フィンランド建築・デザイン雑記帳

サウナで使う、白樺の小枝の束(ヴィヒタ)とは?



フィンランドの長いサウナ文化には、昔からヴィヒタ(Vihta)と呼ばれる白樺の小枝の束を使う習慣がありました。
ヴィヒタには、精神的、そして実利的な効果があるといわれています。 
白樺の枝の束は、昔からフィンランド西部地域ではヴィヒタ(Vihta)と呼び、東部地域ではヴァスタ(Vasta)と呼んでいます。


「SAUNAKIRJA」 H.J.VIHEJUURI OTAVA 1940

写真:図はフィンランドでの「白樺の小枝の束」の呼び方の分布を示している。
真ん中の線を境に、西側(下側)地域が ヴィヒタ(Vihta)と呼び、東側(上側)地域では ヴァスタ(Vasta)と呼んでいる。



ヴィヒタを、使うか使わないかは入浴者の好みによるが、フィンランド人たちはヴィヒタのないサウナ入浴は塩のない食事だといいます。
ただ、公共サウナやアパートなどの共同サウナでは、ヴィヒタの使用が禁止されているところが多い。
これは、ヴィヒタの葉が落ちて、掃除など管理が煩雑になるという理由によるものです。

ヴィヒタは、新しい白樺の枝でつくります。
以前、フィンランドから帰国するとき、ヘルシンキ空港の売店でビニール製のヴィヒタを売っていたのを見たことがありますが、これはお土産品でしょう?
ヴィヒタは本物の木に限ります!
フィンランドでは、白樺の葉が落ちて無くなってしまう冬の間、夏の間に乾かし貯蔵しておいた乾燥したヴィヒタを、お湯に入れて戻して使います。
近年、市内のスーパーマーケットでは、冷凍保存したヴィヒタも見かけるようになりました。
 
白樺の枝が最良なのだが、近くに白樺の木がない場合には、他の樹種を使うこともあります。
フィンランドでは、そこいらじゅうに白樺の木があり、最も入手しやすい樹だという事が理由で、他の樹種でも一向にかまわないのです。 
南半球のオーストラリアやニュージーランドに移住したフィンランド人たちは、ユーカリや菩提樹の葉を使うこともあるようです。

ヴィヒタで用いる木の条件は、
・枝に葉がたくさんついていること。(葉が少ないと、枝で体を叩いているようになり痛い)。
・葉が柔らかな事。(体を叩いても、皮膚への刺激が強すぎないこと、肌にキズなどが生じさせないこと)。
・葉が落ちないこと。(体を叩いただけで、葉が落ちてしまうのはNG)。
・葉は、緑色で青々としていて新鮮、瑞々しいこと。
 など、など・・・

ヴィヒタを作る枝葉の条件などを基に、身の回りを探すと白樺以外にも適当な木が探せるかもしれませんね!





写真: 近くの公園を散歩していて見つけた菩提樹の木。
葉のかたちが白樺に似ていますね。 お釈迦様が、その菩提樹の下で悟りを開いたとされる樹木。 これで体を叩くと、何か良い事が起こりそうですね!




フィンランドで白樺でも最良なのは、ラウドゥスコイブ(Rauduskoivu)と呼ばれる葉の先がとがった種類のもので、枝は先が垂れていて、枝の先のほうは柔らかく、葉も丈夫なのだそうです。



写真: フィンランドでは、ヴィヒタに最良な白樺はラウドゥスコイブ(Rauduskoivu)という樹種だという。 写真のように葉の先端がとがったもの。

サウナではなぜヴィヒタが必要なのだろうか?
フィンランド人たちでも一言で答えるのは難しいと言います。 昔、ヴィヒタは魔法の枝のようなものだと考えられていました。 枝を振り回すことにより、悪魔を追い払う事や、幸せになるようにという願いなど、精神的な意味があったようです。
実利的な面では、サウナストーブに水をかけて発生する「熱の波」ロウリュを、枝を振り回して攪拌したり、ヴィヒタで肌を叩くことにより、ロウリュがより敏感に感じられるようになります。 
筋肉をほぐす、皮膚の新陳代謝を高め、発汗作用を活発にさせるなども重要な役割。
フィンランドでは、身体を洗う時にもヴィヒタを使い、身体をこすったりもします。 
白樺の葉は、バクテリアを殺したり、傷口を消毒し柔らかくする効果があるそうです。
僕の経験では、ヴィヒタの最大の実利的効用は、これで前を隠せるということだと思うのだが・・・。

このように、ヴィヒタには、様々な効果がありますが、現代のサウナ入浴での最大の役割は、実利的な面よりもサウナの雰囲気を演出することでしょう。
フィンランドでは、ヴィヒタの使用に関しては、特別なルールーはありません。 
他の人に迷惑をかけないように各人が各人の方法でヴィヒタを使えばよいのです。

フィンランドでは、ヴィヒタは個人の所有物だという考え方があり、自分のヴィヒタを他の人に貸すようなことはあまりありません。
また、一度使ったヴィヒタを次回のサウナで再び使うようなこともなく、以前は次のサウナを暖めるときの薪の一部として燃やしたそうです。





写真: 2009年に発行されたサウナの記念切手、5枚組の中の1枚。
Stamp design: Paive Vainionpaa




写真: 2009年に発行されたサウナの記念切手、5枚組の中の1枚。
Stamp design: Paive Vainionpaa
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