ら く が き ち ょ う

えほんや なずな店主いちみちゃん が
心にうかぶ よしなしごとを 描き散らす since 2005

2020 なずなん大賞

2020年12月21日 | ほん

ふゆ至る 一陽来復

感染症禍に大きく影響された一年でございました。

不安な心細いきもち、お楽しみを取り上げられたイライラ、思うようにいかない、先行きが見通せない。

大人も子どもも初めてのことに、戸惑うばかりでした。

けれども、絵本に関わることでいくらか、気持ちが慰められることもありました。

そんな一年を振り返り、今年出会った絵本の中から「今年はこれっ!」と感じた作品を、2020なずなん大賞と称してご紹介いたします。

2020 なずなん大賞

スモンスモン』岩波書店

発行されたのは2019年でしたが、今年の前半、お店の棚に表紙を見せて並べると、どうしても目がいってしまう絵本でした。

この絵は愛らしいのか愛らしくないのか?

スタッフのひとりが、「かさぶたみたいで、剥がしたくなっちゃうんだよね〜」と表現した

細かな背景の部分も、ゾッとするような美しさがあります。

中を開くと、スモンスモンはオンオンとロンロンをヨンヨンでつるしている…。

私の貧弱な想像力を超えたところにある、今年一番気になった絵本なのでした。(ななえ)

*****

ブルーがはばたくとき』BL出版

暗い森でひとりぼっちのブ小鳥のブルーが同じく小鳥のイエローと出会うことで、歌うこと飛ぶことの楽しさを思い出す心暖まるストーリーです。

~イエローがブルーにやさしくふれると、

ブルーのむねがあたたかくなり.......気がつくと、

ブルーはうたっていました。

なんて、ひさしぶりなのでしょう。

~(本文より抜粋)

ブルーとイエローが一緒に歌い始めるページは鮮やかなグリーン色に!
私はレオ・レオーニの『あおくんときいろちゃん』のあおくんときいろちゃんが合わさって緑色になるお話(人と人の心の融和)を思い出しました。

ブルーとイエローの色彩も効果的に使われていてシンプルで分かりやすい絵本です。

来店されたお客様に読みきかせして『イエローに会えた気持ちになれました』
と喜んでいただけました。 

私にとっても2020年の思い出の絵本になりました。(ともこ)
*****

 

ちび竜』童心社

小さな小さなつぶから生まれたちび竜。
 
自然の中で様々な生き物と出会いながら成長してき、ついにはでか竜となります。
 
店で店主に読み聞かせしてもらったとき、目の前が明るく開けていくような
 
すがすがしい気持ちになりました。(まちこ)
*****

 

とんでいったふうせんは』絵本塾出版

誰しも“思い出” という風船を持っている。

大切な人と共有している幸せな記憶。

人生の中でいろんな出会い、経験を積み重ね、増えていったたくさんの風船。

ある日それを手放しはじめたおじいちゃんに困惑する孫の“ぼく”。

悲しいけれど、いつかそんな日が現実にも訪れるかもしれません。

“そんな日々” を経験した落合恵子さん(この絵本の訳者)。

もっと早くこの本に出合いたかったそうです。(あつこ)

*****

 

ねこは るすばん』ほるぷ出版

まずは、帯に「あなたの知らない猫の世界」とあります。

わくわく。

見返しは虎猫柄です。

受験生に何かホッコリしたものを、との学年主任の先生のリクエストで、中3生に読み聞かせをしてみました。

猫が、コーヒーショップ、ヘアーサロン、本屋、映画館、釣り堀、回転寿司、バッティングセンター、銭湯と次々に出掛けますが、お店に入る後ろ姿と、店内の様子は続きのページでいっぺんに見えてしまいますので、始めに右側のページを白紙で隠しておくという工夫をしました。

表紙のやる気満々の猫の顔のドあっぷ、最後のページのおかえりなさいの可愛らしさとの見事な使い分けには、参ったーという感じ。

洋服ダンスに入っていくときの部屋の様子、洋服ダンスから出て来たときの部屋はすでに薄暗く、時間の経過を、表していますが、これは一体誰がやったのか、読んだ後で皆に考えたことを言ってもらったのも楽しかったです。

いつもは読みっぱなしが原則ですが、突っ込みどころ満載のこの作品では、つい考えを聞いてみたくなりました。

喜んで意見を言ってくれたのも、嬉しかったです。

お部屋の壁に貼られたポスター、映画館のポスター、書店の本など、細かいところにいっぱい発見があるのも楽しいです。(けいこ)

*****

 

かべのすきま』アリス館

この絵本が発行されたあと、世界は感染症禍にありますが、アマビエさまと同じくらいに、守ってくれそうなオーラが溢れているのが、あの、すきまからやってくるおばちゃんたち。

店内にも、あのおばちゃんのおひとりが半身だけひょっこり現れてます。

そう、この1年、この空間はちゃんと守られてました。
ありがたや。(ななえ)
*****

 

ほしのこども』岩波書店

感染症禍は、自分がこの世からいなくなる時のことについて真剣に考える機会をもたらしました。

日々報道される数字は、失われた命が生きてきた「物語」の数。

60年近く生きていると、自分よりも年若い知人や働き盛りの親戚を見送ることもありました。

生まれて、生きて、還っていく。

その限られた時間の中でさまざまな人と心通わせたことが、目にはさやかにみえねども、あるとわかる。

この絵本は、そのことをまざまざと、けれども温かくやわらかく確信させてくれました。(いちみ)

*****

 

 

 

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (季節屋 栗原)
2020-12-21 12:31:51
なずなん賞 ネーミングがひとひねり
まだ「なずな」の由来を聞いておりませんが、とにかくいちみさんの好奇心と追求力には毎度脱帽です 好奇心は私も負けない!
新しい世界これからも見せてください
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ネーミング (いちみ)
2020-12-28 22:03:48
>季節屋さん
コメントをありがとうございます。

文化の危機に、不毛な土地にならないように、せめてペンペン草のようにはびこりたいと思って屋号に選びました。

小さな白い花のあとに、ハートの形の莢がつくのもいじましいペンペン草=ナズナにあやかりたいです。
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