恕す勇気ー日野原重明医師の長生きの秘訣】
致知出版社「人間力メルマガ」より
2017年、105歳の天寿を全うされた聖路加国際病院名誉院長・日野原重明医師。生前、多くの人に親しまれた日野原医師の長生きの秘訣とはどういうものだったのでしょうか。20年にわたって親交を重ねてきた遺伝子工学の第一人者・村上和雄氏の分析は、実に示唆に富んでいます。
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(村上)
それでは、日野原先生の長生きの秘訣は何でしょうか。ご自身で述べられているように、先生は長生きを目標にされていたわけではありません。しかし若い頃に結核や心臓病を患ったのに、同年代の方々より健やかでおられました。
私は先生の若さと健康の秘訣を知りたいと考え、先生との対談やご著書を読んでいくつか分かったことがあります。それは、心と身体を健やかに保つことを常々実行されていたということです。
その一つは、「恕(ゆる)す勇気を持つ」ことです。先生はある時、大切にしていたものを7歳のお孫さんが壊してしまい、怒りのあまりきつく咎めたそうです。すると、「わざとやったわけではないのに」とでもいうようにキッと睨み返され、可愛い孫にこんな敵意に満ちた目をさせてしまったことにショックを受けられました。
こちらが怒れば相手も怒る。孫を怒るべきではなかった。愛情をもって叱るべきだったと反省されたそうです。そして、恕す勇気を持つように努めたそうです。
先生は、一般によく使われる「許す」や「赦す」よりも、「恕す」という漢字にゆるすという本質的な意味を感じておられました。
この漢字は、「心」の上に「如」という文字が載っています。つまり、ゆるすとは誰かに許可を出すとか悪いことを赦すということではなく、「相手のことを自分の如く思う心」という意味だと考えておられたのです。
「恕すのは相手のためではなく、自分のための行為なのです。恕せない心を持ち続けるのはしんどいことです。だから恕すことで、私たちは楽になれるのです」と語っておられました。
「恕す」とは「相手のことを自分の如く思う心」