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20世紀少年<最終章> ぼくらの旗(映画)

2009-09-27 23:45:00 | 映画
(C)1999,2006 浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館
(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

今回の記事は『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』(2009年、監督:堤幸彦)です。
浦沢直樹の人気漫画の実写映画化、3部作の第3作です。
ついに明かされる“ともだち”の正体と、物語の結末はいかに!?

■内容紹介 ※goo映画より
「世界大統領」となった“ともだち”が、世界を支配する“ともだち歴3年”(西暦2017年)。
殺人ウイルスが蔓延した東京はそびえたつ壁に包囲され、都民の行動は完全に制限されていた。
そして“ともだち”は「8月20日正午、人類は宇宙人に滅ぼされる。私を信じるものだけが救われる」と声明を発表。
それは、その日時に新たな殺人ウイルスがばらまかれることを意味していた…。
一方、ヨシツネ率いる反政府組織“ゲンジ一派”、武装蜂起を訴えるカンナ率いる強硬派“氷の女王一派”、そしてユキジとオッチョらは、それぞれ人類滅亡を回避する方法を水面下で模索していた。

そうだよ、ぼくだよ。ぼくが“ともだち”だよ。
ぼくこそが、20世紀少年なんだ。


20世紀少年最終章ぼくらの旗

20世紀少年最終章ぼくらの旗


■感想
映画『20世紀少年 最終章』を観て来ました。
日本の映画で、漫画の世界をここまで完成度高く豪華に仕上げた作品はこれまでになかったことでしょう。
そういった意味で、映画の20世紀少年は伝説的な作品になるのかもしれない。
出演陣も驚くほど豪華で、それにけっこう似ていたし。

「実写映画は原作を超えることはない」
なんてことはよく聞く。
なので漫画を実写化する際は思い切ってアナザー作品的に作るのが成功の秘訣だなんて話があるぐらいです。
(ハリウッドのドラゴンボールがあまりにも原作と違いすぎてファンの怒りを買ったりしているので、これ、必ずしも正しいとは言えません)
けれど、実写版20世紀少年はかなり原作に忠実に作られていました。
3部作に収めるために、原作とは設定・ストーリーを変えていた所ももちろんあるんですが、(その最大の被害者はサダキヨです)、概ね原作通りの物語として映画も撮られていました。

何より賞賛したいのは、映画の20世紀少年は原作よりはるかに解りやすく構成されている点です。
漫画の20世紀少年は確かに面白くて深い。
けれど現代と過去が交錯するストーリーは複雑で(決まっていいところでシーンが変わってしまうんですよね)、また後半の展開はかなりカオスでついていくのが大変。
そして、“ともだち”の正体補足があまりにも不親切で、衝撃の“ともだち”の正体発覚に「お前、誰だよ!」とつっこんでしまったのは遠い思い出です。だって原作そのまま放置なんだもん。
けど、映画の20世紀少年を観て、納得できたかどうかは別にして、ストーリーについていけなかった人はあまりいないでしょう。
また“ともだち”の正体発覚に「誰?」って思った人はいるかもしれないけど、エンドロール後に丁寧に補足されていたので釈然としなかった人は少ないと思う。

僕が映画の20世紀少年で残念に思った点は2つだけあって
1つはケンヂが生きていて良かった感が薄いこと。
おそらく映画しか観てない人でケンヂが死んだと思った人は皆無だったんじゃないかと思う。
まぁ、でも、これはしょうがないことなのかもしれない。
だって3部作しかないんだもん。全体通しての期間も1年に満たないし。
けど、原作読んだ時はケンヂ生存が発覚した時(ちなみに予告っぽい形式でした)はすごく驚きと嬉しさを感じました。
それが映画にも欲しかったなぁ、というのが正直な気持ちです。
で、もう1つが、原作を忠実に再現しようとするあまりに一部描写がクドイという点です。
最終章だと、あのロボットを倒す辺りがくどかった。
漫画だとあれほど印象的なシーンなのに、映画版はクド過ぎる。
それ以外は満足で、大変良くできていた作品だったと思います。

出演陣はホントに豪華で楽しかったです。
ほんの少ししか出ない役にもびっくりするぐらい豪華な人が起用されていて驚いちゃいました。
高嶋政伸さんとか、神木隆之介くんとか、森山未來さんとか、そんな使い方ありなんだ! と思うぐらいの驚きです。
個人的に映画の20世紀少年で一番良かったなぁと思っているのは、カンナ役の平愛梨です。
言われてみれば確かに原作のカンナとは少し印象が違うようにも思うけれど、このカンナはこのカンナで全然あり。
むしろケンヂよりもしっくりきていたように思ってます。
何より可愛かったし。
あと、佐々木蔵之介も良かったです。
もとのF役じゃなくて、K役の方ね。
あの表情は彼ならではの歪んだ切なさだったと思います。

最後にエンドロール後の個人的感想と意見を述べて記事を締めます。
思いっきりネタバレ含むので反転してます。
ネタバレ嫌な人はここで閉じてください。

エンドロール後に明かされる“ともだち”の正体。あれだけ原作とは違うと煽られていたので、まさかの原作通りの正体には驚きました。
あんなに印象の薄い子をそのまま“ともだち”にするなんて無謀だと最初は思った。
けど、観ていてその考えは消えました。
前述した通り、カツマタ君の小学校時代についてかなり丁寧に補足されていたからです。
原作だと、カツマタ君には「実験大好きカツマタ君。カツマタ君は実験の前の日に死にました」という七不思議的な印象ぐらいしかありません。
けど、映画では、カツマタ君は死んだのではなく、無実の罪を着せられ、「カツマタなんて知りません」的なシカトが、あいつは死んだといういじめに発展し、学校に来れなくなった結果、誰からも忘れ去られてしまうという痛烈な過去がしっかりとわかる。
(※注 原作を深く読んでいれば、ここまで読み取ることは可能です。実際にこの手の考察をブログで書いている方もおられます)
彼は子ども時代に子供らしく遊ぶことができなかった。
死のうとまで思いつめた時にケンヂの歌に引き止められた、という所までが実際の現実だったのでしょう。
その後、彼はケンヂとは会わず“ともだち”になる。
自分を落としめたのはケンヂなのだが、救ってくれたのもケンヂ。
彼のケンヂに対する想いは複雑なものだったに違いない。
さて、原作でケンヂがヴァーチャルの少年時代に戻るのには「少年時代の自分に罪を認めさせる」という自分に対するけじめのような目的があった。
映画のケンヂはもうひとつ役割を担っている。
それは、“ともだち”に本当の友達を作ってあげること。
ケンヂと友達になった彼はもう“ともだち”になることはなかったのだろう。
けれどそれはあくまでヴァーチャルでの未来であり、現実には決して繋がらない。なのでタイムパラドックスとか考える必要はまったくありませんよ。
ケンヂは、今はもう叶わない仮想の未来であったとしても、彼を救ってあげたかった。
それが彼の級友で、いじめの原因を作ってしまったケンジのせめてもの罪滅ぼしだったのかもしれない。
そう考えると、切ない話だよな。


映画データ
題名20世紀少年<最終章> ぼくらの旗
製作年/製作国2009年/日本
ジャンルサスペンス/ドラマ/SF
監督堤幸彦
出演者唐沢寿明
豊川悦司
常盤貴子
香川照之
平愛梨
藤木直人
石塚英彦
宮迫博之
佐々木蔵之介
山寺宏一
古田新太
佐野史郎
森山未來
小池栄子
木南晴夏
ARATA
神木隆之介
北村総一朗
石橋蓮司
中村嘉葎雄
黒木瞳、他
メモ・特記3部作の第3章
第1章は『20世紀少年 第1章 終わりの始まり
第2章は『20世紀少年 第2章 最後の希望

原作:浦沢直樹『20世紀少年』+『21世紀少年』
おすすめ度★★★★
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
+⇒公式HP(Japanese)
+⇒20世紀少年<最終章>ぼくらの旗 - goo 映画

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大変だったです (Matthew)
2009-09-28 03:26:48
思っていたよりも、短期間で、三部作上映してくれましたが、キャラクターが多すぎて、時間もかなり飛んでしまうので、話について行くのに、精一杯でした
返信する
Matthewさんへ (ichi-ka)
2009-10-04 00:19:14
いつもコメントレスが遅くてごめんなさい。
原作よりだいぶわかりやすくなっていたと思ったのですが、それは原作を読んでいたからこそなのかもしれない。
登場人物は確かに多い映画でしたよね。
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