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平成関東大震災/福井晴敏(小説)

2012-05-12 23:55:00 | 読書
今回の記事は『平成関東大震災』(福井晴敏、講談社文庫)です。
「東京で大地震が起こったら」
そんな事態を想定して描かれた災害シミュレーション小説。

■内容紹介
突如として起こった大地震。
新宿で震災に直面した平凡なサラリーマン・西谷久太郎《にしたに・ひさたろう》は、家族に会いたいが一心で大混乱に陥った首都を横断する。
生きていれば必ず道は見つかる。次から次へと襲いかかる災厄を乗り越え、ついに自宅にたどり着いた西谷が手にしたものは――。
実用情報も満載したシミュレーション小説。

■感想
まずはじめにお断りとして、この小説はエンタメ小説として描かれています。
実際の震災を前にしてはあまりに軽すぎる内容であることは否めません。
また被災した方が読むには酷《コク》過ぎる内容もおそらく含まれます。
それは今回のレビュー記事にも言えることなので、「私は平気」という方のみ以降は読み進めて下さい。

この本の読了日はMediaMarkerの記録によれば2011/2/9となっていた。
このタイミングに震災に関する小説を読み終えていることに思うところも少なからずある。
もちろん予感めいたものなんてものはなく、本の厚さがなかったので「すぐ読み終えられる」という軽い気持ちから手に取ったのがこの本を読んだきっかけだった。

『平成関東大震災』は東京に起こった震災をシミュレートして描かれた小説です。ですが、その書き口はかなりライトに書かれています。
今まで福井晴敏さんの本は軍事ものしか読んだことがなかったため、この本のライトさには少し驚きました。
こういう軽い物語も福井さんは上手いんだなぁと、作家としての幅の広さにちょっと感心してしまう。

小説の文体は軽く、内容もクスリとしてしまうようなユーモア溢れる描写も多かったため楽しく読むことができます。
そうかと思うと、実際の災害発生時に役立ちそうな情報も盛りだくさんに含まれているため、案外にためになる本なのかも知れない。
もちろんシミュレートなので全てがその通りというわけではないのですが、それでも心構えとして「知っている・いない」のとではきっと変わってくる。

第七章の内容には心を打たれました。
怒涛の感情というまではいかなかったけれど、けっこうエモーショナルな内容でジーンとしてしまった。
「どんなに大地が身震いしても、人の心だけは壊せない。壊すのはいつだって自分自身」
この言葉にはとてもグッときました。苦難を生き抜く力をもらえそうです。

傷ついた自分を壊すのを決めるのは自分自身。
自分で「壊れない」と決めたのならばきっと壊れない。
この先どんな事態に陥ろうとも、そのことだけは忘れないでいたい。


書名:平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった
著者福井晴敏
ジャンル:小説(ドラマ/災害/シミュレーション)
メモ:特になし
おすすめ度★★★★


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