昨日に続き、今日もテレビ番組から。「解体キングダム」
(NHK)の画像を使って超高層ビルの解体技術を紹介する。
私が社会に出た半世紀前、その2,3年前に高さ147mの
超高層ビル、浜松町世界貿易センターが建設された(手前)。
K重工に入社した友人が通ったビルである。
普通、高層ビルの解体は、重機を屋上に挙げて毀しながら
次第に降りて来るという階上解体という方法をとる。周囲を
しっかりと足場とシートで囲い、落下物の安全対策を取る。
しかし、100mを超える高さの足場掛けは倒壊の恐れがある
ため禁止されている。そこで世界貿易センタービルの解体では
幾つかの新工法が採用されている。
主力は巨大なタワークレーン。まずはビルの中央を下まで貫通
する穴を開ける。これは削岩機(振動ドリル)による人力作業の
ため数か月を要する。ここが解体物の通路となる。
下から組み上げられない足場。2~3階分の高さの足場を
分割して地上で組み立てた後、クレーンで上部に固定する。
これが「吊り足場」である。
床の解体には新兵器「30度カッター」が活躍。当たり前だが
直角に切断すると落ちる。斜めに切断すると下には落ちず上に
吊ることが出来る。テストで30度がベストとなった。
地上階まで貫通した穴を通る大きさ(約3×7m)に切断し、
一枚ずつクレーンで下す。これも気長な作業である。
足場に乗り手作業で外壁サッシュを少しずつ解体した後に
残る鉄骨。これも穴を通る大きさにガス溶断されるが、外側
部分はバランスが悪い。揺れたら足場を毀し落下させる。
そこでタワークレーンが更に4台のチェーン式巻き上げ機を
吊り下げて微妙なバランスを取る。1本ずつの張り具合を確認
しながら慎重な吊り上げが行われる。誤操作防止で4色に塗り
分けらる。これも新兵器である。
この解体工事の責任者、その父親がこのビルの建設時の鉄骨
鳶(トビ)の親方だったという因縁。露になった鉄骨の肌を撫で
ながら「親父もこれに触っていたと思うと感慨一入」と語る。
こうして膨大な時間をかけて、まさに「安全第一」で超高層
のビルが解体されていく。来年解体完了した後に更に高いビルが
建設される。