星になった勇者

2月20日、コスプレサークル「勇者屋」代表の片桐剛氏が、脳溢血にて亡くなりました。
45歳という若さでした。
本日2月24日に葬儀が執り行われ、友人たちに見守られながら
笑いと涙の中、彼は旅立っていきました。

「勇者屋」はサークルとは言っても、今や日本中から参加者の集まる
「となりでコスプレ博」や、AnimeJapanなどの公式なイベントでもコスプレスペースの
運用を依頼されるほど実行力のある団体で、恐らく関東在住のコスプレイヤー・
コスプレカメラマンなら絶対に一度はお世話になっていると言えるところです。

片桐くんは、まだ「コスプレ」という趣味がさほど市民権を得ておらず、
今ほど間口も広くはなかった90年代から常に頑張っており、
現在のコスイベントの基盤を中心となって作った人物だと言っても
過言ではないと思います。

実は、彼と私とはかれこれもう20年以上の付き合いのある友人でした。
知り合ったきっかけがコスプレイベントだったことは確かなのですが、
いつどこで、何のコスをしてて初めて会ったのかは、もう覚えていません。
気づいたら、イベント会場に行けばいつでも会え、一緒に遊び、踊ったり、
飲んで騒いだりできる友達でした。

いーかげんで、女好きで、かなりどうしようもない奴だったけど、
憎めなくて頼りになる奴。
そんな彼がメインMCを勤めていた、新宿の小さなイベントスペース
「絵夢」で毎週土曜日に開催されていたコスプレダンパ。

90年代は絵夢やHi-Timeなど、比較的小さな会場でダンパが盛んに開催されて
一気に盛り上がりを見せた頃。
私もアニソン・ユーロ・テクノを流行らせようと皆で一緒になって踊りまくり、
相当アホなイベントではお客さんとして楽しませてもらい、時には企画の
手伝いをさせてもらって一緒にやってきました。

そのうち新宿のミニマムな箱は次々と閉店を迎えてしまったけれど、
コスプレの文化は徐々に浸透していき、やがて現在のような撮影と交流が
メインとなる流れができていきました。

そしてその中で、数々のコスイベント主催として中心的な存在になっていたのが
片桐くんです。
面倒見のいい彼は基本的に様々な依頼は断らないし、誰かに相談されれば、
時間を削ってでも、親身になって耳を傾けて力を貸してくれる。

その彼の、本当に突然の訃報でした。

私は彼が亡くなる二日前の味の素スタジアムのイベントで顔を合わせて
挨拶を交わしており、その時は本当に普通だったのです。
会場内をあちこち歩き回って、参加者の方々を撮影して、スタッフの人たちと
普段通りの会話をしていて。

だから私は、余計に信じられませんでした。

まさか。
何で？
おとつい、あんなに元気そうにしてたじゃん。
相変わらずだったじゃん。
嘘だよね？？？

けれどその報せは本当で、時間が経つにつれて現実味を帯びてきて。
私は本当は今日の葬儀の日時も場所も知っていたし、残業しまくって仕事を
何とかしていれば行けたのに、行けませんでした。
その勇気がなかったのです。

いざ遺体と対面したら、冷静でいられる自信が全くなかった。
片桐くんの死を認めたくない。
遺体さえ目の当たりにしなければ、きっとそのうちまたどこかで会えるんじゃないかと
思ってしまう。
そんな期待を持ち続けたくて。
葬儀に行くのが怖くて……
彼の死を受け止められない私は、弱い人間なのでしょう……

でも葬儀に参列した古い友人たちからは、個人が「あそこまで弄られるのは見たことない」と
口を揃えて言うほどに笑いに溢れ、あたたかなお式だったという話を聞きました。
確かにお祭り男の彼は、悲しみの涙で見送られるのは絶対に嫌なのだろう、
むしろ自分が友人同士の縁を作り、繋がった人たちが同じ想いを持って
笑って送り出してくれる方が嬉しいだろうし、彼らしい。

今日の葬儀の明るい雰囲気も、彼の人柄の為すところだったのだと思います。
私もいつまでも沈んでいないで、皆と一緒に彼の遺したイベントの今を守り、次へと
受け継いでいくのが本当の供養になるんだろうな、とも……

だけど。
だけどね、これだけは言わせて欲しい。

一人で勝手に、こんなに早く逝ってんじゃねーよボケ！
私らがそっちに行ったら、必ず探し出してケツ蹴り上げてやっからな！
それまで、せいぜい首洗って待ってろ！！
だからきっと、あの世でも。
そして次にまた生まれてくるときも。
ずっとずっと、友達でいよう。
約束だよ！

必ずまた会おう。
またね、片桐くん。
一足早く、星になった勇者よ！