いきもの散歩

近所の自然観察、飼育している川魚の記録

池でハゼ採集

2017年11月15日 | 魚類

11月上旬に近くの池で淡水魚採集をした。久しぶりのガサガサ。15分程しかしなかったが、楽しめた。
今回の主なターゲットはハゼの仲間で、目的は次のような感じ。
(1)ヌマチチブを採集し、自宅でその生態を観察する。
(2)この池で見かけるウキゴリの仲間は、スミウキゴリなのかウキゴリなのか?
(3)この池にはヨシノボリ類が生息するのか?
(4)この池ではテナガエビをよく見かけるが、他にどのようなエビがいるのか?

網を入れたのは、池に流れ込む細流と岸近くの浅場。
採集結果はこんな感じ。

ヌマチチブ(小さい魚4匹)、ウキゴリ(大きめの魚3匹)、テナガエビ、カワニナ。
今回の採集ではヨシノボリ類やテナガエビ以外のエビは確認できなかった。


ヌマチチブ

こちらは3cmくらいの個体。
ヌマチチブは池の岸近くの至る所で見られた。浅場で多少砂利も掬う感じで網を入れると、小さな個体が簡単に採集できた。
本来は両側回遊魚であるが、簡単に陸封されるとのこと。孵化仔魚が海に流され、再びこの池までさかのぼってくるのは難しいと思われるので、この池で陸封され大繁殖しているのだろう。




こちらは55mmくらいの個体。
ヌマチチブの体色は黒っぽいえんじ色。頭部にはルリ色の斑点がまばらに点在し、同様の斑点が体側にも見られる。同じハゼ科チチブ属のチチブとの違いは「チチブよりも淡水域に適応した種」「胸鰭基部の黄土色の横帯の中に不規則なオレンジ色の線がある」「頭部側面の斑点がヌマチチブは大きくまばら、チチブは小さくて密」「第1背鰭を横切る2, 3本のえんじ色の帯」「雄のチチブの第1背鰭のトゲは長く伸びる」など。こちらにある絵がわかりやすい。


この個体(全長55mm)は現在飼育中。飼育初日からピンセットでつまんだ冷凍赤虫を食べてくれた。また、水槽の前に立つと餌くれダンスをし、かわいくて愛嬌がある。
しかし、その見た目とは違い、かなり凶暴かつ大食漢で、混泳していたテナガエビがぽつりぽつりと消えていき、ひと回り大きいウキゴリも尻込みしていた。また、ピンセットから冷凍赤虫を食べる時、歯がピンセットに当たるような音がし、手に伝わる振動も魚の大きさに比べて大きい。
単独飼育が基本で、その限りはペットとしても魅力的な日本淡水魚だと思う(今回はペットとして飼育するわけではないが)。


ウキゴリ

5月頃、この池に流れ込む細流では何十匹という幼魚が群れていた。書籍「静岡県田んぼの生き物図鑑」に「静岡県ではスミウキゴリはほぼ全県の河川に広く生息するが、ウキゴリは西部地域と伊豆半島の一部などに分布域がやや限られる」との記述があったので、静岡県東部のこの池にいるのはスミウキゴリなんだろうなと思い込み、採集して確認していなかった。しかし、今回その細流に網を入れてみると、捕獲できたのはウキゴリだった。

ちなみにこちらは1年半前から飼育しているスミウキゴリ(全長85mm, 静岡県中部産)。

第1背鰭の後縁にウキゴリにあるような白黒模様の斑紋がない。

こちらは今回採集したウキゴリ。



第1背鰭の後端に白黒模様の斑紋がある。

ところでウキゴリやスミウキゴリは両側回遊だが、海からこの池まで遡ってくるのは考えにくい。では、何故、この池にはウキゴリが定着しているのか?ウキゴリ類の陸封は聞いたことがないが、あるのか?
すると、Freshwater Goby Museumにこんな記述があった。

本種は池や湖沼など、陸封されていると思われる環境にいる場合がありますが、これは他のウキゴリ類2種では見られないことかもしれません。
ウキゴリ "Freshwater Goby Museum"

なるほど、ウキゴリが何らかの形でこの池に入り込み、陸封されて定着している可能性があるということか。そして、スミウキゴリは放流などでこの池に入り込んだとしても、陸封されず定着しないということなのかな?

##### 追記@2017/11/15 #####
神奈川県の淡水魚図鑑によると、ウキゴリとスミウキゴリは芦ノ湖や津久井湖などで陸封が確認されているとのこと。


芦之湖や津久井湖、相模湖などでは陸封されています。
ウキゴリ - 神奈川県ホームページ


また、津久井湖や芦ノ湖などでは陸封されたスミウキゴリがいます。。
図鑑 スミウキゴリ - 神奈川県ホームページ

##### 追記終了 #####


採集したウキゴリの一部は持ち帰り飼育している。ヌマチチブ同様、こちらもすぐにピンセットから冷凍赤虫を食べてくれた。また、乾燥エビやミニキャットも食べてくれるので助かる。


テナガエビ

この池に生息するテナガエビ類はテナガエビであり、今回ミナミテナガエビやヒラテテナガエビは確認されなかった。ミナミテナガエビやヒラテテナガエビは両側回遊型である。しかし、テナガエビは両側回遊種ではないとのこと。そして、汽水域に分布するグループ(河川下流域群)と、河川静水域・湖沼に分布するグループの2つに分類されることがあり、今回採集したテナガエビは後者に属すると思われる。
今回、2〜5cmの個体がヌマチチブやウキゴリと一緒に網に入り、簡単に採集できた。かなりの数が生息しているようだ。


まとめ
近所の池でヌマチチブとウキゴリを採集した。ヌマチチブとウキゴリは共に陸封され、定着していると思われる。今回、ヨシノボリ類の生息は確認できなかった。
また、この池に多数生息するテナガエビ類はテナガエビで、ミナミテナガエビやヒラテテナガエビではなかった。テナガエビ以外のエビは今回確認できなかった。




参考
書籍「くらべてわかる 淡水魚」 | 山と溪谷社
書籍「静岡県田んぼの生き物図鑑」 | 静岡新聞社
日本淡水魚 ヌマチチブ | 雑魚の水辺
◆ チチブとヌマチチブ ◆ ( 生物学 ) - 魚の目玉はまだ目の中さ!!
ウキゴリ "Freshwater Goby Museum"
ミナミテナガエビとテナガエビの見分けは簡単 | 蝦三昧




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