2012年7月10日
「伊方原発を廃炉に」4本の請願が委員会で不採択になったことに反対する討論
環境市民 阿部悦子
東電福島第一原発事故で、国会の「事故調査委員会」は、去る7月5日「事故は明らかに人災であった」との報告書を、衆参両院議長に提出しました。「『規制される』はずの電力会社が、情報の優位性を武器に『規制する』当局を骨抜きにし、立場の逆転に成功、規制当局は東電の虜になって監視機能が崩壊した」と指摘しました。
この指摘は、四電、経産省と愛媛県の関係でも同じです。四電が原子力安全・保安院から役員を長年登用してきた事実、伊方原発環境安全管理委員会、技術専門部会の委員の中に、原子力メーカーから研究費をもらってきた学者がいることが分かっても、「調査はしないと」答える愛媛県。四国で使う電力の4割が原発のエネルギーであると言い続け、実は他の発電設備を故意に休ませ、しかも多量の電気を四国域外に売電していたことを隠してきた四国電力。それを鵜呑みにして原発は必要であると議会答弁を続けた愛媛県です。
県民の多くが、廃炉を求める一方、頑なに「当面原発は必要」として再稼働を急ぐ人がいます。この両者の違いはどこにあるのか。
それは、命を優先する人と「金とモノ」を優先する人の違いでしょう。福島原発事故は、日本国民を総被曝させました。政府の発表でも「フクシマ」では広島原爆投下時の168倍のセシウムを出し、放射性物質は首都圏を高濃度に汚染し、西日本にも広く及んでいます。そして今この瞬間も、壊れた原子炉建屋から放射能は漏れ続け、風に乗って流れているのです。
広島の医師、肥田舜太郎さんは、67年間、6千人以上の被爆者を診察されましたが、フクシマ事故以来、お母さん方から相談が相次いでいます。彼は、「多くの子どもたちに被曝の初期症状が現れている」と言います。下痢が止まらない、口内炎が出る、のどがはれて痛い、鼻血が続くなどの症状です。相談は、福島に限らず東京や神奈川、山梨、静岡からも寄せられているそうです。
肥田医師は、この現象は直接原子爆弾を受けなかったのに、数日後に広島に入った人が原爆症で苦しんだのと同様の「内部被ばく」によるものだと言われます。「内部被ばく」は、飲食や呼吸などによって体内に取り込まれた放射性物質が、体の内側にとどまり、絶え間なく体を蝕むことです。通常運転中の原発からも「低線量内部被ばく」は起こっていることを示す多くのデータもあります。
「継続する被曝」の影響は長年、無視されてきましたが、1972年にカナダのアブラハム・ぺトカウが、ある現象を発見しました。それは、一回だけの高線量被曝よりも、低線量で長時間継続して被曝するほうが危険だということ。免疫システムが阻害され、インフルエンザ、肺炎などの感染症や、肺気腫、心疾患、糖尿病などを引き起こしやすくすると言います。
「内部被ばく」は、原発が狭い国土にひしめく日本の、全ての人の問題です。
母親は子どもが食べる3食の食事のことで、日々悩んでいます。「沖縄そば」からセシウムが検出される時代です。産地の表示は信用できるか?牛乳は大丈夫か、海のものは?とひとつひとつの食材を選ぶ時に、将来の子どもの命のことを思います。「内部被曝」に怯えています。その上、大地震が迫る伊方原発を再稼働させるのは、「もっての他」です。
「放射能汚染のない学校給食を求める」請願、「避難経路を整備しないまま伊方原発の再稼働に同意しないことを求める」請願を不採択にしたことに納得がいきません。
「いずれ実家の香川に戻りたい」という千葉県の母親は、フクシマ事故以来、地域の放射能の空間線量が5倍にもはね上がり、土壌汚染も高濃度になって、子どもを外遊びさせられないと訴え、「伊方原発を再稼働させないでください」と請願しています。高知県の女性は、廃炉を迎えるに当たり、伊方町の人々の生活の保障について、電力会社を交えて協議を開始するよう求めています。
国は国民の命を守りませんでした。メルトダウンを隠し、スピーディや米軍から提供された汚染マップを隠し、安定ヨウ素剤を飲ませず、多くの被爆者を作りました。今も、高濃度汚染地域から、子どもたちを避難させていません。
再稼働のために国から「安全のお墨付き」が来ることを待っている知事は、そんな国をまだ信用するのでしょうか。半年先、2年、5年、20年先に、日本各地で起こるであろう人々の苦しみや辛さに、どう向き合えるというのでしょう。命より大事なものはありません。全原発の即時廃炉を求めて、討論を終わります。■
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