ユーラシアの風~2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

プータローの朝

2010年04月12日 | 出発前
月曜の朝、彼女と駅まで一緒に歩くのが日課だった。
3年目になっても、月曜の朝はやっぱり辛く、
つい億劫になる気持ちは変わらなかった。だから、
きみと手をつないで駅まで歩く朝の5分間が、
週末から平日へ移るささやかな儀式だった。

「これあと何回?」
「5月3日はゴールデンウィークだから、…あと2回」

あと2回。
そう思うと、なんだか妙に心細くなる。
一年間、お互いにとってどんなに辛いことがあっても、
理不尽なことがあっても、その手を握って聴くことも、
聴いてもらうこともできない。
通りかかる中学校の生徒会目標に突っ込みを入れることも、
ラジオ体操の老人たちと視線を交わすことも、
駅に吸い込まれるキミのうしろ姿も、しばらく見ることができない。

たとえば、旅先で何かの事故があって、
二度とこの日常が戻らないとしたら?

口ではどんなに勇ましいことを言ったとしても、必ず戻れる根拠など
どこにもない現実は、向き合えど向き合えど微動だにしないんだ。
そんなこと杞憂に終えられる保険もクスリも、どこにも売ってなんかいないんだ。

旅に出る前に、誰に何を伝えよう…。

向かう職場のなくなった朝、そんなおセンチ気分を切り替えられないまま
朝の家路を急いだ。

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