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左翼を論破する方法(前編)  掛谷英紀コラム

2019-10-10 11:33:15 | 思想・国家体制・脱中国・中国包囲網

左翼を論破する方法(前編)

2019年10月09日 13時32分     THE EPOCH TIMES 掛谷英紀コラム

2018年11月21日、米カリフォルニア州ロサンゼルスで開かれた政治集会ポリティコン(Politicon)に登壇した、作家で弁護士のベン・シャピーロ氏

 

日本の保守派には、頭の切れる論客らしい論客はあまりいない。しかし、英語圏には

左翼を次々論破することで知られる論客が何人かいる。

その代表格が、ジョーダン・ピーターソン(Jordan Peterson)とベン・シャピーロ

(Ben Shapiro)である。

 

ジョーダン・ピーターソンは1962年生まれで、現在トロント大学の心理学の教授を

している。臨床診療の経験も豊富で、過去にはハーバード大学で教鞭をとっていた

こともある。彼は、現代の左傾化した学問に対して、厳しい批判を繰り返している

ことで知られる。中でも、ジェンダー代名詞(男性、女性形以外の代名詞)の使用を

強制する条例を批判したことは有名である。

 

ラディカル・フェミニズムは、日本だけでなく北米でも猛威を振るっている(むしろ、

は欧米を追従しているに過ぎない)。それに対するピーターソンの分析は的確である。

フェミニズムは能力(competence)を尺度にした評価を全て権力(power)の問題に

すり替える。そして、能力が不足しているゆえに達せられないことを全て家父長制

(patriarchy)による抑圧のせいにして騒ぎ立てることで、自らの無理な要求を通す。

フェミニズムは人間を個人として尊重しておらず、男性・女性という集団の一員として

しか見ない。だから、個々人がどういう生き方をしたいかを無視して、結果の平等を

押し付ける。これがピーターソンの見立てである。現代のフェミニズム思想の核心を

ついている分析と言えよう。

 

おそらく、ピーターソンのことを知っている日本の読者はほとんどいないだろう。

しかし、彼がこれほど知られていない日本は、むしろ例外的な国である。2018年1月に

出版された彼の著書“12 Rules for Life: An antidote to chaos”(人生の12のルール: 混乱を

防ぐ方法)は、英語圏で300万部を超えるベストセラーになっている。また、韓国語訳も

既に出版されており、20万部を売り上げている。

 

この彼の著書は、題名から想像される通り、様々な人生訓を語る本だが、随所に左翼

批判が織り交ぜられている。以下に、その一部(翻訳)を紹介しよう。

 

「我々の社会は、自らを支える文化の解体が目的であることを自覚し公言している組織や

教育者に対してなぜ公的資金を投じるのか、私には理解できない。」

 

「極左活動家が大学の授業を偽装して、政治活動のために国から資金援助を受けて

いるのは明らかだが、もし極右活動家がこれと同じことをしたら、北米中の進歩主義者

たちは何も聞こえなくなるぐらい大騒ぎするだろう。」

 

ピーターソンの論客としての能力が最も際立ったのは、上述の著書出版後、英国の

チャンネル4に出演したときである。司会のキャシー・ニューマンは左翼思想の持ち主で、

番組の冒頭からピーターソンに敵意むき出しの質問を続けていた。

その流れで、ニューマンは「なぜ、あなたの自由な言論の権利は、トランスジェンダーが

気分を害されない権利に勝るのか」と問い詰めた。これに対し、ピーターソンは次の

ように切り返した。「思考するためには相手の気分を害するリスクを冒さなければ

ならないからだ。あなただって真理の追求のために、今ここで私の気分を害する

リスクを進んで冒しているだろう。なぜ、あなたにその権利があるのか。私はとても

不快だったけれども。でも、それがあなたの仕事だし、あなたのやるべきことだ。

あなたは私の気分を害するリスクを冒して、言論の自由を行使している。それで問題ない。

私に構わずどんどんやればいい。」絶句して暫く口がきけない状態に陥ったニューマン

に対し、ピーターソンは「一本取ったね」と一言。ニューマンも負けを認めざるを得

なかった。

 

もう一人の論客はベン・シャピーロである。彼は1984年生まれで、16歳でUCLAに入学、

20歳でハーバード・ロースクールに入学した天才である。弁護士資格も有しているが、

17歳からコラムニストとして活動しており、現在はデイリー・ワイヤーという

インターネット・メディアを立ち上げ、自ら「ベン・シャピーロ・ショー」のホストを

務めている。敬虔なユダヤ教徒で、常にヤームルカ(皿状の帽子)を着用している

ことでも知られる。

 

彼のモットーは“Facts don't care about your feelings”(感情で事実は変えられない)である。

左翼運動は、自分の感情が全てで、気に入らない事実は捻じ曲げたり、意図的に無視

したりする。彼はそういう左翼の姿勢を厳しく批判する論客の一人である。

 

ベン・シャピーロは米国全土で講演活動もしているが、日本と同じように米国でも

保守系論客の講演を左翼活動家が妨害することが常態化している。そのため、講演が

中止になる、あるいは厳戒体制下での講演になることも少なくない。

 

2018年10月、厳しい警備の中、南カリフォルニア大学で行われた彼の講演内容は興味深い。

彼は権利を“negative right”(否定の権利)と“positive right”(肯定の権利)に分類する。

そして、前者は政府に干渉されず自由に生きる権利、後者は他人を自分のために奉仕

させる権利と定義する。米国憲法が保障している権利は前者、左翼が求めるものは

後者であると彼は整理する。

 

彼は、講演の大半の時間を質疑応答に充てる。質問の順番は反対意見を優先させる。

そこで、多くの左翼がこれまでシャピーロに論戦を挑んでいるが、彼はそれを

ことごとく論破してみせている。“Ben Shapiro destroys snowflake” (ベン・シャピーロが

雑魚を粉砕)で動画検索をすると、そのシーンが多数見つかるので、英語ができる人は

是非観てほしい。そうした論客ぶりから、彼は米国保守層の若者に絶大な人気を誇って

おり、2019年1月にBetOnlineが発表した2020年の大統領戦勝者のオッズにおいて、

共和党の中ではトランプ大統領、ペンス副大統領に次ぐ3番手につけた。2024年の

大統領選の有力候補になる可能性もある。

 

彼はこれまで何冊かの本を書いているが、そのうちの一つに“How to Debate Leftists and

Destroy Them: 11 Rules for Winning the Argument”(左翼を論破する方法: 議論に勝つ

11のルール)がある。Kindleで出版された22ページの短い本であるが、そこで書かれて

いることは日本の左翼と議論するときにも参考になるものが多い。

次回は、その本に書かれた左翼を論破するための具体的方法を紹介したいと思う。

 

執筆者:掛谷英紀

 筑波大学システム情報系准教授。1993年東京大学理学部生物化学科卒業。1998年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。通信総合研究所(現・情報通信研究機構)研究員を経て、現職。専門はメディア工学。特定非営利活動法人言論責任保証協会代表理事。著書に『学問とは何か』(大学教育出版)、『学者のウソ』(ソフトバンク新書)、『「先見力」の授業』(かんき出版)など。

 


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