★行政視察報告 甲賀市「行政サービス制限条例」とは、どんな条例か?
前号でお伝えしたように、10月17日~19日に目黒区議会のぼくが所属する企画総務員会は、滋賀県の栗東市、野洲市、湖南市、甲賀市の行政視察を行った。各市の視察目的に関しては、前号でお話した通り。
視察に参加した各会派の議員が、各市を分担して報告書をまとめた。
わが会派「無所属・目黒独歩の会」は、ぼくが参加したので、甲賀市を担当した。重要な点を簡潔まとめたので、ご覧ください!
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平成23年度企画総務員会 行政視察報告
甲賀市 視察事項「行政サービス制限条例について
平成23年10月31日
報告者 須藤甚一郎
行政サービス制限条例とは、どんな条例か?
今回の行政視察の最終日10月19日午前9:15から約2時間、視察事項である「甲賀市行政サービス制限条例について」の甲賀市の担当職員から説明を受け、その後に質疑・応答を行った。その概略を報告する。
報告に先立って、市議会の白坂萬里子副議長の歓迎のあいさつと甲賀市の概要の説明があった。甲賀市は、大阪・名古屋から100キロ圏内にあり、人口は9万4千人余、世帯数3万2千余、予算規模は平成23年度347億円余である。
行 政サービス制限条例とは、いったいどんな条例なのか。どの自治体でも、不況続き、失業率の上昇、倒産件数の増加などにより、税金の滞納、収入未済額は増加 の一方であり、大きな問題になっている。わが目黒区も例外ではない。甲賀市の行政サービス制限条例は、どのような条例であり、どんな効果があるのかを調査 研究した。
行 政サービス制限条例とは、市税(市民税、固定資産税、軽自動車税)の滞納者に対して、市が行っている数々の行政サービスを制限するという厳しい条例であ る。制限するのは、行政サービスの提供以外にも許可及び認可(補助金の給付、貸付・融資、財産の使用または許可、入札参加資格の付与)も制限対象になる。 全国の地方自治体でも、また極めて珍しい条例である。
甲賀市の行政サービス条例の全文はこうだ!
甲賀市の行政サービス制限条例の全文を紹介したあと、滞納債権対策、財源確保担当職員の説明と質疑・応答の様子をお伝えしよう。
甲賀市行政サービス制限条例の全文は以下の通り。
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甲賀市行政サービス制限条例
平成22年7月1日施行
(目的)
(特別措置の実施)
第2条 市長は、滞納者に対して、特別な事情があると認める場合を除き、規則で定める行政サービス(以下「行政サービス」という。)の提供又は許可及び認可(以下「提供等」という。)を行わない措置(以下「特別措置」という。)を実施することができる。
2 市長は、特別措置の実施について、行政サービスの提供等に係る条例、規則、要綱等の規定にその内容及び手続きを定めておくものとする。
4 市長は、特別措置の実施に当たっては、当該滞納者を公正かつ適正に取り扱わなければならない。
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条例施行と収納率アップとは関係ないというのだが・・・
市 の担当職員の説明によれば、近年は滞納者が増え収入未済額は増加の一方だったという。平成17年度:19億7千万円余、18年度:20億4千万円余、19 年度:21億円余、20度年:22億1千万円余、21度年21億4千万円余だった。しかし、22年度の7月から条例が施行されたのだが、22年度は、20 億8千万円余に減ったのである。前年度より6千万も減り効果抜群というべきだ。
そ こで、私は質疑のとき、「収入未済額が一挙に減り、収納率がアップしたのは、行政サービス制限条例とどのような関係があったと考えているか。やはり市民税 などを払わないと大変なことになる、と市民が考えたからなのですか?」と質問した。甲賀市の担当職員からは、まったく意外な回答が返っていきた。
「行政サービス条例の施行と収納率のアップとは、因果関係はありません。滞納者に対して、所管職員はもとより幹部職員も3人がひと組みになって、戸別訪問して、払ってくれるように説得するなど、滞納対策を徹底的にやたのが収納率アップになったと考えています」
それでは、行政サービス制限条例は、何の目的で制定したのか、という疑問が残る。担当職員の説明では「条例は、徴収目的ではなく、税金等に関しての市の姿勢、市民に対する公平性が第一の目的なのです」という。
改めて、条例の第1条を読むと、なるほど「第1条 この条例は、市税を滞納している者(以下「滞納者」という。)に対する特別の措置を実施することにより、市税の納付に関する意識の高揚を図り、税負担の公平性を確保することを目的とする」とある。
制限される行政サービスは、補助金、融資など39事業だ!
この条例制定の審議した際、市議会での質問に「生存権の侵害ではないか」といいうのがあった。しかし、市の説明は制限するのは「『生活に著しく影響を及ぼす事業を除く』ものとしており、生存権の侵害にはならない」としている。
滞 納すると制限される行政サービスは、現在39事業である。その内容は、特定不妊治療費助成金、木造耐震診断員派遣事業、住宅リフォームなどの補助金、小規 模企業者小口貸し付けなどに融資、市営住宅入居許可などの許可、競争入札参加資格、指定管理者の指定などである。今後も制限される行政サービスは徐々に増 えている予定だという。
なお、市長が特別な事情があると判断した場合、例えば災害、病気や倒産、解雇で収入なしなど、1年または2年の猶予期間があり、直ちにこの条例を適用されることはないという。
甲 賀市の行政サービス条例の第1条で定めているように、条例制定の第一の目的は徴収ではないとしても、市民にとって行政サービスが制限されるとなれば、やは り背に腹は代えられず、市の税金や使用料を払うことになり、収納率アップになるのは当然である。目黒区も参考にする点が多いにあるはずだ。
以上