吉田は日本のディフェンダーの中ではもっとも能力の高い選手と評価している。ただ、昔から時に集中力を欠いたプレイ(チョンボ)をする癖があった。なので、批判することはあっても褒めることはしてこなかった。しかし、吉田は懲りずに同じミスを繰り返すほど頭の悪いプレイヤーでは決してない。
同様に、栗原も吉田に次ぐ能力の高いディフェンダー(中澤・闘莉王を除いて)だ。その彼が、同じように東アジア選手権でミスを連発した。
「ウルグアイとの差は、そういうミスの差かなと思います。コンフェデレーションズカップの後なんで、今日は特に守備の部分でしっかり失点しないようにとみんなで考えてやっていたので、そこで4失点したのは、自分たちのミスが多すぎるなと感じます」・・・長谷部キャプテンの発言。
キャプテンであるなら現象だけをコメントするのでなく、その原因まで掘り下げて発言してほしい。でないと同じ過ちを繰り返すことになる。
ミス連発の原因は、「過度の攻撃意識」にある。吉田はザックが求める攻撃サッカーを忠実に具現化しようとして無理を重ねている。無理をして前へ前へ出てラインを押し上げ、ボールを高い位置でフィードしようと無理をしている。コンフェデの敗戦の責任を感じているのだろう。明らかにバランスを崩している。本来の相手フォワードとの絶妙の「間」の取り方や駆け引きのうまさが発揮されていない。
「全員攻撃→全員守備」、攻撃先にありきで10人が前がかりになる。ここでパスミスが出ると全員が前がかりになっているためカウンターを食らう。キーパーと最終ラインとの間にデカイスペースができているのでここを突かれるとひとたまりもない。
WBCで世界の頂点に立った野球の日本チームは「全員守備→全員攻撃」「守備意識」が強かった。「守備意識」が強いと1球1球のボールを大切にするようになる。集中力と注意力が増す。自ずと「球際」にも強くなりミスが少なくなる。結果、相手のミスを突いてワンチャンスをものにして接戦を制す。「個」で勝る相手を終わってみれば凌駕している。
「全員攻撃→全員守備」では、攻撃に意識が向かうあまり、どうしてもワンプレイワンプレイが雑になり、どこかでミスが生じ、前がかりになっている分そのミスが致命傷につながる。
「全員攻撃」に反対しているのではない。「全員攻撃→全員守備」ではなく、「全員守備→全員攻撃」をすすめているだけ。「守備意識」を意識すること。
「全員守備→全員攻撃」なら、無理なくバランスをとりながらラインを押し上げることができる。「守備意識」がプレイに集中力と落ち着きをもたらしミスを最小限に抑えることができる。例えミスが出たとしても、懐が深いためミスの修正が容易となる。また、柿谷や豊田のような「個」の能力の高いポイントゲッターへのロングパスカウンター攻撃につなげる「時間的空間的スペース」を作ることもできる。
私がずっと「中澤・闘莉王」の招集を言い続けているのは、彼らは指揮官の指示をそこそこに、自分たちの判断でディフェンスをコントロールできるからだ。ボランチが上がり過ぎていると「下がれ」というように臨機応変に指示ができ、自分たちの判断で「攻守」のバランスをとれるからだ。指揮官の言うとおりに操縦できないのでザックは彼らを呼ばない。己のミッションにはそぐわないから。
「攻守の切り替えを早く」と選手たちがよく言っているが、「個」の能力に勝る相手には、攻撃から守備への切り替えでは、後追いになって振り切られてしまう。ディフェンダーが相手フォワードを追っかけるぶざまな醜態をさらすことになる。
あくまでも格上相手には「守攻の切り替えを早く」が正解だ。
◇結果を出している「広島」のサッカー
「広島」のサッカーはお手本になる。ザックは「キーパーを除く10人が攻撃陣だ」というような発言をしていたが、広島は11人が攻撃選手。キーパーの西川ですら「攻撃的フィード」ができる。「全員守備→全員攻撃」「守攻の切り替え」がしっかりできているチーム。
このままザックのミッションに付き合っていると、吉田・栗原に続きディフェンダー陣に犠牲者が多発する。次は内田か今野か?