PRIMO信号処理研究所 / Synchro PRIMO Lab.

周波数測定、位相差測定に関する新しい数理。
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5点の値から周波数を求めるExcel計算式(別法)

2020-07-10 22:37:22 | 信号処理

 最近は、数式いじりが趣味みたいなこともあり、本ブログで好評をいただいている「5点の値から周波数を求める計算式」の別法を考えています。

 以前から気づいていた方法が1つあり、公表しようか論文で発表しようか迷っていたのですが、ブログで発表することにしました。 今回お話する方法は、Synchro PRIMO 法が基本演算とする「リサージュ外積」に「差分項」を代入するものです。

・ 元の信号波形を X[n] とします。 X[n]= A*sin(Ωn) のような形を考えてください。

・ Y[n] =  1/2 * ( X[n+1] - X[n-1] ) と差分 Yn を作ります。

リサージュ外積を求めます。(Ls1形式を使います)  下記 Ls_y, Ls_x は、リサージュ外積の性質により、定数となります。

 Ls_x = X[n]^2 - X[n+1]*X[n-1] ,  Ls_y = Y[n]^2 - Y[n+1]*Y[n-1] 

瞬時周波数 F (相対周波数形式)は次のようにシンプルな形となります。

 sin (2πF) = sqrt{ Ls_y / Ls_x )      

この方法は、5点を使うだけなら、オリジナルのSynchro PRIMO法よりも、少しノイズに強い挙動を示します。しかし弱点があって、「指数減衰」する正弦波に対しては正しい値とはなりません。かたや、オリジナル Synchro PRIMO 法は PRONY法の性質を受け継いでおり、指数減衰する波形に対しても正しい周波数を示します。

 指数関数形式に限定とはいえ、周波数一定のまま振幅が減衰する波形に対し、正しい周波数が計算できるのは、Synchro PRIMO 法の強みでもあります。今回説明した方法は「遅延」+「差分」を使用しています。まだ外乱・ノイズに対する挙動は調べていません。興味あるかたはシミュレーションしてみてください。

・・・ こんな形で、基本的な関数を「部品」にして、新しい方法を考えるのも面白いものです。

 

 

 


任意の波形の瞬時周波数定義

2020-07-06 23:24:00 | 信号処理

最近、脳内思考を楽しんでいるのですが、ノイズもあり・周期関数もあり・調波もあり・・・の波形の「瞬時周波数」をどう定義するかを考えています。

すでに判明している数理からも、調波が含まれる波形は、瞬時周波数はきわめて複雑な挙動を示すが、「基本周波数」が分かっていれば、1周期での平均周波数は一定。 となっています。

瞬時といっても、1サイクル未満の波形の瞬時が問題となる事例は少ないと思われますが、本ブログであつかう、PMUでは、1/2 , 1/4 サイクル単位で瞬時周波数が求められると「保安装置」の性能を一気に向上させることが可能と考えています。 Synchro PRIMO を使うと実現できそうなのですが、実際には、前処理のためのLPFや、部分的に使用する平均処理によって、「測定時間窓」と「レイテンシ」にどうしても制約がでてしまうのです。

・・・ こんな事を考えながら、次期バージョンの Synchro PRIMO PMU の基本設計をしています。

余談ですが:

 ・・・GPSで「時刻標準」を取り出す・・・これは、ほとんどの文献であたりまえのように書かれていますが、肝心な、「ADCサンプリング」クロックの精度・安定度に触れている文献は少数です。たとえば1ヶ月程度の長期運用をしていると、 周波数1ppm のずれがデータサンプル数で2.6サンプルのずれとなり、DFT方式PMUでは、TVEを明らかに悪化させるでしょう。運用でカバーできるといえばそれまでですが。しかし、装置コスト・校正コスト・メンテナンスコストなどを考えると、一般的な精度のクロックを、GPS からくる 1pps を上手に利用すれば、低コストなハードが利用可能になるでしょう。

 RoCof。系統運用の第一線では、この「周波数変化率」が重宝されており、障害発生時にはこのRoCof がいち早く反応します。次期Synchro PRIMO PMUでは、障害検の即時検知についても取り組んでみたいと思います。