「お金を稼ぐ事はよくないこと?」中高生に聞いてみました
金融広報中央委員会「知るぽると」では5年おきに、小学生から高校生を対象にした金銭関連の調査「子どものくらしとお金に関する調査」を実施している。その最新版の結果によると、中高生の大部分は「お金を稼ぐことは良くないこと」とは思っていない実態が明らかになった。また「お金はコツコツと働いて貯めるもの」という意見には肯定的な人が多いが、「賭け事でお金を稼ぐのは悪いこと」との設問に否定的な意見を持つ人は3割強確認できる(【知るぽると:子どものくらしとお金に関する調査】)。今調査は2010年12月から2011年3月に渡り、各小中高生に対して学校を通し、調査票に無記名自記式の記述方式で行われたもの。有効回答数は小中高それぞれ2万件以上。地域分散も行われている。
日本人のお金に対する考え方の一つとして、よく話題に登るのは「日本では幼いときから『お金を稼ぐのは汚いこと、よくないこと』と教えられているため、お金を稼ぐことにためらいを感じてしまう」という説。お金周りの話をすると、相手に苦虫をかみつぶしたような顔をされた経験を持つ人も多いだろう。保護者や教育機関が本当にそのような考え方を直接・間接的に教え込んでいるか否かは別として、その考えが子供たちに浸透しているのかが分かるのが次の結果。
ズバリ「お金を稼ぐことは良くないことである」という、お金を稼ぐことへの価値観を否定した設問に対し、そう思うか・そう思わないか・分からないの三択で答えてもらったもの。
↑ お金を儲けることは良くないことである
中学生より高校生の方が「分からない」が減り「そう思わない」が増えている動きを見ると、歳を経るにつれて「お金を稼ぐこと自体は決して悪いことではない」と考える人が増えていることが分かる。少なくとも「小さいときから、大人たちに『お金を稼ぐ事は悪いことだ』と教え込まれているので、お金に対する執着心が育たず、逆に罪悪感が大きくなってしまう」という懸念は杞憂のようだ。
ただし前回調査と比べると、中高生共に「そう思わない」の値が減っているのが気になる。まだ延べ2回しか調査は実施されていないため、単なる誤差の範囲かもしれないが、注視するべき動きといえる。
【日米家計資産推移】などにもある通り、家計全体の金融資産に占める現金・預貯金の割合が非常に高い日本では、重要視されることが多い「お金はコツコツと働いて貯めるものだ」との考えには7-8割の中高生が賛同の意を示している。
↑ お金はコツコツと働いて貯めるものである
今項目では前回調査と比べ、中高生とも否定派が大幅に減り、意見留保派の減少も合わせ、肯定派に多くが移行している。この5年間で地道な積み重ねに対する子供の評価は高まったようだ。
一方、中学生と比べて高校生の値がやや低めになっている、つまり世の中の多種多様な現実を目にして、「それだけでいいのかな、コツコツ以外でも貯められれば問題は無いのでは」との疑問符が頭に思い浮かんだ結果らしき動きがあることに違いは無い。
似たような動き、つまり中学生よりも高校生の方がお金を稼ぐ手段においてドライな心境を抱く傾向は、別項目「賭け事でお金を稼ぐのは悪いことである」への反応でも見られる。
↑ 賭け事でお金を稼ぐのは悪いことである
法律的解釈上の違法行為は別として、倫理観上の問題として「賭け事」が良いか否かを表したグラフともいえるのだが、そもそも「分からない」と判断を迷っている人が4人に1人はいること、中学生と高校生で「思う」「思わない」の回答率上の立ち位置が逆転しているのが気になる。「違法ではないから、賭け事が成功して儲けることができれば、それはそれで良い事だ」という考えなのだろうか。設問が少々曖昧なので、これ以上の判断は難しい。
ただし前回調査の結果と比較すると、直近の結果では賭け事への否定的な意見が中高生とも増加している。直上の「お金はコツコツと働いて貯めるもの」の増加への動きと合わせ、この5年間で中高生のお金に関する意識は、より堅実な方向に向かっているようだ。
繰り返しになるが、世間一般に言われている「子供は大人たちに『お金を稼ぐ事は悪いことだ』と教え込まれており、それが大人になってお金への執着心の薄さに結びついている」という懸念は杞憂と考えてよさそう。
かの渋沢栄一氏も「金儲けを品の悪いことのように考えるのは、根本的に間違っている。しかし儲けることに熱中しすぎると、品が悪くなるのも確かである。金儲けにも品位を忘れぬようにしたい」と語っている。品位を保ちつつ、大いにお金稼ぎに挑みたいものだ。
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