに必要な最低限か
つ最善の防衛手段であることは間違いない。しかしTHAADそのものはさほど大掛かりな施設ではない。一般の路線バ
スサイズのレーダーにミサイル発射台が設置されただけのもので、実際にこれを動かす兵士もせいぜい100人程度。し
かも指揮官は大尉だ。ところがどういうわけかこの程度の配備をめぐって国全体がこれほど大騒ぎになっており、しかも
大統領への当選が有力視される候補者が「主権」という言葉まで持ち出して必死に反対している。過去に聞いたことも
ないような異常事態だ。もちろんその理由はただ一つ。「中国が反対しているから」というだけだ。実際に中国外交部(省
に相当)は韓国へのTHAAD配備を受け「中国の利益を守るため必要な措置を取るだろう」と激しく反発した。
中国は大韓民国の安全保障をめぐる主権に露骨に介入し、稚拙な報復を今なお本当に行っているが、これに対して
韓国の進歩勢力は「主権侵害」という言葉を使って抗議をしたことがあるのだろうか。有事の際には北朝鮮の核兵器や
ミサイルから韓米両軍の主要施設を守らねばならないが、それこそが最終的かつ本当に韓国の主権を守ることにつな
がる。ところがその主権を守るためのミサイル配備を主権侵害と言うのは完全に的外れであり、言い過ぎと言わざるを
得ない。
進歩勢力は環境影響評価が行われる前にTHAAD配備が行われたことも問題視している。もちろん必要な手続きを順
番通り進めることができれば結構なことこの上ない。しかし今は国の安全保障そのものが危機的状況にある。しかももし
今後THAAD配備が遅れ、次期政権が配備自体を最初から再検討するようになれば、韓米同盟は今後どうなってしまう
だろうか。韓国と米国の両政府としては環境影響評価も重要だが、それよりもまずは配備自体を完了させてしまえば、
最悪の状況だけは避けられると判断したのかもしれない。また実際にそうなった方が次の大統領の負担を軽くすること
にもつながるはずだ。文氏がこのTHAAD配備をもし本当に主権侵害と考えているのであれば、当選してから自らの責
任で配備の決定自体をなかったことにすればよい。
現在の韓半島(朝鮮半島)情勢は米中協力によって大きく動きつつある。北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョン
ウン)委員長も圧力を感じているのか、軽々しく挑発行動を取れないようだ。また進歩勢力は「韓国にTHAADが配備さ
れれば中国が協力しなくなる」と主張しているが、現状はそれと正反対の方向に動いている。しかも韓国は中国による
THAAD報復をさえ少しずつ克服しつつある。当初中国は「THAADレーダーの設置は中国を監視するのが目的」などと
主張していたが、これも単なる言い掛かりだった。中国が本当に抗議すべきは韓国に配備されるTHAADのような終末
段階のミサイル防衛システムではなく、前方の探知を目的として日本に配備されているXバンドレーダーの方だ。中国は
韓国を思い通り操ろうとすべきでなく、また韓国の進歩勢力も中国に同調すべきでない。
米国の情報機関は北朝鮮が6-7週間に1発のペースで核兵器を製造できる能力を持ったと判断している。このままで
はトランプ大統領の任期中に核弾頭が大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載され、米国西部のシアトルが本当に射程圏
に入るとの懸念が現実になるかもしれないのだ。このような状況では最低限の防衛手段であるTHAAD配備はもはや選
択の問題ではなく、それどころかむしろ追加で配備する必要さえ出てくるかもしれない。今後も韓米両政府は地域住民
に配慮して粘り強く話し合いを続け、環境影響評価にも誠意を持って取り組んでほしい。