PRIMO信号処理研究所 / Synchro PRIMO Lab.

周波数測定、位相差測定に関する新しい数理。
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電力系統 50/60 Hz の「分界点」 in 新潟 / 長野

2020-12-11 09:46:09 | 信号処理

 日本の電力系統は, 50 Hz/60 Hz に分かれているのは周知のとおりですが、実際に現地におもむき、「ここで分かれている」という分界点を探しにいってきました。

 中部電力からは「混在地域」として公表されていますが、その中から長野県北部の「栄村」に着目しました。隣接するのは新潟県中魚沼郡の津南町(つなんまち)で東北電力(50Hz)の管轄です。 知りたかったのは「混在」がどのような形態で残っているかです。可能性のひとつとして、長野県松本地区(特に梓川上流エリア)のように、50Hzの発電所がありそこから供給されているのかとも。別の情報で、電柱ごとに 50Hz, 60Hz の表示がされているとのWeb情報もありました。

 現地訪問の1回目。 電柱ごとの区別は発見できず。村内(千曲川の南エリア)にある「志久見川第一・第二発電所」の音を聞いたところ、60Hzでした。もしかしたら村内は60Hz に統一されたのでは?と想像。 しかし6.6kV 系統の配電を追いかけると信濃川・千曲川方面から供給されている感が大きく、もしこれが正しいなら、近隣の配電変電所は、志久見川をわたった「宮野原発電所」しか考えられない。もしそうなら 50Hzとなる。

 さらに、志久見川の発電所は「中部電力」となっており送電線の行き先は「新・北信変電所」(長野市)でトランスの「音」はやはり 60Hz .途中の北竜変電所では周囲に 6.6kV を多数配電しておりました。

 現地訪問2回目。 奥志賀林道からアクセスし、「切明発電所(中津川系)」(ここは栄村、東京電力)に到着。ここから先の高圧線をおいかけると、中津川を経由し信濃発電所方面へ。 林道をくまなく見たところ、切明発電所から下ったところに、東京電力の電柱を発見・・・追跡すると津南町の境で、電柱は東北電力に。結局、この配電用 6.6 kV , 津南から来ているのか、切明からのお裾分けなのかは判別できずでした。とりあえず、ここは50Hzで確定です。

 ここまでの情報から、まだ検証はできていないのですが、 村内は東北電力からの 50Hz と考え、歴史的にはさまざまな変遷があったはずと考えました。そんな痕跡は無いかと探したら・・・ 

 小水力の発電小屋みたいな建物を発見。電力メータが二つあり、はっきりと 50Hz と書かれていました。そこからは 4線式3相で近くの集落にきていたのですが、ある電柱で切り離され、そこから先には中部電力の配線がきていたのです。また・・・謎。

 次の仮説を思いついたのですが、村内を一部地域をのぞき60Hz で配電していたが、60Hz の一番近い変電所が、(おそらく)飯山変電所。 栄村までの距離がながすぎるため実際のところは不明。対岸の津南町は、ふもとの50Hz を中津川沿いに供給しているが、中津川沿いの栄村は元々 50Hz のようですが、何せ山が深く、どのようなルートで 6.6kV を配っているか不明。

 栄村役場のあるエリアは、千曲川沿い・国道沿いに比較的太い 6.6 kV が2回線みえています。なのでここは 60Hz ではないかと思いますが自信なし。しかし千曲川から信濃川に変わる場所を、長野県から新潟県に移動しても、配電線はシームレス・・・ならば、栄村役場付近は50Hzということに。

 さらに調査していて・・・停電時、東北電力の発電車が電力供給、という記事があり。発電車を配置したのが、宮野原発電所のすぐそばのコンビニ。ここにも 6.6 kV が走っているのは知っていたので、この情報が正しいなら、この回線が栄村中心部・南部に供給されていることになります。

 あと、東北電力・東京電力・JR東日本の発電所が入り乱れていて、こちらも少々混乱中です。東京電力中津川水系での発電は15.4 kV のラインが存在するようですが、群馬県を越える前に「常時OFF」となっていました。この理由はおそらく、繋いでしまうと「ループ」が発生してしまうから? 新信濃発電所の周囲の配線がよくわからないのですが、JRからの送電は別の大容量幹線経由で送っていると考えると納得です。

訪問3回目。 泊まった宿の方から情報をいただきました。

 川沿い(北野川・志久見川の支流)の地区はほとんど50Hz です。しかし宿であった「北野天満温泉」は 60Hz でした。測定すると非常に綺麗な波形。先般の大停電の時も、周囲の60Hzエリアは関係なかったそうです。とするならば、配電元は、志久見川のどちらかに違いありません。宿の方がおっしゃるには、下流側の発電所から・・・だそうです。言われてみればそのあたりの配電線は太いものが敷設されています。

 やっとのおもいで、50Hz地区の詳細情報をみつけました。その直前ですが、村内の送電線を追いかけ回し、所々に見つける携帯電話の中継局などの受電設備から周波数を実地で調べたものとほぼぴたりでした。ここまで分かったあと、国土地理院の地図を丁寧に読むと・・・栄村は、電力系統的には、お隣の新潟県津南町と、川沿いに接続されています。住所は長野県でも東北電力からの供給になっています。先ほど説明した 60Hz エリアは、村内の発電所が 中部電力 60Hz のものなので、近隣には 60Hz を配電したみたいです。 しかし、国道117号沿いには、6.6kVラインが場所によっては4系統みえています。おそらく飯山変電所から川沿いに供給しているのでしょうが、栄村の県境付近では、東北電力からの50Hzは根をはっていた・・・というわけなのでしょう。

・・・ここで、当初の狙いが的中しました。実は 60Hz エリアの「末端」の波形をとってみたかったのです。

 今回訪れた「北野天満温泉」が条件ぴたりでした。まず、近くに大口需要家が少なく電圧が安定。周波数変化で、負荷変動による微細な振動がすくない。送電線は、野沢温泉・飯山市を経由し、長野市内へ。このあたりになると、多数の電力源がミックスされてきます。 結果・・・北野温泉では60Hz エリア全体の「周波数動揺」が綺麗に観測できました。