前回の続きで、
密教の「五智如来 (五大明王) 」のモデルの話です。
サンユッタ・ニカーヤⅡ「ブッダ悪魔との対話」の中の、
「他の見解」から。(現代風にアレンジしています)
サーヴァッティー市がゆかりの場所である。
その時、ある梵天が、「ここ (梵天界) に来たり得る「道の人」またはバラモンは存在しない」と悪い偏見を起こした。
そこでお釈迦さまは、その梵天の心中を察し、ジェータ林の中で姿を消し、その梵天の世界に姿を現した。
そして、お釈迦さまは、その梵天の上方に、空中で、火界定 (かかいじょう) に入って、坐を組んでおられた。
※ 火界定 (かかいじょう) ・・・身体から火炎を放つ禅定。(不動明王はじめ五大明王のように)
そして、お釈迦様の高弟たち、まず、大モッガラーナ尊者が、「人間の眼を超えた清らかな天眼を以て、お釈迦様が、その梵天の上方に、空中で火界定に入って坐を組んでおられるのを見た。
そして、大モッガラーナ尊者も梵天界に姿を現し、お釈迦様の東方で、お釈迦様より低い位置、しかし、空中で梵天よりも上の位置に、火界定に入って坐を組んだ。
そして次々と高弟たちが梵天界に姿を現した。
大カッサパ尊者は、お釈迦様の南方で、お釈迦様より低い位置、しかし、空中で梵天よりも上の位置に、火界定に入って坐を組んだ。
大カッピナ尊者は、お釈迦様の西方で、お釈迦様より低い位置、しかし、空中で梵天よりも上の位置に、火界定に入って坐を組んだ。
アヌルッダ尊者は、お釈迦様の北方で、お釈迦様より低い位置、しかし、空中で梵天よりも上の位置に、火界定に入って坐を組んだ。
そこで、大モッガラーナ尊者は、その梵天に、
「友よ。君は、以前に持っていた見解を今でも持っているのか? ブラフマンの世界における光輝に勝る、かの光輝が君に見えるか?」と語りかけた。
梵天は、
「君よ。私が以前に持っていた見解を、私はもはや持っていない。ブラフマンの世界における光輝に勝るかの光輝が私には見えます。今となっては〈我は常住である。永遠である〉と、私はどうして言い得るでしょうか」と。
そこで、お釈迦さまは、その梵天を驚かせて、その梵天の世界から姿を隠して、ジェータ林のうちに姿を現した。
そこでその梵天は、一人の梵衆天に告げて言った。
「さあ、君。そなたは大モッガラーナのところに赴け。大モッガラーナ尊者に告げよ。
〈君、モッガラーナよ。お釈迦様の弟子の内で、あなたモッガラーナ様、カッサパ、カッピナ、アヌルッダ様のように大神通力があり、大威力のある人々がほかにいるでしょうか〉と。」
「承知しました」と、その梵衆天はその梵天に答えて、大モッガラーナ尊者のところに赴いた。
そして、
「お釈迦様の弟子の内で、あなたモッガラーナ様、カッサパ、カッピナ、アヌルッダ様のように大神通力があり、大威力のある人々がほかにいるでしょうか?」と言った。
そこで大モッガラーナ尊者はその梵衆天に語りかけた。
「三つの明知に通じ、神通力を体得し、他人の心の中のありさまを知るに巧みであり、諸々の煩悩を滅ぼした敬わるべき人々が、ブッダ (お釈迦様) のうちに多く存在する」
そこで梵衆天は、大モッガラーナ尊者の語られたことに歓喜して、その大梵天のもとに赴いた。
そして、
「君よ。大モッガラーナ尊者は次のように言われました。
〈三つの明知に通じ、神通力を体得し、他人の心の中のありさまを知るに巧みであり、諸々の煩悩を滅ぼした敬わるべき人々が、ブッダ (お釈迦様) のうちに多く存在する〉と」。
かの梵衆天はこのように説いた。かの梵天は、心に嬉しくなり、その梵衆天の説いたことを歓喜した。
五智如来が変じて五大明王。
密教がインドで成立・体系づけられる以前には、五智如来とか、五大明王と言う思想は無かったはずです。
五智如来、五大明王には、それぞれ、デェーヴァやアスラの神々がモデルとなっていますが、
そのまた源流のモデルの話が、上に記載した、「サンユッタ・ニカーヤⅡ ブッダ悪魔との対話」のうち、「他の見解」ではないかと推察しています。
「自分より優れた存在はいない」と思っていた、最高神「梵天 (の1人) 」。
その心中を察したお釈迦さまが、娑婆世界から肉身のまま、梵天界にテレポートしてきて、「全身から火炎を発した火界定の禅定に入り」、梵天の真上に空中で坐し、4人の高弟たちも、次々と現れ、火界定に入り、梵天より上、お釈迦様より下の位置、空中で坐した。(お釈迦様を中心に東西南北と)
五智如来が変じた五大明王も、全身から火炎を発した姿。
だから、五智如来 (五大明王) のモデルとなった話ではないかと推察するのです。
また、最高神「シヴァ」が降三世明王に降伏 (ごうぶく) される仏教神話のモデルでもあると言えるのではないでしょうか?
五智如来 (五大明王) のモデル終わります。
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