海外ブランド高級時計売り上げ好調１２月から２月は前年比で約２割増とランゲ・アンド・ゾーネなどの１０００万円超クラスのモデルがポンポン売れるそうです。日本の富裕層は、お金をどこに持っていくのか迷っているのでしょうか。
＋＋＋＋＋＋＋＋＋
長く続いた円高・株安傾向がひと段落し、復調をうかがわせる数字を耳にするようになった。「高揚する日本株市場」「いよいよ本格反騰へ」……経済誌にはそんな見出しも躍る。日本経済は長いトンネルを抜けて、景気回復に向かうのだろうか。景気の動向に最も左右されやすいといわれるのが、生活の「プラスアルファ」にあたる部分を担うデパート業界。日本橋三越本店（東京都中央区）では、海外ブランドの高級時計の売り上げが好調で、１２月から２月は前年比で約２割増という。ドイツの超高級ブランド、ランゲ・アンド・ゾーネなどの１０００万円超クラスのモデルも４本も売れた、と聞いて絶句した。
「例年ならむしろ低調な時期にあたるんですが、おかげさまで堅調です」。笑顔でそう話すのは、同店の時計担当バイヤーの松本洋介さん。売れ筋はロレックス、フランクミュラー、ジャガールクルトなどのスイス製品で、６０万円台から１００万円台のものが人気を集めている。「価値のわかりやすいもの、何年たっても色あせないものを手に入れたいというお客様が増えています」と語る。
時計に限らず、デパートでは高額商品の売り上げが好調だ。日本百貨店協会によると、東京地区百貨店の美術・宝飾・貴金属の売上高は２月、前年比３・７％増で５カ月ぶりのプラスを記録した。同協会では「これが一番の原因、と言えるかどうかは別にしても、株価が先行指標になって回復ムードが出ているのは確かです」と分析する。もうひとつ、２月の売り上げで同７・９％増と高い伸びを示した項目が「総菜」で、こちらは７カ月連続のプラス。
震災後の自粛ムードからもすっかり回復。比較的高めのものも好調な売れ行きという。
◆昨年後半は７０円台で推移していた円ドル相場は、２月以降は８２～８３円の円安水準にまで回復。株価でも日経平均が３月に入り１万円台を超え、１～３月期に１９・３％も上昇するなど明るい兆しが多い。そもそも、ここ最近の株高・円安傾向のもとは何か。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也さんは「一番の要因は海外の動向です」と解説する。「欧州の危機も最悪の時期を脱し、米国経済も回復感が強まっていた。米国株が上がって日本株が割安になっていたところに、２月１４日に日銀が追加の金融緩和策を発表した。まずは日本株が上がる素地があり、そこに日銀のアクションによるデフレ脱却期待が加わった形です」 円安も同じ理屈だ。昨年はユーロ危機と、米国経済にも腰折れの観測があり、投資マネーが流入したことで円高傾向が強まった。危機が去ったことで、１月末ごろから円安方向に動き始め、日銀の決定が背中を押したという。
ところが。高額商品が売れている、と書いたばかりだが、街を歩いていても、そんな上向きの実感はおよそない。相変わらず、ユニクロや１００円ショップは大人気、電車内には消費者金融の広告がいっぱいだ。実際のところ、景気は良くなっているのだろうか？
「その設問自体がもう今やフィットしていないんですよ」と上野さんは苦笑する。「日本経済は、輸出が主導して景気回復するというのが唯一のパターンになってしまった。輸出関連の大企業やそれに付随したビジネスをしている中小企業なら、海外需要を取り込めるでしょうが、そうでない企業が景気回復を実感する可能性は小さい」
１億総中流と言われ、だれもが成長の果実を享受した時代とは日本経済の状況が違う、と上野さんは繰り返す。「言い方は悪いのですが、業種ごとに、あるいは同じ業種でも企業ごとに、あるいは同じ会社の中でも勝ち組とそうでない方の格差はどんどん広がる」。ああ、もう聞くのがつらい……。 今後の市場動向について、エコノミストの中には強気の予想も見られるが、上野さんは「極端な悲観論から今度は極端な楽観論に振れているところがある」とくぎを刺す。「米国にはバブルの傷痕があるので、そんなに一本調子ではよくならない。デフレにしても、日銀が１０兆円追加緩和して脱却するなら苦労はない。サプライズで効いているわけで、賞味期限がある話です。期待感もいずれ消える」 一方、為替はこれからも円安方向と予想するが、これは「悪い意味」だ。「日本の財政問題は一筋縄じゃ解決しないということで、来年再来年に向けて円売り傾向になるでしょう」 毎日新聞井田純2012年4月3日(火)配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120403-00000005-maiall-bus_all