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米「INF全廃条約」離脱なら、新たな核軍拡競争に火が付く

2018-10-24 02:03:19 | 核(軍事)・原発・非核化・制裁

米「INF全廃条約」離脱なら、新たな核軍拡競争に火が付く

Russia to 'Restore Balance' if U.S. Quits Missile Deal

2018年10月23日(火)14時10分  Newsweek  トム・オコナー
 
 

ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンダル」。INF条約違反になる後継ミサイルをロシアは開発している、とアメリカは批判してきた Russian Ministry of Defense


<トランプの離脱表明には、ロシアとの関係を強化しつつ軍備増強を進める中国への対抗意識も?>

ドナルド・トランプ米大統領は10月20日、冷戦時代に旧ソ連との間で結んだミサイル条約から

離脱する意向を表明。これを受けてロシアは、対抗上ロシアも新たな兵器の開発を進めていくと

明らかにした。


10月22日、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は記者団に対して、トランプが

1987年に米ソ間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を示唆したことについて

「世界をより危険な場所にしかねない」と警告した。INF全廃条約は、核弾頭および通常弾頭を

搭載し、射程が500キロから5500キロまでの範囲の地上発射型のミサイルの廃棄を定めている。


アメリカとロシアは、互いに相手がこの条約に違反して兵器の開発を行っていると非難してきた。

ペスコフは、同条約を離脱するという米政府の決定は、アメリカが条約で禁止された

ミサイルの開発に取り組んでいることを示している可能性が高く、ロシアも対応策を講じることに

なると語った。


ロシアの英字新聞モスクワ・タイムズによれば、ペスコフは「(条約離脱は)アメリカが今後、

公然とこれらの兵器の開発を行うつもりであることを意味している。そうなれば諸外国が

行動を起こす必要があり、ロシアとしてもバランスを取るべく対応せざるを得ない」と語った。


欧州諸国は軍拡競争への発展を懸念

INF全廃条約は米ソ間の緊張緩和の取り組みとして、1987年に当時のロナルド・レーガン米大統領と

ソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長によって締結された。しかし21世紀に入って、

ジョン・ボルトン現大統領補佐官(安全保障担当)などの保守派がアメリカの軍事力のさらなる

拡大を訴え、同条約の破棄を呼びかけてきた。そして2014年、米政府はロシアが新たな

巡航ミサイルシステムの開発を行い、条約を破っていると非難した。


ロシア側はこれを否定。だが米国務省は2017年、ロシアが開発しているのは核弾頭が搭載可能な

地上発射型巡航ミサイル「9M729」だと特定し、同ミサイルの射程距離が条約違反にあたると

改めて非難した。一方でロシア側は、アメリカがNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国に

配備しているミサイル迎撃システムこそが条約違反だと非難した。


ヨーロッパ諸国は、同条約が破棄されれば軍拡競争は避けられないと懸念している。

ドイツのハイコ・マース外相は10月20日、ドイツの当局者たちは「これまでロシアに

対して繰り返し、アメリカによる条約違反の申し立てに回答するよう促してきた」と声明で述べ、

今後は「アメリカに対して、同条約からの離脱が招き得る結果をよく考えるよう促していく」と

表明した。


中国「我々を離脱の理由にするな」
 

イギリスのギャビン・ウィリアムソン国防相はフィナンシャル・タイムズ紙に対して、

イギリスとしては「条約が維持されることを望んでいる。それには双方の当事者による努力が

必要だが、現在は一方がそれを放棄しようとしている」と語った。

ロシアはさらに断固たる反応を示した。ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は10月20日、

INF全廃条約は「国際的な安全保障と核兵器の分野における安全保障、戦略的な安定の維持の

ためにきわめて重要」なものだと主張。アメリカが離脱すれば「軍事技術面」での報復合戦に

つながりかねないと警告した。


INF全廃条約の締約国ではなく、ロシアとの軍事協力を強化しつつ独自の軍備増強を進めている

中国も、トランプの離脱方針に反対を表明。中国外務省の華春瑩報道官は10月22日の記者会見で、

同条約は「国際関係を円滑にし、核軍縮のプロセスを前進させ、世界の戦略的なバランスや

安定を維持する上で重要な役割を果たしてきたし、現在も大いに意味があるものだ。

一方的な離脱は多方面にマイナスの影響を及ぼすことになる」と指摘。


さらに「離脱する理由として中国を挙げるのは、完全な誤りだということを強調したい」とも主張。

「長年努力して築いた成果を関係国が尊重し、対話や協議を通じて条約に関する問題に慎重かつ

適切に対処し、条約からの離脱を考え直すよう願っている」と語った。


ボルトンは10月22日に訪露し、23日までにセルゲイ・ラブロフ外相やウラジーミル・

プーチン大統領とこの問題について討議する。