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長期研修作文5クラスのブログです。

「私のおすすめの本」『まぐだら屋のマリア』    (マリア)

2016-10-06 19:13:40 | 日記
 
 『まぐだら屋(や)のマリア』という題名(だいめい)を聞いたら、何か思い浮(う)かびますか。なかなかなじみのない響(ひび)きかと思いますが、「マグダラのマリア」という名前を聞いたことのある方もいるかもしれません。そうでない方には、このタイトルに書かれている唯一(ゆいいつ)の漢字がちょっとしたヒントになれると思います。はい、はい、そのとおり、うどん屋・おすし屋・そして居酒屋(いざかや)の「屋」です。
 『まぐだら屋(や)のマリア』という小説に出会ったのは、1年前、キリスト教(きょう)に関連(かんれん)する日本文学について調べた時です。以前読んだ小説とタイトルが少し異なっていることに関心を持ち、読んでみました。本の題名がキリスト教と関係がある一方で、内容(ないよう)からすれば、キリスト教のことを全く知らない人でも読める作品だと言えるので、ここでは皆さんに『まぐだら屋のマリア』をご紹介したいと思います。
『まぐだら屋のマリア』(作者:原田マハ)は、2014年に出版(しゅっぱん)され、比較的(ひかくてき)新しい小説です。現代の日本を舞台(ぶたい)にし、社会的な問題(ハラスメント、引きこもりなど)を扱(あつか)っている作品です。
まず、簡単にあらすじをご紹介します。
東京の有名な料理店で修業(しゅぎょう)をしている25歳の主人公紫(し)紋(もん)は、店で起こった事件で、仕事と将来の夢(一人前の料理人になって、お母さんに美味しい料理を作ってあげること)をあきらめ、死ぬ場所を探そうとしてバスに乗り、「尽果(つきはて)」という不思議な名前のバス停(てい)で降ります。人生が終わるのを待つしかないと思っている紫(し)紋(もん)は、「尽果(つきはて)」にある「まぐだら屋(や)」という古い食堂で、魚を配達してくれるおじさん、克夫(かつお)と、食堂の料理を作っている心の優しく、美しい女性マリアに助けられ、店の手伝いをするようになります。そして、寒さの激(はげ)しい冬の一日、丸孤(まるこ)という、生きる目標を失った青年が「尽果(つきはて)」にたどりつき、紫(し)紋(もん)といっしょに同じ部屋で泊まることになります。それぞれ自分の過去を背負(せお)って、色々な傷を抱(かか)えている人たちの出会いの物語。お互(たが)い助け合ったり、支え合ったりすることで、自分自身の過去に立ち向かう勇気(ゆうき)をもらいます。小説の主なテーマとして、「生きること」と「死ぬこと」、「絶望(ぜつぼう)」と「希望(きぼう)」、「心の温まる料理と優しさ」があげられます。

この小説を読みたいと思ったきっかけは、キリスト教と関係のあるタイトルと登場人物の名前でしたが、読んでみたら、物語に描かれている人間の姿に魅(み)せられました。自分の気持ちを他の人から隠していながらも、実は話を聞いてくれる人、優しくしてくれる人を探そうとしている人間。人生をあきらめていながらも、生きる希望を見つけたいという気持ちをなくすことができない人間。
辛(つら)いことが繰(く)り返され、今の自分の人生はいくら暗く見えても、そして自分がしたことが一生許(ゆる)されないと思っていても、希望をなくさなければ、いつかきっと光が見えてきます。そう信じて生き続けることの大切さを、この小説は教えてくれると私は思いました。そこで、みなさんにも、『まぐだら屋のマリア』をおすすめします。