須藤甚一郎ウィークリーニュース!

目黒区議会議員・ジャーナリスト須藤甚一郎のウィークリーニュースです。

583号 ガレ工芸品破損第3弾!真相究明で美術館長に事情を聞いた!なぜ、報告書がまだなのか!

2010-04-22 | 記 事
★ガレ作品破損事故第3弾!目黒美術館で館長らから事情を聴取!

目黒区美術館で開催されているエミール・ガレ展で、展示品の一部が梱包中に破損した事故の続報だ。

昨日(4月21日)午後、ぼくは同じ会派「無所属・目黒独歩の会」の仲間である梅原たつろう区議と一緒に、事故の真相解明のため、目黒区美術館を訪れた。で、目黒区美術館の田中晴久館長と目黒区芸術文化振興財団の斉藤事務局長と面談し話を聞いた。

話を聞く前に、ガレ展の展示場で、展示品のリキュールセットの10個のグラスのうち、グラスが1個破損したため、9個展示してあるのを見た。ガラスの展示ケースの横に「事情によりグラスは9点だけ展示している」旨を記したカードが貼ってあった。しかし、“事情により”とあるだけで、梱包中に破損する事故を起こしたことは、書かれていない。入場者は何の事情かわかるまい。

ぼくが前号の「ウィークリーニュース」で、美術館で2000円で販売しているカタログには、グラス10個がカラー写真に写っているのに、おかしいじゃないかと指摘した。また、共同通信が配信した新聞記事もそのことに触れた。そのため、昨日から“事情により”の説明文を書いたカードを貼りだしたわけだ。泥縄のやり方もいいところだ。

★事故現場は黒壁美術館ではなかった!担当課長が間違った説明!

田中館長の話を聞いたその結果、いくつかの新事実が判明したので、ご報告しておく。前号で事故の発生現場は、滋賀県長浜市の黒壁美術館で、運送会社「日通」が展示品を梱包作業中に破損したと書いた。教育委員会の荒牧企画調整課長から、ぼくと梅原区議は、そのように説明されたから、その通りに書いたのだ。

ところが、田中館長は面談中に、ぼくに向かって「須藤さんのブログには、ひとつだけ間違いがあります。事故の発生した現場は、黒壁美術館ではありません」といった。そこで、ぼくは担当の「企画調整課長から聞いた通り書いただけだ」といった。実際、そうだからだ。ぼくが間違ってのではなく、荒牧企画調整課長が、ぼくらに間違った説明をしたからだ。間違ったのは、企画調整課長だよ。

★こんなことでは指定管理者失格ではないのか!

目黒区美術館は、目黒区が指定管理者として指定した目黒区の財団法人・目黒区芸術文化振興財団が管理・運営しているのだが、その指定管理者を監督する立場である企画調整課長が、事故発生の現場すら正確に知らないなんて、あきれて話にならない。関係部署で事故の連絡さえ満足にとれていない証拠だ。目黒区は、いかに杜撰(ずさん)に指定管理者制度を導入しているか、その見本のようなもんじゃないか!

★事故発生の詳細は?報告書はまだ!ポスター、パンフに偽装疑惑!

では、グラスの破損事故が起きた現場はどこなのか?
田中館長の説明の概要は、つぎの通りだ。
破損したガレの作品リキュールセットは、黒壁美術館所蔵のものではなく、個人の収集物である。その個人収集家は、リキュールセット以外にも、今回のガレ展に数十点の収集品を提供したという。
目黒区美術館に運送するため、梱包作業が行われたのは、黒壁美術館ではなく、個人収集家の自宅近くの会社の会議室だったという。

ここで新しい問題がでてきた。
今回のガレの作品展のポスター、パンフレットには、「黒壁美術館秘蔵の名品初公開 エミール。ガレの生きた時代 近代生活のエレガンス」と印刷されている。これでは、誰だって展示されているガレの作品は、“黒壁美術館秘蔵”だから、黒壁美術館が所有の作品を信じてしまう。が、実際は個人所有の作品なのだ。なにやらブランド牛の“産地偽装”に似ているじゃないか。

実際には、会場に展示されているのは、ガレの作品だけではなく、同時代の何人もの工芸家の作品も展示されている。このこともポスター、パンフレットに書かれていない。
おかしな話だよ。

★阿修羅像を運搬した「日通」が、なぜ事故を起こしたのか!

事故を起こした梱包・運搬を請け負った業者は、「日通」京都営業所だ。田中館長によれば、昨年、東京国立博物館で阿修羅像が公開され、連日、超満員だったのは、まだ記憶に新しい。あの阿修羅像を梱包・運搬したのは、今回のガレの作品を梱包・運搬したのと同じメンバーだったという。
梱包現場には、目黒区美術館から学芸員が出張して立ち会った。

美術品の梱包は、安全にやるために、床に並べて行うのだという。数十点のガレの作品を会社の会議室の床に並べ、割れやすいガラス工芸品のため、作品を一つずつ、まず薄い紙でくるみ、衝撃を和らげるクッション材などを入れたダンボール箱に入れるのだという。
事故が起きたのは、そうした作業で、まず床に作品を並べたときに、なぜが作業員が、こともあろうに作品のリキュールセットをまたいだ。

そのとき、足で踏んづけるか、蹴飛ばすかして、グラスは破損した。破損したグラスは、壊れて8個の部分になった。
貴重な作品を梱包中にまたぐことなどあり得ないという。当然だ。素人の引越しのときだって、コップや湯飲み茶碗と梱包しているとき、またぐヤツなんているもんか。熟練した「日通」の梱包・運搬人が、なぜ、作品をまたぐなんてバカなことをしでかしたのか。
以上が、説明を聞いた事故の概要だ。

★事故報告書を待っている場合ではなく、聞き取り調査をせよ!

事故のこれ以上の詳細については、何ら説明できず、田中館長も斉藤事務局長も「まだ、日通からの事故報告書がこないし、立ち会った美術館職員の報告書も多忙のためできていないため、説明できない」というのだ。が、事故発生が4月9日、昨日現在で事故発生からすでに12日も経過している。
事故報告書を待っている場合ではなく、美術館と芸術文化振興財団が関係者に聞き取り調査をして、事故報告をまとめるべきである。そんなことさえできないのならば、指定管理者として失格だ。

事故を起こした「日通」の事故報告書は、いうまでもなく「日通」有利にまとめるわけである。企業が起こす鉄道事故、交通事故の報告書でもおなじことだ。時間が経てば記憶もあいまいになるから、立ち会っていた美術館職員の報告書を一刻も早くまとめるべきだ。本人にまとめさせるよりも、上司の責任者が聞き取り調査して、まとめるほうが事実関係がはっきりするものだ。早くやって、事故の顛末を発表すべきだ。
目黒区美術館のみならず、目黒区の信用にかかわることだ。

★保険は「ウォール・ツー・ウォール」方式で掛けた!

田中館長に保険についても質問して、説明を聞いた。
美術展の場合の保険は、通常「ウォール(壁)・ツー・ウォール」といわれる保険の掛け方だそうだ。つまり、作品のある場所から展示される場所まで、往復のすべての過程を含んで、保険の対象にした保険を掛けるのだ。当然、梱包、運搬の全過程が保険対象になる。今回のように、梱包作業中に事故が発生しても、むろん保険の対象になる。

しかし、今回、保険に入って、保険の掛け金を払ったのは、目黒美術館ではなく、梱包・運搬を依頼した「日通」である。
目黒区は、梱包・運搬料と保険の掛け金の合計金額を「日通」に支払うやり方だ。
事故が発生したとき、支払われる保険金額は、目黒区美術館と作品の所有者とが話し合って、1点ごとにいざというときの賠償金額を算定し、合計して、保険の掛け金を支払う。今回も賠償金額が決定すれば、保険会社から作品の所有者に保険金がしはらわれることになる。

★購入金額は3000万円ではないというが、課長は鑑定団か?

田中館長がぼくに「破損した展示品のリキュールセットの購入価格は発表していないのですが・・」といった。ぼくは、「ウィークリーニュース」の前号に購入価格は約3000万円を書いた。その金額は、荒牧企画調整課長がポロリといったからだ。ぼくが勝手にいうわけがない。
企画調整課長は、テレビの「なんでも鑑定団」鑑定人や骨董屋のおやじではないのだから、自分で鑑定するわけはなく、誰か関係者から約3000万円を聞いて、ぼくと梅原区議に説明したのだろう。

ちなみに、田中館長は「リキュールセットのグラスは、ガレが作った当時は、12個あったそうです。が、個人の所有者が購入したとき、10個だったそうです」といった。
まだ、事故処理が終るまで、何が飛び出してくいるかわからない。動きがあれば、お伝えする。(4月22日午後14:05更新)

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